米司法省は17日、越境弾圧に従事しているとされる中国海外警察署を運営していた疑いで中国系米国人の男2人を逮捕したと発表した。日本など各国に設置されている海外警察署だが、刑事事件として摘発されたのは今回が初めてとされる。
逮捕された盧建旺容疑者と陳金平容疑者は中国共産党の代理として活動した罪のほか、司法妨害の罪に問われている。2つの罪で有罪となれば、最長25年の懲役刑が言い渡される可能性がある。
起訴状によると、2人は中国の警察を管轄する福州市公安部の代理としてニューヨーク州マンハッタンのチャイナタウンに海外警察署を開設・運営していた。スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」によれば、中国海外警察署は、異を唱える人権活動家などの帰国を迫る拠点になっており、「中央統一戦線工作部」の活動とも関連しているとされる。
海外警察署は30カ国に存在するとみられており、日本には東京、福岡、名古屋などにあるとされる。
また、2人はマンハッタンの海外警察署が連邦捜査局(FBI)の捜査対象となった際、公安部との通信記録を消去するなど捜査を妨害した疑いがある。同海外警察署は昨年秋の捜索後、閉鎖された。
オルセン司法次官補は声明で、中国共産党による米国内での反体制派弾圧は「国家の振る舞いとして許容範囲を大きく逸脱している」と非難。「権威主義的な抑圧の脅威から米国内に住むすべての人々の自由を守る」と述べた。
米国連邦地検のブレオン・ピース氏も捜査を通じて「中国共産党が米国の主権を著しく侵害したことが明らかになった」と指摘した。
中国共産党との「長年の信頼関係」
訴状によると、盧建旺容疑者は2022年初頭に海外警察署を開設する以前から中国共産党の代理として越境弾圧に従事してきた。
2015年には中国領事館からの指示で中国伝統気功「法輪功」への対抗デモを組織したほか、2018年には暴力や脅しなどを通じて中国からの亡命者とみられる人物に帰国を迫ったという。
そのほか、盧建旺容疑者は海外警察署を通じて別の工作員を雇い、中国共産党の「権威主義的な世界観を守る」ために「米国在住の中国系米国人を追跡」していたと連邦地検のピース氏は述べた。
司法省は同日、別件でニューヨーク市および米国内の他の場所に住む中国人に対して組織的な嫌がらせキャンペーンを行ったとして、40人以上の中国当局者と警察官の起訴を発表した。起訴された被告は中国かインドネシアにいる。
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