フィリピンは、西フィリピン海における中国船による漁船への執拗な嫌がらせに対して、外交的な解決策を模索する一方で、海洋能力を強化している。
西フィリピン海問題に関してフィリピン沿岸警備隊のスポークスマンを務めるジェイ・タリエラ(Jay Tarriela)准将はFORUMに対し、特にセカンド・トーマス礁とも呼ばれるアユンギン礁で、こうした事件が頻繁に起きていることが懸念されると語った。 さらに、2023年2月6日には、中国海警局が軍用レーザーを使用し、フィリピン沿岸警備隊の乗組員の目を一時的に見えなくさせたとされる事件が発生している。 中国はこれまで、オーストラリア、フィリピン、米国の軍事部隊に向けてこのレーザーを使用している。
タリエラ准将は、「フィリピンの船がアユンギン礁の12海里領海を通過するたびに、彼ら(中国海警局の船)は妨害し、嫌がらせをし、無線で挑発してくる」とし、 「こうしたことが常態化している。 このため、漁師たちは、中国に追い払われることを恐れて、そこを航行するのをためらい、漁場が狭くなっている」と述べた。
フィリピン政府は、フィリピン西部のプエルトプリンセサから約320キロの同礁を、自国の排他的経済水域(EEZ)および大陸棚の一部としている。 国連海洋法条約では、一国の領海は12海里まで、資源の探査・開発権を持つ排他的経済水域は200海里、つまり約370キロメートルまでとされている。
フィリピンと中国、ブルネイ、マレーシア、台湾、ベトナムは、南シナ海の一部の領有権を主張しており、フィリピン政府は同海域の東部分を西フィリピン海と呼んでいる。 2016年に国際法廷は、資源が豊富な同海域の大部分に対する中国の恣意的な領有権主張を退けたが、中国政府は侵入などの攻撃的な動きを続けている。
2023年1月上旬、アユンギン礁付近で中国海警局の船がフィリピン漁船を追い払った事件は、漁師が動画で撮影し、SNSで広く拡散された。
漁船の船長によると、中国海警局の船は「彼らの漁船に向かって近づき、硬質船体膨張式ボートの1つを展開し、立ち去るよう漁船の船員に対して身振りで示した」とタリエラ准将は述べた。
フェルディナンド・マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領は、国家の利益を守り、嫌がらせを防ぐために、フィリピン沿岸警備隊にこの海域に常駐するよう指示した。 フィリピン沿岸警備隊は、西フィリピン海での分局の能力を強化している。
フィリピン政府はこの問題について中国政府への働きかけも行っている、とタリエラ准将は述べ、 「このような事態を回避するため、我々は西フィリピン海におけるすべての嫌がらせ事件を記録している。 漁師に宣誓供述書の作成を依頼し、それに署名してもらっている。 漁師から提出された動画の信憑性もチェックする。 これが、フィリピン政府が行っている外交的抗議の根拠となっている」と語った。
マルコス大統領は、中国や他の南シナ海の領有権主張国との緊張を緩和する戦略の一環として、沿岸警備隊の近代化を目指しており、 フィリピンは現在、フランスや日本と、沿岸警備隊の艦艇の追加購入について協議を進めている。
タリエラ准将によると、フィリピンと米国は、捜索・救助訓練やブイ設置作業などの海上安全、海洋汚染演習などの海洋環境保護、麻薬取引や違法・無報告・無規制漁業対策のための海上法執行の3分野を中心に、二国間パトロールを実施する予定だという。
同氏はさらに、「南シナ海は、この地域だけでなく、世界経済全体にとって重要な海上交通路であることを考えると、このような米国との協力は、相互の利益のためであり、中国を抑制することを主眼としていないため、それほどセンシティブになる必要がない海上保安中心の海洋演習だ」と述べた。
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