2019年にコロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが中国から西側諸国に急速な広がりを見せた後、複数の大手製薬会社がCOVID-19ワクチンを迅速に発明、製造し、その後緊急使用許可(EUA)を通じて一般使用が許可されることとなった。
そして2020年後半には世界中の人々に行き渡った。
英国の非営利団体「Our World in Data」によると、現在までに世界人口の67.9%が新型コロナウイルス感染症ワクチンを少なくとも1回接種している。
低所得国のその接種率はわずか22.5%であるのに対し、先進国の接種率は一般的に見て高く、通常約80%となっている。
例を挙げると、G7諸国の新型コロナウイルス感染症ワクチン接種率は、米国79.19%、カナダ86.96%、フランス80.92%、ドイツ77.66%、イタリア85.82%、日本83.60%、英国で79.97%であった。
しかしながら、様々な理由で新型コロナウイルス感染症ワクチンを受けないという選択をする人々が世界中の多くの国や地域で存在している。
彼らは、ワクチン接種された集団(すなわち実験群)とは相対的に自然に発生した実験の比較対照群である。
実際、新型コロナワクチンキャンペーンは、その意図に関わらず緊急使用許可により人類に提供され、そのワクチンの長期的な安全性データが取得できていないといった状況下での前例の無いヒト臨床試験と見なすことができる。
その様な世界規模の臨床試験において、世界各地でのワクチン未接種集団は非常に個性的な大規模比較群である。
このワクチン未接種集団の健康に関する貴重なデータのため、2021年10月から2022年2月にかけて英国の団体Control Group Cooperative(CGC)は、その集団の健康状態, 新型コロナワクチン接種を拒否する理由、サーズコロナウイルス2の感染歴、感染した時の重症度、そして差別の対象や犠牲者になったことの有無に関する自己申告データを独自に収集した。
そして、これらのデータはCGCとは完全に関わりを持たず、CGC調査の結果解説の資金を受け取っていない研究者チームにより解析され、その最新の報告書は学術においての査読、オープンアクセス機関誌であるthe International Journal of Vaccine Theory, Practice, and Researchに掲載されている。
Control Group Cooperativeとは、どの様な存在か?
Control Group Cooperativeは選択の自由と身体自主権といった不可譲な人権を守るために2021年7月に設立された。
事実、公衆衛生の中核となる原則の一つは自主性尊重である。
故に、このグループは世界中のコロナワクチン未接種コミュニティへの疎外と非難に特に懸念を抱いている。
彼らのステークホルダーは、偽りのない比較分析のため、彼らのサーズコロナウイルス2ワクチン接種者と未接種者両者の健康に関するデータ収集は、社会に積極的貢献をしていると確信している。
このグループは、政府や保健当局による公な比較群は存在していないが、全ての既存のコロナワクチンは実験的であるため、正しい科学的実験(対照実験)には少なくも実験による治療を受けていない1グループ(比較群)が必要となる。それゆえコロナワクチンによる治療には、その長期的な有効性と安全性を適切に評価するために比較群も存在すべきであるといった理論の上に成り立っている。
今に至るまで175カ国以上から305,000人以上の人々が、新型コロナワクチンの非接種を自発的に選択し比較群への登録をしている。
そして比較群に参加することにより、参加者は「ワクチン接種を受けない」ことを示すIDカードを受け取っている。
CGCは自身のホームページで、そのIDカードは「いかなる国においても公式または法的免除にはならない」事実と、どの当局にも非公認であるにもかかわらず、多くの参加者からインフォームド・コンセント無しでワクチン接種を避けられた、立場を強めてくれた、他者との議論上で役立ったとの報告があることに言及している。
一部の政府やメディア関係者は、CGCを「潜在的な詐欺」と呼び信用を落とそうとしている。一例として、CGCが発行したいくつかのIDカードを手にしたカナダのマニトバ州政府は英国の保健機関に従い「そのプラットフォームを通じて収集されたデータは、ワクチン接種者と非接種者の公的比較実験では使用できない」とTwitterアカウントに投稿している。
しかしながら英国の医薬品およびヘルスケア製品規制局は一般機関からの健康関連データの収集は当局の承認を必要としないと言及した。
公平に見れば、このような世界的大規模な調査結果を正確さにおいて評価することは困難である。
またこの研究のボランティアに強い偏見があるか見極めることも同様に難しい。
しかし、これほどの世界規模で行われる臨床試験は存在せず、この母集団の健康に関するデータを世界は必要としている。
故に、この研究の結果は通常の臨床試験ほど洗練されてはいないが、この様な貴重なデータを独自の視点から提供しているこの研究の価値は、簡単に否定はできない。
CGC調査による独立分析結果
