自衛隊制服組トップの山崎幸二統合幕僚長は7日、訪日中のバウアー北大西洋条約機構(NATO)軍事委員長と防衛省内で会談した。ロシアによるウクライナ侵攻のほか、中国が海洋進出の動きを強めるインド太平洋地域の現状について意見を交わした。今月下旬にスペイン・マドリードで開催されるNATOサミット首脳会談には岸田文雄首相の出席が見込まれ、日本とNATOとの連携強化が進む。
山崎氏は会談後の記者会見で「力による一方的な現状変更の試みは世界のどの地域においても許されない」と述べ、NATOと連携強化していく考えを示した。バウアー氏は「戦後70年で培ったルールに基づく国際秩序の堅持が我々の責務だ」と述べた。
バウアー氏は同日、防衛省で岸信夫防衛相を表敬し、地域情勢や日本とNATOの防衛協力について意見交換を行った。厳しい安全保障環境にあるとの認識のもと、双方は緊密に連携していくとの認識で一致した。
6日には日本とNATOの共同訓練が地中海で行われた。日本は海上自衛隊遠洋練習航海部隊が、NATOはイタリア海軍およびトルコ海軍が参加した。「共同訓練を通じて、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の維持・強化に向けた確固たる意思を示していきます」とコメントを発した。SNSでは同内容で英語、中国語でも発出された。
NATOのジオアナ副事務総長は5月31日に開いた春季会議で、NATOが日韓豪NZとも緊密に連携し、同4カ国とのパートナーシップ枠組みを設けることについて言及した。「指導者たちは(マドリッドで開催する)サミットで私たちと共にいる」と述べ、各国首脳の出席を示唆した。岸田首相がサミットに出席する方針で調整中だと共同通信が4日に報じている。
ジオアナ氏はアジア太平洋地域で、日本がドイツのように防衛費をGDP比2%増加への動きがあることに触れつつ、「安全保障上の課題はグローバルであり、NATOは我々全員が直面する世界的な課題に対応する必要がある」と述べた。
同氏は「ロシアだけでなく中国のような権威主義的なアクターが私たちの安全保障の原則に公然と挑戦し、ルールに基づく国際秩序を損なっている」と指摘。「拡大する戦略的競争と複雑化する安全保障上の脅威という新しい現実に備えるべき」と述べた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。