「内巻」は努力が報われない社会の病【現代中国キーワード】

2022/12/05 更新: 2022/12/05

内巻
中国で「内巻(ネイジュエン)」という言葉が流行ったのは数年前なので、コロナ禍の前から、そのような社会背景はあったらしい。

語意は、日本語の内巻(うちまき)とは全く関係なく、中国における「内側に向けた、不毛な競争」のことである。

職場であれ学校であれ、とにかく勝者になるための競争が激しい中国である。
「内巻」とは、競争に費やす膨大な努力が一向に報われず、若者が目的を達成できないばかりか、人生の意味までもが疑わしくなるという、深刻な「社会の慢性病」なのだ。

清華大学といえば、北京大学と並ぶ、中国の最高レベルの大学である。その清華大の大学院で博士の学位をとったある人が、昨今のあまりの就職難のため、背に腹は代えられず就いた職業が「城管(じょうかん)」だった。

「城管」とは、名目上は都市部の管理者ということだが、要するに「黒い服を着て、棒で市民を殴りつけながら、PCR検査に追い立てたり、建物を強制封鎖する悪名高い連中」を指す。公権力を笠に着た暴力集団と言ったほうがいい。この黒服の連中は、警備のついでに店先の肉などを掴み取っていく強盗団でもある。

「職業に貴賎なし」という日本の一般常識は、今は置く。ともかく中国では、高学歴の人間が「城管」になるなど、通常は思いもよらないことなのだ。

その根底には、若者が希望をもって生きられない「内巻」の苦悩がある。それは同時に、今回の白紙革命の遠因にもなっていると見てよい。