CGC調査の比較群への参加時、参加者は健康状態に関する毎月の調査への記入に同意する。
前述の分析は、独立した多国籍研究者チームにより2021年10月から2022年2月までの5ヶ月間に収集された参加者のデータを用い実施された。
この18,327人の集団は、すべての参加者(2022年2月下旬時点で297,618人)の部分群であり、全体のデータセットを代表すべく慎重に選択された。
ワクチン未接種コミュニティの地理的分布
上記の集団で、ワクチン未接種人口が最も多い地域は、ヨーロッパ(40%)、オセアニア(オーストラリアとニュージーランド、27%)、北米(米国とカナダ、25%)となっている。合計68カ国6大陸で調査は実施された。
年齢層と性別
性別を明かした96.3%の調査参加者の57%が女性43%が男性であった。
最多数の回答者は、保健当局から他の年齢層より新型コロナウイルスの感染と感染後の深刻な病気/死亡のリスクが高いと懸念されている50から69歳の年齢層に含まれていた。
40歳から49歳までの参加者数も比較的多く見られた。
新型コロナウイルス感染症ワクチン未接種の主な理由
調査結果から、回答者がコロナワクチンを接種しないという決断の背後にある5つの主な理由は、自然薬品療法を希望、医薬品療法への不信、ワクチンに関する政府からの情報への不信、試験研究データの不足/限定および長期副作用への恐れということが分かった。
またそれらはほぼ同数の回答者に選択されている。
各回答者は同等に重視する複数の理由を選択可能であった。
結果から参加者は、メディアや当局が時折伝えるように、治療を拒否している訳ではなく自身の健康を気に留めていないわけでもないと分かった。
これらのワクチン未接種の人々は、医学的な救いは唯一ワクチンであるとは考えていないだけであり、新しいワクチン製品の使用に対して、ただ合理的で保守的なのである。
世の中の科学者は誰一人として、私たちが新ワクチン製品の全てを理解していると声を上げることはできない。
さらには過去のワクチン開発は平均10年から15年かけて完了していたため、米国、ドイツ、その他の政府から多額の資金を受け取ったいくつかの大手製薬会社(ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン)により非常に迅速に開発された新型コロナウイルス感染症ワクチンには多くの人が懐疑的だ。
またファイザーとモデルナのコロナワクチンの発明に基づいたメッセンジャーRNA(mRNA)プラットフォームは、ワクチンの製造にはこれまで使われていなかった新たな技術である。
当該ワクチンが実施される以前も、RNA分子が人体内で不安定であることは知られていたが、その新ワクチンで生成されたmRNAは、より安定性を保つために修正されている。
したがって、これらの操作後のmRNA分子の副作用が即時になのか、遅延してなのか、一過性でなのか、または長期的に起こるのかどうかは不明である。
それゆえ、これらの新しいmRNAワクチンの長期的作用を接種せずに待ちながら知りたい、また限られた試験データを信頼したくはないといった一定数の人々がいることは理にかなっている。
ワクチン未接種集団の身体的および精神的健康状態
1)調査前の新型コロナウイルス感染症感染状況
調査前、参加者の20%未満がサーズコロナウイルス2に感染しており、 その大多数が20歳から69歳に分布された。
2)5ヶ月間の新型コロナウイルス感染症感染状況
2021年10月から2022年2月までの5ヶ月間、世界の全域で伝播力の強いオミクロン変異株が主流の株となり、以前優勢であったデルタ変異株と入れ替わった。そしてその結果、多くの人々が感染した。
調査アンケートで新型コロナウイルス感染症への罹患の疑い、または確認を報告した回答者の多くが20〜69歳で調査前の感染状況と一致していた。
具体的には、年齢層20歳から49歳までが回答者の10.7%、50歳から69歳までは12.3%を占めた。
3)感染した回答者における病状重症度
世界がオミクロン変異株の蔓延を止める手段を見出せず、この期間に多くの人々が感染した。これには多くの無症候感染が含まれていた。
ゆえに注目すべきことは、重症であり/または入院した比較群の回答者だ。
幸いなことに、 大多数の症例において、患者の症状は軽度および中等度であった。
重症化率は非常に低いように思われた。(全回答者の約2%)
入院の報告をしたのは、感染を確認または感染の疑いのある回答者5196人中、わずか74人(1.4%)であった。
この数字は、重症時や入院中にはこの種の調査に参加できるほど健康ではない、またはその意思も起こらないため完全に正確になるとは限らない。
したがって客観的にも、この様な調査ではデータがより健康なターゲットへと偏ってしまう。
それを踏まえてもこのデータは、ワクチンにより守られていない状態にもかかわらず、この未接種集団がオミクロンにより罹り易いわけではないと示している。
さもければ、この集団に属する人々の感染、入院率の値ははるかに高くなるだろう。このデータは大変重要であり、この研究の核心的な結果報告でもある。
しかしながら上のグラフでは、死亡者数に関するデータは出ていない。死亡者は自らの死亡例を自己報告することができないためだ。
