ロシアのウクライナ侵攻以来、中国指導部は中立の立場を貫いている一方で、官製メディアや外交官らは、露のプロパガンダとニセ情報を国内外で発信している。国際政治専門家は、ロシアに対抗するため中国を味方につけようとする欧米諸国の発想は「現実離れの片想いだ」とみている。
中国は真に中立か
戦争が始まってから数週間、中国最高指導部は「中立」を主張し続けている。習近平国家主席はこの問題について、まだ公の場で発言していない。李克強首相は11日の記者会見で、中国は「ロシアとウクライナが困難を克服し、平和的に交渉することを支持する」といった従来の外交辞令を繰り返した。
米中は14日、ローマでウクライナ侵攻後初めてのハイレベル対話を行った。中国の楊潔篪(よう けつち)政治局委員は7時間に及ぶこの会談で、「国際社会はロシア・ウクライナ和平交渉を共同で支持する」と述べるにとどまった。中国が仲介役を買って出ることはないと内外に印象付けた。
官製メディアが親露スタンス
外交では「中立」の立場を貫こうとする中国だが、中国国際電視台(CGTN)などの官製メディアは、プーチン陣営のニセ情報をSNSなどを通じて世界中に拡散している。
中国官製メディアや外交官らはTwitterやFacebookなどで、ウクライナ侵攻について、ロシア側の公式表現「特別軍事行動」を用い、「NATOの東方拡大」がロシアに「正当な安全保障上の懸念」をもたらしたとプーチン側の主張を代弁し、ウクライナを「ネオナチ国家」呼ばわりするプーチン大統領の言葉を引き合いに出している。最近では、米国がウクライナの生物兵器研究を支援しているという陰謀説を唱えている。
また、中国官製メディアはウクライナのゼレンスキー大統領がキエフから逃亡したというニュースを繰り返し伝えている。在ベルファスト中国総領事の張美芳氏は、同大統領の「ナチス化した大量虐殺軍隊」がウクライナ人を殺害しているとリツイートした。
中国国内では親露・反欧米の世論が固まっており、ソーシャルメディアは反ロシア・反戦の書き込みを規制している。反戦の署名活動や反戦デモの動画は削除され、生物兵器開発の陰謀論に反論する米国大使館の声明も同じように扱われた。
欧米諸国は依然として、ロシアのウクライナ侵攻を止めるために中国政府の協力を期待しているが、政治専門家の間では、これは西側諸国の「片想いに過ぎず」という見方が多い。
GMFのアナリスト、エティエンヌ・スーラ氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材で、「中国がこの危機の調停者になりうると考えるのは甘い」と示した。
専門家:官製メディアの報道は中国政府の本音
米誌「フォーリン・ポリシー」のジェームズ・パーマー副編集長はVOAのインタビューで、中国最高指導部の本音を知るには、国際的な場での発言よりも、官製メディアの報道を見たほうがいいと指摘した。
GMFのスーラ研究員も同じ見解だ。中国が本当の意味で中立であれば、国内インターネット上で親露論調・情報、陰謀論説などのニセ情報が現状のように溢れることはまずないという。
(翻訳編集・叶子静)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。