浸透工作、認知戦、暴力団…中国共産党による今年の台湾工作とは

2023/01/28 更新: 2023/01/28

中国の習近平国家主席は今月20日、北京の人民大会堂で開かれた2023年の「春節団拝会」(旧正月の合同祝賀会)で演説した。習氏の発言から対台湾工作を読み取れば、今年も台湾を国際社会から孤立させ、「統一戦線工作」によってその協力者を増やすことを目論んでいることがわかる。

中国は目下、多国に同時に対抗する能力はまだ持ち合わせていない。昨年の台湾の地方選挙では世論戦などを通じて、民進党の敗北を実現させるなど、一定の影響をもたらした。今年も引き続き「統一戦線工作」と「軍事的な脅迫」は、中国の重要な対台湾工作の主軸となることが予想される。

台湾では2024年、4年に1度の総統選が行われるため、今年は各党の候補者決定から選挙戦に至る「政治の年」となる。内部で激しい交戦が繰り広げられるいっぽうで、中国共産党は台湾内部への浸透や干渉、破壊を行うチャンスを虎視眈々と狙っている。

現在、台湾は「内部浸透」、「認知戦」、「暴力団」など中国共産党がもたらす3つの潜在的なリスクを抱えている。

浸透工作

過去2カ月で特に深刻なのは、中共スパイによる台湾軍内部への浸透工作だ。台湾大手メディア聯合報系「聯合新聞網」5日付は、中国当局に買収された台湾の元・空軍上校による機密情報へのアクセスの事件について報じた。この元上校はビジネスで中国へ渡った後、中国当局に買収され、昔の軍での人脈を利用して6人の海・空軍の現役軍官を通じて台湾軍の機密情報に探りを入れていたという。

台湾軍の中には多くの中共スパイがいるのは周知の通りだ。近年そういったニュースが後を絶たないのは、これらスパイが逮捕されても重い刑に処されないのがこの問題が相次ぐ要因となっている。

軍内部にのみならず、台湾の内政系統における中共による浸透もみられる。最近では、台湾の衛生福利部に所属する中央健康保険署の元職員が台湾市民の個人情報を中共に流した疑いがあると、台湾メディアが報じた。同じころ、ネット上に、台湾市民の個人情報を売りに出す投稿も見られた。

認知戦

今月18日、与台湾与党・民進党の党首に就任した頼清徳副総統は、「中国の脅威に向き合い、台湾を守る」ことを誓った。中国で台湾政策を担う国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光報道官はこれを「台湾独立や分裂を図る『台湾独立分子』だ」と反発している。

中共側は、台湾が対抗を放棄しない限り、また、自分側ではない人間は全員「台湾独立分子」にみなしているようだ。

中共による「認知戦」の典型的な例では、例えば、「台湾の防衛力強化」も「中国共産党に反対すること」も、全てイコール「戦争行為」だと解釈されることだ。

親中共の政財界人やそのシンパとなるメディアは、「平和」や「戦争反対」などの言論を広め、「防衛力強化は中国を怒らせ、台湾海峡の緊張を高める、軍事的衝突を誘発しかねない」「平和と安定のためには『自制』を」などといったことを呼びかける。そうして、台湾人に「中国共産党に反対することは平和を破壊する」、「防衛力強化は中国共産党を刺激してしまう、戦争を招きかねない」といったように軍事衝突に対する恐怖と厭戦ムードを広げ、「戦わずして投降しろ」と迫る。

中共は一見政治的に正しい言葉や普遍的価値の概念をすり替えることで、その「平和的統一」とも呼ばれる侵略目的を覆い隠しているが、台湾市民はそれらの文字ゲームの背後に隠された中共の侵略の企みをはっきりと認識し、親共政治家やメディアによるこのような統一戦争や認知戦、心理戦に騙されないよう注意が必要だ。

中共による対台湾の認知戦は昔から行われてきたが、今年は一層強化されるだろう。

暴力団リスク

今や台湾のすべての政党において中共による浸透が行われているが、なかでも特にひどいのが暴力団とつながりのある腐敗官僚だ。暴力団関係者は最も買収されやすく、今や台湾の暴力団はほとんど中国共産党のコントロール下にある。彼らは中共が台湾に配備しているもう1つの潜在的な勢力であり、この勢力は肝心な時には中共寄りに動き、台湾を内部から破壊するだろう。

(翻訳・李凌)

唐浩
台湾の大手財経誌の研究員兼上級記者を経て、米国でテレビニュース番組プロデューサー、新聞社編集長などを歴任。現在は自身の動画番組「世界十字路口」「唐浩視界」で中国を含む国際時事を解説する。米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)、台湾の政経最前線などにも評論家として出演。古詩や唐詩を主に扱う詩人でもあり、詩集「唐浩詩集」を出版した。旅行が好きで、日本の京都や奈良も訪れる。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。
関連特集: 台湾・香港