この調査方法では、単純に死亡者数を知ることが不可能であり、医者による確認はされていないため、結果は正式なものではないとの批判はあるだろう。
とは言え、この集団内の感染した回答者のうち重症者は少数なことから、オミクロン感染時の疾患進行度はワクチン接種状況とは相関しないとの推定は妥当であろう。
また感染した回答者の主な症状は疲労、咳、筋肉や体の痛み、発熱、味覚喪失であり、その多くは50〜69歳の年齢層の参加者によって報告された。
おそらく年齢と基礎疾患が病状の進行を促す主な要因であろう。
ビタミンと医薬品の自己投与
食品医薬品局(FDA)といくつかの国の保健当局は、イベルメクチンまたはヒドロキシクロロキンの使用を承認していないが、これらの薬品による新型コロナウイルス感染症治療の効果を示唆する、大量の医学研究データがあることを一部の回答者は確信しており、一部の臨床医も、これらの薬で数多くの患者を救ったことを経験から述べている。
その結果、新型コロナウイルス感染症と戦うためにこれらの薬を使用する者もでた。また、ほぼ全ての回答者は免疫システムを高める役目を担うビタミン類を摂取していた。
彼らが、この感染症の脅威を単純に無視していたわけではなく、その予防と治療に積極的に取り組んでいたことは明らかだ。
罹患回答者のマスク着用状況
参加者がワクチン非摂取であろうと、彼らが自己や他者の健康を顧みていないという訳ではない。
実際には、彼らの多くは新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐため、個人の健康と衛生管理を強く意識していた。
ワクチン未接種者は、マスクを着用せず、他人に感染させない予防策も講じないとし,自身の生活や健康に気を配らない者としてステレオタイプ化されがちだ。
だが、グラフ上のデータは、多くのワクチン未接種者の日々の長時間マスク着用を明示している。
ちなみに、このデータはマスク着用と新型コロナウイルス感染症発生率との間の因果関係を示唆するものではない。
ワクチン未接種比較群が直面する差別
一部のメディア関係者、権威者、政府機関は、ワクチン未接種者は接種者にはリスクであると主張している。
2021年11月、ガンター・カンプフ(Gunter Kampf)教授はThe Lancetに掲載された自らの記事でワクチン接種者でさえ、サーズコロナウイルス2を拡散すると解説した。したがって、ワクチン未接種者への非難は科学的に認めることはできない。
そのうえで、幾つかの国では成人に対し新型コロナ感染症ワクチン義務化を課した。
米国、カナダ、フランスなど多くの国で、合衆国労働者、医療従事者、および/または特定の職業に従事する従業員に、新型コロナ感染症ワクチン接種を要請した。接種を拒んだ場合には失業する可能性もあるという。
この調査では、回答者に当局や他者からの差別を感じたか否かも示すように求めた。
20からほぼ50%の回答者が被害を報告した。
差別の報告率が最も高い地域は、南ヨーロッパ、南アメリカ、西ヨーロッパ、オセアニア、そしてアフリカ南部であった。
そして当該回答者は仕事、勉強、旅行など生活のあらゆる場面で、政策や他者による差別を受け続けている。
労働年齢参加者の失業
調査の目的上 、20歳から69歳までの人々は労働年齢とみなされた。
最も高い失業率が報告されたのは、オセアニア(労働年齢回答者の29%)、北米(13%)、南ヨーロッパ(13%)、東南アジア(12%)だった。
報告書は、彼らの失業にワクチン義務化が完全に起因したかどうかを示してはいないが、回答者によってはワクチン接種拒否をしたために、失業した可能性は充分にありえる。
ワクチン未接種集団の精神衛生状態
ワクチン未接種者のほぼ全員が感染/重篤な病状に苦しむことはなかったが、ワクチンの義務/要請のストレスによる心理的苦痛はどうなのか?
精神衛生状態は自己評価となっている。
わずか12%の参加者は、その5ヶ月間に「人生は素晴らしい」と感じていたが、一方、全年齢層の回答者の約20%が持続的な失意に苦しみ、絶望感を感じていた。
要するにその統計から、かなり多くの参加者が精神的苦痛に苦しんでいたことが判った。
これはとても注目すべき課題であり、研究から精神的ストレスは差別のみが要因ではないと分かったが、誰もが長期間にわたる人生のあらゆる側面での制限、差別および/また他人の敵意によっても、たいへんな精神的ストレスに苦しむ可能性がある。
最後に、この研究は新技術で新たに開発されたワクチンを大量に集団接種するという世界規模のとてつもない実験下で、ワクチン未接種の「比較群」に関する独自のデータを提供している。
また、特定の政策がさまざまなコミュニティへ与える影響の観点から、政策決定過程を査定するための重要な参考資料を公衆衛生専門家へ提供している。
公衆衛生上の危機に直面した時、公衆衛生倫理学上の問題にはしばしばジレンマが生まれる。しかし私たちは疑問を投げかけなければいけない。私たちは「無害」を謳う倫理的な規範に固執しすぎてはいないか?と。
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