米国環境保護庁(EPA)は7日、カルフォルニア州とフロリダ州で遺伝子を組み換えた蚊数百万匹を野外に放つ実験を承認した。感染症を媒介するネッタイシマカの個体数減少を図る。いっぽう、公衆衛生にとって危険な破壊行動との懸念の声が上がる。
遺伝子組み換えを施した蚊は、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の資金提供を受ける英国のオキシテック社が開発した。放たれる蚊はオスで、交配によって生まれた次世代は幼虫のうちに死ぬ致死遺伝子を受け継ぐという。
遺伝子改変した蚊はミツバチや蝶のような益虫に害を与えることなく、ネッタイシマカを駆除できると同社は説明する。世界各地で約10億匹を放出してきたが、オスの蚊は人を刺すことはないため、人へのリスクはないと主張する。
ネッタイシマカは急激な高熱や嘔吐を引き起こすデング熱や黄熱を媒介する。2013年にカリフォルニア州で初めて確認されて以来、州内の20以上の郡に急速に広がり感染拡大リスクが懸念されていた。
同実験には賛否両論が飛び交う。環境保護団体「フレンズ・オブ・ジ・アース」は実験内容が公表された2020年に報告書を発表。遺伝子改変された蚊が大量に放たれた場合の潜在的な危険性について、広く専門家の審査を経た科学的データがなく、人の健康や自然生態系に重大なリスクをもたらしかねないと指摘した。
いっぽう、米紙アトランティック傘下クオーツによると、マレーシアやブラジル、パナマなどで同様の実験を行なったところ、蚊の生息数が90%も減少したという。深刻な感染症の減少に繋がるとの期待もある。
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