【層層加碼】
中国語に「層層加碼(ツァンツァンジャマー)」という慣用句がある。
昨今の清零(ゼロコロナ)政策との関連で「層層加碼」を解説すると、「清零政策は、党組織の下層部へいくほど厳格に実施される。あまりにも理不尽であり、もう限界だ」となる。そこに聞こえるのは、民衆の悲鳴に他ならない。
今の中国において全国に張り巡らされた共産党の組織は、完全な上意下達の構造であるとともに、何か失態があった場合、その担当者が上部機関から厳しく処罰される。
これが中共の本質の一つである恐怖政治となっている。そのため、党の下層組織にいくほど、自分の管内からコロナ陽性者を出さないよう、担当者はほとんど狂ったような厳格さで「清零政策」を実施するのだ。
ところで「層層加碼」の初出を知って驚いた。中国軍の元帥で、有能な軍人として部下から慕われた彭徳懐(ほうとくかい)の言葉の中にある。
彭徳懐は1959年の廬山会議の際、飢餓に苦しむ人民を救うため、大躍進政策の転換を求める私信を毛沢東に送った。毛は、それを見て激怒する。
このことが後の仇となり、彭徳懐は、文革期の1967年に紅衛兵の暴行を受けて下半身不随となる。75年に監禁されたまま病没するが、その最期は虐待死に近いものだった。
非業の死を遂げた彭徳懐の「層層加碼」を思うにつけ、数千万の餓死者を出した60年前の飢餓地獄と、今日の無謀なゼロコロナ地獄が見事に重なることに、改めて戦慄を覚える。
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