親中反米で「投げ銭」、再生回数増…台湾インフルエンサーを介した中共浸透工作

2022/08/24 更新: 2022/08/23

外国発の偽情報などによる情報戦が注目されるなか、インターネット上で大きな影響力を持つ「インフルエンサー」や動画配信者が中国共産党の統一戦線工作の標的になっているとして、台湾の犯罪学専門家が警鐘を鳴らした。

台北大学犯罪学研究所の沈伯洋助教授は18日、台湾の人権団体「経済民主連合」主催の講演会に出席し、中国共産党の統一戦線工作の具体的な手口について解説した。同氏によれば、中国市場に進出したい者やビジネスの往来がある者が特に狙われやすいという。

親中、反米で「投げ銭」…巧妙なインフルエンサー利用

沈伯洋氏は、中共の手口は巧妙化していると指摘。その一例としてインフルエンサーへの「投げ銭」に言及した。

「投げ銭」は動画を見る視聴者がプラットフォームを通じて配信者に金銭を支払う仕組みで、配信者にとって収益源の一つとなる。台湾人インフルエンサーが動画のライブ配信を行う際、親中もしくは反米の話題を語れば「投げ銭」の量が増加するように仕向けることで、扱うトピックを中共寄りに誘導していく。

「投げ銭」は本来、視聴者が自由に行うものであるため、法律的な規制を設けることは難しいとみている。また、「投げ銭」を行なったユーザーの情報を確認するためには、動画配信プラットフォームの協力がなければ不可能だ。

中共のより高度な手口として、再生回数の操作がある。再生回数の多い動画ほど収益が増え、より多くの視聴者の目に留まるようになるため、配信者のコンテンツ内容に影響を及ぼすことができる。

多くのインフルエンサーは「YouTube」のほかにTiktTokなどの中国発プラットフォームでも同様の配信を行う。そこで中共は、配信者のYouTubeでの再生回数が少ない場合でも、TikTokなどで再生回数を増加させることで、誘導の目的を達成する。

見分けるのは難しい

沈伯洋氏は、中共の手口として「人工知能(AI)」を使った偽のインフルエンサーの存在にも言及した。一見すると台湾のニュース番組だが、音声を読み上げているのはソフトウェアであり、ニュース原稿も中国側が作成したものだ。そのため、文の調子も中国本土のものになっているという。

最近では、より台湾人に馴染みやすいよう、台湾現地あるいは中国在住の台湾人に原稿や記事を書かせているため、見分けづらくなっていると指摘する。

こうした複雑な手口に比べ、台湾人インフルエンサーを訓練し、偽情報を拡散させることはむしろ容易いという。インフルエンサーらは代理店や配信プラットフォームと契約を結んでおり、契約先の指示が降りれば「Facebook」や「インスタグラム」などで口を揃えて同じような情報を発信するため、中共は「お金さえ出せば良いわけだ」。

中共の手先となった台湾インフルエンサーを調査する際には、お金の流れを調べるべきだと沈伯洋氏は指摘する。金銭面のつながりを暴露してこそ、人々はこうした中共の手口の危険性を認識できると語った。

沈伯洋氏は、直接中共と関わりはないものの、利益で誘導されて中共のプロバガンダに手を貸す台湾人インフルエンサーの扱いこそ、民主主義社会が直面している課題であると指摘。言論の自由を盾に、中共の息がかかったコンテンツを拡散することによって「台湾が被る打撃は計り知れない」と語った。

台湾安全局も認知

若者の間で大きな影響力を持つインフルエンサーに対する中共の浸透工作に、台湾当局も警戒している。台湾の自由時報は5月、中共が「TikTok(ティックトック)」や「小紅書(RED)」などオンラインの新しいプラットフォームを利用して、台湾の若者に対して統一戦線工作と認知戦を繰り広げていることを、国家安全局も認知していると報じた。

報道によれば、中国共産党は党の政治的スタンスに則した発言をするようインフルエンサーに指図して、党のイメージを美化し、両岸関係に対する国民の認識を変えようとしているという。

国家安全局の陳明通局長は同月、こうした情報工作を認知していると述べた上で「国家安全局は情報収集に責任を負っており、関係機関と共に注目している」と語った。台湾の大陸委員会は、ネットユーザーが中国共産党関係機関と協力すれば、「アンチ浸透法」等の国内法で罰せられると警告を発している。

(翻訳編集・王天雨)

呂美琪
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