中国税関総署が9日に公表した5月の貿易統計によると、ロシアからの輸入は前年同月比で約8割急増した。中国はロシアの原油や天然ガス、農産物の主要な買い手。ウクライナ侵攻をめぐり主要7か国(G7)等がロシアに厳しい制裁を科すなか、対中貿易はその「抜け穴」となっている事態が浮き彫りとなった。
中国税関総署の統計によれば、ロシアからの輸入は5月に79.6%、4月に56.6%、3月に26.4%とそれぞれ増加した。今年1月からの5か月間で、中露の二国間貿易は658.1億ドルとなり、前年同期比で28.9%増加した。
中国共産党はロシアの軍事行動を侵略と言わず、対露貿易の継続を公言している。
中国官製メディア環球時報9日付は専門家の話として、「欧米の制裁に直面するロシアはアジア太平洋地域にますます目を向けて」おり、中露の二国間貿易で取引される製品は多様で補完的になっていると報じた。エネルギーのほか鉱物や穀物、乳製品などの品目も拡大しているという。
ロシアは中国最大のエネルギー輸入先だ。2021年は約500億ドルと前年比で47.4%増加。ロシアから中国への総輸入取引額の65.3%を占めた。
ウクライナ侵攻により欧米がエネルギーをはじめロシアのビジネスから撤退した後、中国がロシア経済の空白を埋めていると専門家は指摘する。グローバルな金融業界団体・国際金融協会(IIF)のエコノミスト、ロビン・ブロックス氏は「『中国製』の意味は『ロシアのエネルギーによる中国製』と読むことができる。中国の貿易はプーチン氏との仲買となっている」とツイートした。
国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、サイモン・ジョンソン氏は「中国はロシア原油を購入し続けることで、プーチン大統領のウクライナ戦争を支持している。1バレルあたり10ドル未満程度といった相当低い価格での交渉を中国に約束させるか、さらなる制裁措置を欧米が講じるかだ」と述べた。
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