コロナ対策による都市封鎖 国民の反発を抑制する中国共産党

2022/05/10 更新: 2022/05/10

複数の報道によると、検閲という手段で救命に繋がり得る情報すらも隠蔽する中国政府の体質に起因して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが発生してから2年余、中国最大の人口を誇る都市で致命的なウイルス感染者が急上昇する中、中国共産党はまたもや真実を握り潰そうとしている。 

非常に厳格な都市封鎖(ロックダウン)に伴う食料や生活必需品の不足に喘ぐ2,500万人の上海住民からの不満が噴出している状況にあっても、中国共産党は検閲によりオンラインの対話を継続的に抑制している。

絶望的な環境の中で必要物資を購入できる場所や手段を親切に他者と共有しようとする投稿すらも検閲で削除される有様である。

政府により強制的に住宅前に檻のような緑の金網が早急に設けられた地域もあり、こうした著しく厳重な行動制限に対する鬱憤を住民等は中国のソーシャルメディアで吐き出している。

中国共産党の怒りを買うことを承知でこうした行動に出るということは、それだけ住民の不満が頂点に達しているということだ。

ニューヨーク・タイムズ紙が2022年4月下旬、「政府当局は有意義な投稿を検閲しながら、国営報道機関に明るい展望のニュースを報じさせる一方で、事実を表す報道は外国機関の虚偽情報と非難するというお決まりの戦略で対応したが、この政府の姿勢は住民の怒りを収めるどころか、火に油を注ぐ結果となった」と報じている。 

同紙の記事には、住民等は「一致団結して、検閲スピードを圧倒する速度と技で、削除されたコンテンツを繰り返し再投稿するという手段に出た」そして「政治機関幹部や学会の有識者の中にも、上海に関する中国の宣伝工作は政府自体の信頼性を損傷すると示唆する者も存在する」と記されている。

AP通信が報じたところでは、2022年3月下旬に発生したオミクロン変異株の感染者急増を受け、中国政府は「極力早急に地域社会で『ゼロ・コロナ』を達成する」という理由の下にほぼすべての上海住民に厳しい外出・行動制限を課した。 

それから数週間を経たが、結果として政府はウイルス感染も住民の不満も封じ込めることはできなかった。AP通信によると、某住民が中国のソーシャルメディアサイト「Weibo(微博)」に「一生外出が許可されないかもしれない。これでは鬱状態に陥る」と投稿した。 

ソーシャルメディアには他にも、上海郊外の隔離施設にバスで運送される住民等の動画、知らぬうちに家の前に設けられた金網の写真、政府が発表した感染症例数や死亡数を疑問視するコメントなどが投稿されている。

CNNニュースが伝えたところでは、必需品を強く要求する住民の声、狼狽える役人の声、封鎖措置のため家族を病院に連れていくことができない男性の声などを収録して上海住民の窮状を伝える6分間の短編動画「4月の声(四月之声)」がソーシャルメディアで公開され話題を呼んでいる。

中国検閲当局は同動画をインターネットから削除し、「四月」という単語でもオンライン検索できないように念入りに処理を施したが、同動画はすでに数百万人に視聴されている。 CNNニュースは4月下旬、「オンラインで反乱が起こった。

ユーザーは政府の政策に反抗してソーシャルメディアで投稿リレーを展開し、あらゆる手段を用いて検閲を回避しながら動画を共有している」また「動画を逆さまにして投稿する、漫画のクリップに埋め込む、QRコードやクラウドサービスを利用するなどの手段を用いて動画を拡散している」と報じている。 政府の封鎖措置は、中国武漢市の故李文亮医師に訓戒処分を下した中国共産党の酷い仕打ちを住民が思い出す要因ともなった。2020年初頭に新型コロナウイルス感染症の発生を内部告発した李医師は、後に自身も同じ病に倒れて命を落とした。

CNNニュースによると、某Weiboユーザーは「政府は今も国民の口と耳を塞ごうとしている」と投稿している。 ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところでは、北京や他の都市でも感染者急増が確認されており、これに伴う封鎖や物資不足に対する住民の鬱憤が高まる中、オミクロン変異株の感染流行発生以来積もりに積もった国民の怒りを早急に「封じ込めなければ、国家指導者等にとって最大の政治的試練が訪れる可能性がある」。

複数の報道によると、上海の都市封鎖から2ヵ月目に突入した今、港湾では物資が停滞し、工場生産が鈍化するなど、中国経済も打撃を受けている。 カリフォルニア大学バークレー校でインターネットの自由を研究する蕭強(Xiao Qiang)研究員はニューヨーク・タイムズ紙に対して、「実際に大きな災難が発生するまで政府が間違った政策を押し通す可能性を国民は危惧している」と述べている。 

中国共産党がインターネットで抑圧しているのは新型コロナウイルス感染症関連の話題だけではない。ラジオ・フリー・アジア(RFA)が2022年4月下旬に伝えたところでは、ロシアのウクライナ侵攻後、主権国家であるウクライナを支持する発言をソーシャルメディアに投稿したオランダ在住の中国人、高栄輝氏と中国福建省に住む同氏の家族は中国警察当局から脅迫を受けている。

録音された会話によると、警官は高氏に対して、「覚えておきたまえ。インターネットは広く開かれている。外国に在住しているからといって、中国の目から逃れられると思ったら大間違いだ」とし、「当方はすべてを把握している。分かったか」と警告している。 

中国共産党の無情なパンデミック対策に対する鬱憤により、住民の反対意見が促されることを期待すると語った高氏は、「今回の上海の都市封鎖では、多くの住民が肌で政府の圧政を感じている。そのため、これを契機に真実に目覚める中国人も出てくるであろう」とし、「国民が一丸となって中国を変革していく必要がある」と話している。   

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