イギリスのジョンソン首相の後任を決める与党・保守党の党首選の結果が5日、発表される。候補者はリズ・トラス外相とリシ・スナク前財務相で、最近の調査結果では、対露・対中強硬派のトラス氏が優勢だと判明した。トラス氏が当選すれば、故サッチャー首相、メイ元首相に続き英国で3人目の女性首相となる。
英大手調査会社ユーガブ(YouGov)が19日に発表した党員約1000人を対象とした調査では、支持率でトラス氏(66%)がスナク氏(34%)を2倍近く引き離した。調査は8月12日~17日に実施された。前回の調査(7月29日~8月2日)では、トラス氏が69%で、スナク氏が31%だった。スナク氏がやや差を縮めたが、トラス氏が依然大きくリードしている。
党員に人気のあるウォレス国防相やモーダント前国防相がトラス氏への支持を、党重鎮のゴーブ前住宅・地域社会相がスナク氏への支持をそれぞれ表明している。党首選は、保守党党員約16万人が郵便やオンラインで投票。9月2日に締め切られる。
両候補、対中政策で強硬姿勢
党首選では、国内問題のほか、外交や安全保障も争点となっている。トラス氏とスナク氏の両候補は党員に向けて対中政策で強硬姿勢をアピールしている。
7月25日に行われたBBCのテレビ討論会でトラス氏は、中国共産党による英国への浸透工作について「英国が本当に必要としているのは、英国の国家安全・経済安全保障に対する中国共産党の脅威を認識し、同党による英国企業への浸透、技術窃盗を防ぐことだ」と訴えた。
また、中国当局へのユーザーデータ流出が懸念される動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などの中国系IT企業を取り締まる方針を表明した。
いっぽう、トラス氏はスナク氏について、7月財務相を辞任するまで「中国との緊密な貿易関係を追求してきた」と指摘、中国に穏健的だと批判した。また、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は以前、スナク氏について「中英関係を発展させる上で明確で現実的な見解を持つ唯一の首相候補」と報じていた。
こうしたなか、スナク氏は先月、中国は英国だけでなく世界の安全保障にとって「最大の脅威」になっていると位置付け、中国に厳しい態度で臨むことを強調した。中国政府によるソフトパワー拡大阻止のため、英国内にある30カ所の中国語教育機関「孔子学院」をすべて閉鎖するとしたほか、高等教育機関に対して5万ポンド(約820万円)を超える海外からの資金提供情報の開示を義務付けると公約している。
また、中国の産業スパイ対策として、英情報局保安部(MI5)を通して企業や大学を支援し、重要分野での中国による企業買収を防ぐと約束した。
保守党支持率が低迷 労働党は躍進
ユーガブ社が英国の市民約1700人を対象に実施した支持政党に関する世論調査(期間は8月16〜17日)では、保守党との回答が28%、労働党が43%だった。労働党は、2013年2月以来最高の支持率となった。
保守党は現在、労働党に支持率で引き離されつつあり、2024年に控える総選挙では苦戦を強いられそうだ。
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