実業家イーロン・マスク氏が最高経営責任者(CEO)に就任して以降、世界大手SNSツイッターは情報処理に関する社内文書をジャーナリスト経由で相次ぎ公表している。12日までの報道で、昨年1月に凍結に至ったトランプ前大統領のアカウントに関する詳細が明らかになった。
いわゆる「ツイッター・ファイル」と名付けられた社内文書はこれまで、第5弾までツイッター上で発表されている。
第3弾から第5弾まではトランプ氏のアカウント凍結の過程について。執筆者はジャーナリストのマット・タイビー氏とマイケル・シェレンバーガー氏。両氏によれば連邦議会議事堂襲撃事件の直後を含め、昨年1月6日から8日の間で、社内で集中的な会議が行われたという。
ツイッターのある幹部は、トランプ氏と支持者による選挙期間中と過去4年以上の行動から「暴力を引き起こす扇動」とした上で、凍結を判断したという。
また凍結の決定に至るまでは内外の圧力があり、なかにはミシェル・オバマ元大統領夫人の発言も考慮された。
当時、ミシェル氏は長文を掲げ、トランプ氏のアカウントの恒久的な停止を訴えた。「今こそ、シリコンバレーの企業がこの巨大な動きを可能にするのをやめさせなければならない」「技術が反乱を促進するために国の指導者によって使用されるのを防ぐための対策を講じるべきだ」
議会襲撃事件当時、ジャック・ドーシーCEOは仏領ポリネシア地域で休暇中で、経営責任は法務・政策の上級幹部らに委任していた。
選挙をめぐる検閲や表示調整、ラベル貼りは、幹部らの主観的判断に依存していたとも報道は指摘する。幹部の一人は「ホワイトハウスには本物のナチがいる」と過去に発言したものも含まれていた。
シェレンバーガー氏によれば、2018年から2022年まで、ツイッター社員の政治献金は96%以上が民主党に送られていた。
中国出身の社員、アカウント凍結に反対
12日発表のツイッター・ファイル第5弾は元ニューヨーク・タイムズ編集者のバリ・ワイス氏が執筆を担当。この報道によれば、トランプ氏のアカウント凍結について社内でも賛否が分かれていた。しかし反対派はごく少数で、なかには中国共産党の監視と検閲を経験した中国出身の社員が含まれていたという。
「私は中国出身だから、検閲がいかに公共空間の会話を破壊するかを深く理解している」と、その社員は昨年1月7日に同僚に打ち明けていた。別の同僚は「その恐怖は理解できる。しかし、政府による検閲と民間の検閲は全く違うということも理解する必要がある」と応じたという。
ワイス氏によれば、大手SNS「Slack」のツイッター社内チャンネルでは、トランプ氏のアカウント封鎖を早期に実行しないことに憤慨する声が圧倒的に多かったという。
マスク氏は13日、ツイッターはトランプ氏の規則違反はなかったことを認めながらも「何百人もの活動家社員の圧力で」凍結を判断したと明らかにした。
マスク氏のツイートを受けて、トロイ・ネールズ下院議員は「左翼は言論の自由を憎んでいる」「何のルールも破っていないのにもかかわらず、活動家社員はトランプ氏を禁止した」と書き込んだ。
ツイッター・ファイル第1弾の報道では、バイデン大統領の次男ハンター氏のスキャンダルを暴露したニューヨークポスト紙の回覧を制御したことに関して綴った。担当はタイビー氏。同氏は、情報の制御について「政府や民主党の関与の証拠はない」と結論づけた。
ハンター氏のノートパソコンには、政府当局者と交わした電子メールが保存されていた。ここではバイデン氏や弟ジェームズ氏、ハンター氏が、ウクライナやロシア、中国などの事業に関与していることが明らかになった。当時、多くのプラットフォームは「ロシアの偽情報」として表示を制御した。
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