米医学雑誌「アメリカ移植ジャーナル」に昨年12月に発表された2件の腎移植に関する論文が物議を呼んでいる。中国・上海で、体重1.2キロほどの未熟児から腎臓が摘出され、成人女性に移植されたという。
上海交通大学付属仁済病院で行われたこの臓器移植手術は、一人のドナーの赤ちゃんは29週齢でレシピエント(移植患者)は末期腎疾患の体重75kgの34歳の女性だ。もう1人も同週齢の赤ちゃんで、患者は体重46kgの25歳の女性だという。
「小児ドナーは、成人ドナーの腎移植よりも長期の移植生存率を持つ」と論文は研究成果を報告した。同院はすでに22例の新生児腎臓の移植を実施してきたという。
医学論文によれば、ドナーの両親は先天的な問題を抱える赤ちゃんが生まれてから、2日目か3日目に生命維持装置の停止と脳死後の臓器提供に同意した。措置の停止から数十分後に医師が赤ちゃんの死亡を診断。まもなくして、24グラムの豆ほどの小さな腎臓が摘出され、ドナーとの適合検査を経て移植手術が行われたという。
倫理問題
医師はこの論文の問題点を指摘する。つまり、ドナーとなる赤ちゃんの死亡から移植手術までがわずか数日間と極端に短いのだ。
「検証不十分であり非倫理的だ。もし別の子供レシピエントに移植されるのであれば…しかし、これは成人に移植されている。新生児(臓器)の使用は受け入れがたい」と、アリゾナ大学外科准教授で、心臓移植の外科的共同ディレクターであるザイン・カルペイ氏は4日、エポックタイムズに語った。
臓器移植を行う際、臓器を提供するドナーと受け取るレシピエントの間の相性を見る組織適合検査が行われ、検査には通常1週間から14週間かかる。その後、レシピエント側の拒絶反応や免疫反応に対して、反応を抑える対策がとられる。
しかし、今回の移植手術は、赤ちゃんの出生から手術は数日間しかない。「胎児のときから羊水の検査を行い、組織適合検査を終えていた可能性がある」とカルペイ氏は推測した。
新生児の臓器は成人のものに比べて、レシピエントの体内で拒絶反応を引き起こす抗体の数が少ない。中国の医療機関はこの利点に目をつけ、積極的に新生児の臓器を移植に用いている可能性がある。
「かなり奇妙にみえる。まるで(移植用臓器が)生産されたかようだ」とカルペイ氏は述べた。
不透明な実態
2022年4月、同論文が掲載された「アメリカ移植ジャーナル」は1980年から2015年までの中国で行われた臓器移植論文を調査したところ、中国の医療機関が死体ドナーについて定められた国際基準を違反している可能性が明らかになった。
中国当局は2015年から「任意提供」に切り替えたとしているが、その実態には多くの疑問が残る。データによれば、移植手術の件数は、推定される正当な手続きを経たドナーの数を大きく上回っている。また各国政府や人権団体が、多くのチベット人、ウイグル人、法輪功学習者など『良心の囚人』が、強制臓器収奪(臓器狩り)の被害に遭っていると指摘している。
このうえで、カルペイ氏はこの論文にあるケースにさらなる疑問を投げかける。赤ちゃんの両親には知る権利と同意する権利はあったのか、両親自身が良心の囚人だったり社会的弱者だったりする可能性、そもそも本当に死亡したドナーは「先天的な問題を抱えた赤ちゃん」なのか、などだ。
前出のように上海交通大学付属仁済病院はすでに22例の新生児腎臓の移植を実施した。「論文は2つの事例しか挙げていない。ならば、残りの20回では何が起こったのか」と、カルペイ氏はその不透明性に懸念を示した。
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