27日の衆院予算委員会では、大阪の電力供給事業に中国企業「上海電力」が参入することについて、経済安全保障の面から議論が行われた。外国為替法や経済安保法制による規制はあるものの、野党議員はその効力を疑問視した。同日、大阪港湾局が中国と締結した協定について、地方議員が陳情書を提出した。
青柳仁士議員(日本維新の会)は27日の衆院予算委員会で、大阪市南港咲洲のメガソーラー発電所(太陽光発電)に中国企業「上海電力」が参入することについて懸念を示した。経済など非軍事分野で相手国に打撃を加える「超限戦」を国家の政策として中国が行っている以上、「日本国民の基幹インフラである電力を中国企業が提供する状況は極めて懸念される」と指摘した。
また、上海電力のメガソーラー事業が、中国の国家政策の成功例としてPRされていることにも言及した。
これに対し、小林鷹之経済安全保障担当大臣は「外国投資家による発電事業への投資については、外国為替法による事前届け出が決められている。国の安全の観点から厳格な審査が実施されている」と答弁した。さらに、「電力事業法においても、電力の安定供給に支障がある場合には適切に対処されている」と述べた。
岸田文雄首相は、大阪の事案について発言を控えたが、法案の充実を含め検討していくと述べた。
青柳氏は現在の経済安保法制には罰則がないため、法の網を抜ける事例が出てくるとし、現在の法制度では「上海電力の事例を止めることはできない」と強調した。
上海電力の株式42.84%を持つ筆頭株主は中国国有電力の中国電力投資集団。
経済安保、地方議員からも陳情
日本の地方自治体に中国関連の経済活動が広がることに安全保障上の懸念を抱く地方議員らは同日、閣僚や国会議員に陳情を行った。
逗子市議の丸山治章氏と綾瀬市議の笠間昇氏は、「ウイグルを応援する全国地方議員の会」名義の陳情書を携え、櫻井義孝衆議院議員(自民)の事務所を訪れた。大阪港湾局が昨年12月に中国・武漢港とパートナーシップ協定を締結し、中国の国策「一帯一路」に組み込まれたかのような報道が中国国内で行われていることについて、国に調査と是正を求めた。
陳情書では、一帯一路の影の部分として、債務の罠や環境汚染、汚職、労働搾取などを列挙。オーストラリアのビクトリア州政府が一帯一路協定を最終的に破棄した事案でも「中国は地方行政単位で水面下で締結」を進めていたとし、大阪と「奇妙な類似性」があると指摘した。
同書は小林鷹之大臣、甘利明衆議院議員事務所にも提出された。
いっぽう、吉村洋文府知事は締結を維持する意向を示している。大阪府の西野修平府議会議員は30日の府議会本会議で、武漢港との協定について「経済安全保障の面から議会との議論もなく覚書を締結するガバナンスの問題がある」と指摘し、締結の失効を求めた。吉村洋文知事は「問題はない」との考えを述べた。
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