川崎市では東京都に続き太陽光パネルの設置義務化の条例化を目指している。環境や人権問題などを危惧する市民団体は25日、専門家を招いてセミナーを開催し、義務化の問題点について意見交換を行なった。
石炭発電でパネル製造は「本末転倒」
エネルギー・環境問題の研究者である杉山大志・キャノングローバル戦略研究所研究主幹は、太陽光発電には経済や安全、人権の各問題が山積していると指摘。「問題が山積するなかで拙速に条例を作っていくことを懸念している」と語った。
現在使われているパネルのほとんどは中国製だが、製造現場は露天掘りの炭鉱に隣接しており、石炭火力で発電を行っている。「これでは本末転倒だ」と杉山氏は強調する。また、100万キロワットの原子力発電所に代替するメガソーラーは山手線の内側面積の2倍必要となり、大規模な森林破壊を引き起こす。
太陽光パネルの製造過程に「間違いなくウイグルの強制労働の問題が関わってる」と杉山氏は語る。米国が中国製パネルの輸入を禁止し、欧州連合も輸入禁止を模索するなか、「日本の太陽光政策にも見直しが入ると思う」と指摘した。
さらに、将来的には寿命を迎えた太陽光パネルが産業廃棄物の7%を占めるとの試算があり、廃棄物処理の問題も生じてくるという。
「声あげるハードル高い」
全国再エネ問題連絡会の山口雅之共同代表は「再生可能エネルギーに内在する様々な問題が全てスルーされ、目標ありきで進んでいる。全国各地の森林が大規模に破壊され、土砂災害のリスクに怯える住民が、北海道から沖縄まで全国で増えている」と訴えた。
太陽光パネルの設置が進む山間部などでは過疎化が進み、高齢の住民が多いことから「声をあげる術がない」状態だという。さらに、住民の同意を求める際に強引な手法を用いるなど、心理的なハードルが高いと山口氏は語る。
「多くの国会議員は法改正しないとこの問題が解決できないのはわかっている。しかし再エネはお金になる」と山口氏。「本来は自民党が何か政策を行うと、野党が必ず反対してきた。それがエネルギーに関しては、不思議と全く反対せずに同調している。野党がそのような政策の問題点を指摘すべきなのに、加担している」。
いっぽう、山口氏によると、自民党の萩生田光一政調会長は自身の政治集会で、再エネは主力電源になり得ない、天候に左右される不安定電源が主力電源になるわけがない、との考えを示したという。
在日ウイグル人「中共に資金提供しないで」
在日ウイグル人のムカイダイス氏は、中国産太陽光パネルの材料の多くは新疆ウイグル自治区に由来しており、強制労働への関与が問題視されていると訴えた。 自治区に展開する準軍事組織「新疆生産建設兵団(XPCC)」など複数社が米国のエンティティリストに追加されているとし、太陽光パネルを通じて日本国民の金銭が中国共産党に渡っている現状について人々は認識すべきだと語った。
参加者「人権問題ある製品、考えれば寒気」
音声SNS「クラブハウス」でニュース配信を行う的場さんは「人権問題がある製品が東京都の屋根に並ぶと考えたら寒気がする」と語った。若年層の中国人権問題に対する理解が進まないのは「圧倒的に報道が足りない」ためであり、「政治と経済は別という時代は終わったと思う」と吐露した。
会社員の川瀬さんは「制度的に義務化するのであれば、最終的な負担や収益も基本的に公平を目指すのが行政ではないか」と述べ、東京都の義務化方針に疑問を呈した。そして「国土交通省の検討会では法律家出身の委員も義務化に違和感を示した」「東京都のやり方は強引だと思う」と語った。
主催者側は取材に対し「太陽光パネルの問題点や危険性などはまだ周知されていないので、多くの方に興味を持っていただいたことはよかった。ぜひ広めてほしい」と述べた。いっぽう、川崎市議にメールを送付し、請願も行っているものの「返事はほとんどない」のが現実だという。
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