岸田首相は3日、第210回臨時国会の開催にあたり衆参両院本会議で所信表明演説を行った。経済政策として物価高と円安対応、構造的な賃上げ、成長のための投資と改革を3つを重点分野に掲げた。日中国交正常化50周年を迎えた中国との対応について「両国間には様々な懸案がある」ことを踏まえつつ「主張すべきは主張する」と語った。
首相は冒頭、安倍元首相の国葬が「厳粛かつ心のこもったもの」になったと言及、「海外からお越しになった多数の参列者の方々から寄せられた弔意に対し、礼節をもって、丁寧にお応えすることができた」と述べた。
円安対応として、そのメリットを活かして経済構造の強靱(きょうじん)化を進めるとした。具体的には半導体や蓄電池の工場立地,企業の国内回帰や農林水産物の輸出拡大などに取り組む。
10月11日からビザなし渡航が再開する。個人旅行再開などインバウンド観光を復活させ訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の達成を目指す。全国旅行支援やイベント支援も再開し、コロナ禍からの需要回復・地域活性化を図る。
持続可能な成長を実現させるため、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)の4分野に重点を置き、官民投資を加速させると提示した。
エネルギー安定供給の確保は、原子力発電の十数基の再稼働,新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設などについて、年末に向け専門家による議論の加速を指示したと述べた。
成長分野で働くための学び直し(リスキリング)の支援に5年間で1兆円を投入する。年功制の職能給から、日本に合った職務給への移行など、企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を来年6月までに取りまとめるとした。
熊本に誘致した台湾積体電路製造(TSMC)の半導体工場は,地域に10年間で4兆円を超える経済効果と7000人を超える雇用を生むと試算されていると説明。日本だけでも10年間で10兆円増が必要ともいわれる半導体分野に官民投資を集める。
災害対策について、線状降水帯による豪雨など災害が激甚化・頻発化する中、被害を最小限にするため、5カ年加速化対策を推進し、中長期的かつ継続的に防災・減災,国土強靱化に取り組む。
外交・安全保障について、東シナ海、南シナ海を含め日本周辺でも安全保障環境が急速に厳しさを増す中、日本の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、抑止力と対処力を強化すると表明した。その観点から、日本の防衛力の5年以内の抜本的強化に向けて予算を編成する。
「反撃能力」を含め国民を守るために「あらゆる選択肢を排除せず現実的な検討を加速する」とした。加えて、経済安全保障推進法を円滑に施行し、宇宙・海洋・サイバーなどの重要技術の育成に取り組むとした。
「日本の安全と繁栄にとって日米同盟の強化がますます重要」とし、抑止力と対処力を一層強化し、地域の平和と安定および国際社会の繁栄に貢献する。
国交正常化50周年を迎えた中国について、「両国間には現在でも様々な懸案があるが主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する『建設的かつ安定的な関係』を日中双方の努力で構築する」と述べた。
最重要課題である拉致問題について、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、条件を付けずに金正恩総書記との面会を含め全力で取り組むとした。
来年5月はG7議長国として広島でサミットを主催する。同時に日本が安保理非常任理事国となる年でもある。「普遍的価値に立脚した国際的な規範や原則の維持・強化し、国民と国家資産を守り、新時代リアリズム外交を推進する」と述べた。
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