ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して、日米欧らが世界貿易機関(WTO)の「最恵国待遇」から除外したのを受け、米上院議員は人権侵害の報告が相次ぐ中国にも同様に貿易における優遇措置を取り下げる法案を提出した。
中国の人権問題に長らく取り組んできたクリス・スミス米上院議員ら3人は22日、中国からの輸入関税などに関する優遇措置を認めた「恒久的通常貿易関係(PNTR)」の地位を剥奪する法案を提出した。クリス氏によれば、中国の劣悪な人権状況を貿易上の権利とを反映させることを目的としている。
クリス氏が発表した「2022年中国通商関係法」によれば、「正常な通商関係の地位を獲得するためには、中国政府が人権尊重のために真剣かつ持続的に改善しているという米大統領による毎年の確認が必要」だという。
「ウクライナへの侵略によりPNTRの地位を失うロシアを中国は支持している。中国への最恵国待遇の再評価は時宜にかなう」とスミス議員は法案提出の意義を強調した。
「1994年にクリントン大統領が貿易と人権との関係を切り離してから、現在のバイデン政権を含む歴代政権下で、中国共産党の重大な人権侵害は見過ごされてきた。米国人の雇用を奪うことによって多大な恩恵を受け、今日のような経済大国に成長してきた」とスミス氏は指摘した。
トム・ティファニー議員は声明で「過去20年間、中国共産党のエリートが組織的な人権侵害、奴隷化、大量虐殺を続けるにつれてより豊かに、より冷酷に、より危険になっている。いっぽうで米国の製造業が苦しむのを見てきた。中国の独裁政権の振る舞いに正常なものは何もない。米国はこれ以上、その振る舞いを『永続的』に許すわけにはいかない」と述べた。
トーマス・スオジ議員は「今はこれまで以上に、中国によるウイグル人やチベット人に対する犯罪や、香港における民主主義の破壊に立ち向かわなければならない。 中国が平然として行動し、他国を犠牲にして不正を行い、ルールに基づく秩序を損なうことをもう許すことはできない。中国政府が自国民と国際社会に対する義務を果たすことを拒否するなら、PNTR撤回を含む深刻な事態に直面することを、米議会が明確に示す時だ」 と同氏は主張した。
ながらく中国共産党の問題に取り組んできたスミス氏は、強制的臓器摘出阻止法案や、北京冬季五輪の米企業スポンサー撤回や開催地移転要請などの法案に携わってきた。いっぽう中国政府は、スミス氏を含む人権問題を指摘する米議員を制裁対象にしている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。