2023年2月下旬、ロシアによるウクライナ戦争の終結を求める中国の呼びかけは、ロシア政府をはじめ世界各地で慎重に受け止められた。中国がロシアを支援することへの懸念が根強く、NATOなどは中国が好戦的な隣国に武器を供給する準備をしている可能性を警告している。
AP通信によると、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は記者団に対し、「中国がウクライナについて話し始めたという事実は悪くないと思う」とした上で、 「しかし、問題はどのような行動が伴うかだ。 問題はその道のりであり、どこへ向かうかだ」と述べた。
中国が発表した「ウクライナ危機の政治的解決に関する12項目の見解」には、停戦と和平交渉の一般的な要求が含まれているが、その実現のための詳細は示されていない。 同文書では、NATO安全保障機構を不当に非難するなど、中国政府の反西側主義を反映しているが、「核兵器の威嚇や使用には反対すべきである」とも記されている。 この言葉は、核攻撃の可能性を繰り返し指摘し、最近では米国との唯一の核軍縮協定への参加を取りやめたロシアのプーチン大統領を批判していると見なされる可能性がある。 ウクライナは核兵器を保有しておらず、NATO加盟国でもない。
しかし、中国の提案は、プーチンに軍を撤退させ、ロシアが2014年に不法占拠して併合したクリミアを含むウクライナ領土を放棄するよう求めていない。
「中国は、戦争を止め、ウクライナの平和を回復し、ロシアに軍隊を撤退させるために全力を尽くすべきだ」と、ウクライナの中国駐在代理大使であるザンナ・レシュチンスカ氏は、北京での記者会見で述べた。 レシュチンスカ氏は、中国政府は提案を出す前にウクライナ政府と協議はしていなかったと指摘した、とCNNは報じている。
ロイター通信によると、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、「平和を促進できる提案なら、どんなものでも検討する価値がある」とした上で、 「しかし、中国の計画には12の項目が示されている。 もし彼らが一つ目の項目である主権について真剣であるなら、この戦争は明日にでも終わるだろう」と述べ、さらに
「中国は、両方を手に入れようとしている。一方では中立で平和を追求していると公に見せようとし、他方では戦争に関するロシアの虚偽のシナリオを弁じている」と語った。
中国は、ロシアの不当な侵略から1年を迎える2023年2月24日にこの提案を発表した。 ロシアの攻撃は、軍隊がウクライナの都市への無差別爆撃やその他の残虐行為を行ったとされており、数万人の市民が殺害されている。 (写真: ロシアのウクライナ侵攻1年を迎え、韓国・ソウルのロシア大使館付近で抗議活動を行う人々)
世界の多くの国がロシアを非難し、多くの国が広範囲の制裁を加える中、中国は同様の姿勢を取ることを拒否し、プーチンの戦争を侵略と呼ぶことを否定している。 その代わり、中国政府はロシア政府との関係を強化し、ロシアで行われた軍事演習「ヴォストーク2022」に2,000人以上の兵士と戦闘機、軍艦を派遣している。
プーチンと習近平中国共産党総書記は、ロシアがウクライナを攻撃する数週間前に、両国の「制限のない」友好関係を発表した。安全保障アナリストは、ロシア軍にとって重要な技術を中国がロシアに秘密裡に提供しているのではないかと疑っている。
国際戦略研究所の経済制裁専門家であるマリア・シャギナ氏は、2023年2月下旬、BBCに対し、「中国は半導体の最大の輸出国であり、しばしば香港やアラブ首長国連邦(UAE)のダミー会社を通じて、ロシアに輸出しているという証拠がある」とした上で、 「中国企業の中には、軍事目的と民間目的の間のグレーゾーンを利用して、民間用ドローンを供給しているところもある」と述べている。
中国が提案を出した前日、NATOのトップは中国にロシアを武装させないよう警告を発した。 イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長はロイターに対し、「中国からロシアへの武器援助の供給は確認されていないが、彼らがそれを検討し、計画しているかもしれないという兆候は確認されている」と述べ、 「米国や他の同盟国が明確に警告を発しているのはそのためだ。 そして中国はもちろん、ロシアの違法な戦争を支持すべきではない」と語っている。
ロシアはこの提案に対して控えめな反応を示し、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は詳細について「慎重な分析の対象となるべき」と述べたとニューズウィーク誌が報じている。 ペスコフ報道官は、「我々は中国の友人の計画に大きな注意を払っている」と述べた。
中国政府の行動パターンを考えると、戦争終結を遅ればせながら提案しても、中国側の意図に対する諸外国からの懐疑的な見方は消えないだろう、とアナリストは言う。 オスロ国際平和研究所の研究者であるジャコモ・ブルーニ氏とイラリア・カロッツァ氏は、オンラインニュース誌「ザ・ディプロマット」の2023年3月1日の記事で、「全体的に見て、ポジションペーパーはロシアの侵略を非難するには至らず、代わりに、この紛争の中国の好ましい結果がロシアの勝利であるといういくつかの兆候が示されている」と記している。
ゼレンスキー大統領の顧問を務めるミハイロ・ポドリャク氏は、ロシアがウクライナのどこかを占領することを可能にする計画は「平和ではなく、戦争の凍結、ウクライナの敗北、ロシアの大量虐殺の次の段階を意味する」とツイートしたとAP通信は伝えている。
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