豪州のクレア・オニール内務相兼サイバーセキュリティ相は5日、中国動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」や対話アプリ「微信(ウィーチャット)」による個人情報の収集について、サイバーセキュリティ当局に調査するよう命じたことを明らかにした。
オーストラリア放送協会(ABC)に出演したオニール氏は、権威主義的な国に本社を置くIT企業のアプリが、民間セクターを含め広範に使用されることへのリスクを図ると説明した。
中国にいる同社従業員が米国の利用者データを閲覧していたと新興メディアが6月に報じて以降、ティックトックにはセキュリティの疑惑が続く。7月、個人情報の過剰収集を行っていると米豪のサイバーセキリュティ企業が問題を指摘。8月には、ユーザーのキー入力を監視する仕組みが備わっていると専門家が報告した。
こうしたセキュリティ問題について、オニール氏は「他のどの国も対処法を見出せていない新たな課題」と位置づけ、「このデジタル時代には予防策を講じる必要がある」と強調した。
調査会社WE ARE SOCIALによれば、豪州のティックトックユーザーは738万人に上る。
豪州では7月、自由党ジェイムズ・パターソン上院議員のデータセキュリティ問題の解明を求める書簡を受け、ティックトックは中国本土の少数の従業員が豪州のユーザーデータに「アクセスできる」と認めるなど、安全性をめぐる懸念が深まった。
パターソン氏はティックトックへより厳しい措置を取るべきだと訴える。同氏は、オニール氏が内務省からの調査結果を得る前にティックトックの使用禁止案を排除したことについて、政府は禁止を含むあらゆる選択肢を検討する必要があると強調した。
「これらのアプリのプライバシーやサイバーセキュリティのリスクの一部は、規制によって軽減できる可能性があるが、禁止を含むより厳しい措置が最善の解決方法だ」
また、同氏は国家安全保障上の脅威となるアプリに対してユーザーデータを豪州に保存することを義務付けるほか、一党独裁体制を敷く中国からのアクセスを遮断するなど、データセキュリティ規制を強化することも予防策として挙げられると述べた。
豪州は2020年にも、ティックトックの国家安全保障リスクに関して調査を実施。当時のモリソン首相は、外国勢力による干渉や個人情報の取り扱いなどのリスクについて、対応が必要と判断されれば躊躇しない姿勢を示していた。
2018年、豪州は外国のスパイ活動や内政干渉の阻止を目的とした複数の法案「外国干渉防止法」を成立させた。オニール氏は、こうした干渉に対処するのに必要な「次の段階の作業」を検討すると述べた。
(翻訳編集・山中蓮夏)
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