メキシコでは、中国の希少動物や漢方薬への旺盛な需要を背景に野生動物の密猟・密輸が増加の一途をたどっている。米シンクタンクは世界の動物保護と生物多様性に危害をもたらしていると警鐘を鳴らした。
米ブルッキングス研究所はこのほど、報告書を発表した。報告書は2021年10~12月にかけて、中国、アジア、ヨーロッパに拠点を置く麻薬対策担当者、法執行機関、政府関係者、調査ジャーナリスト、環境活動家に対して行った100件を超えるインタビューに基づいている。
著者であるフェルバブ・ブラウン研究員は3月29日のオンラインセミナーで、メキシコでは中国への輸出目的で密猟や伐採、密輸が横行していると述べ、「犯罪組織が野生動物の取引を利用して、麻薬売買やマネーロンダリングを行っている」と新たな犯罪の温床になっていることを指摘した。
同報告書によると、ナマコ、アワビ、フカヒレのほか、ウミガメや南米原産の木材マホガニー、絶滅危惧種である高級魚「トトアバ」も危機にさらされている。
トトアバの浮袋を加工した乾燥品は、中国では貴重な漢方薬として人気が高く、価格が高騰し、10年ものは1キロあたり8万5000米ドル(約1037万円)で取引されている。
オンラインセミナーに参加した野生生物保護協会のエイドリアン・ロイター氏は、近年、中国による中南米諸国への投資拡大で、麻薬密輸、武器、偽造品、マネーロンダリングなどの国際犯罪が増えていると報告した。
一方、中国政府は密猟や密輸はメキシコ政府が対処すべき問題として、規制や取締を行なっていない。
ブラウン研究員は、環境保護に取り組む国際団体に対して、中国政府への圧力を強めるよう呼びかけている。
(翻訳編集・叶子静)
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