米国の環境保護庁(EPA)が提案した自動車とトラックを対象とする排出基準に、自動車業界やワシントンが眉をひそめている。
米自動車業界団体「アライアンス・フォー・オートモーティブ・イノベーション」のジョン・ボゼラCEOは、4月12日付のブログで不満を示した。
「EPAが提案した排出計画は、どう考えても挑戦的過ぎる。今後数年間における自動車の電動化目標を設定しようという目論みのようだが… あまりに目標が高い」。
連邦政府が策定した排出基準によって新車からの排出量が厳しく制限されることになれば、メーカーは電気自動車(EV)の販売を拡大せざるを得なくなる。
当局の提案では、新しい基準の下、2032年までに米国で販売される新車の3分の2、新車トラックの46%がEV仕様になるとされている。
2022年に販売された総車両のうち、EVの占める割合は6%以下だった。新車販売数は2018年の1730万台から1380万台へと低下したが、過去数年と比較してEVの販売率は上昇している。
EPAは、この新たな基準によりCO2排出量が100億トン削減されると主張している。EPA長官のマイケル・リーガン氏は4月12日、記者会見でこの基準を「史上最強」と表現した。
一方でボゼラ氏は、「この提案は、新車販売に占めるEVの比率を2030年までに50%にするという政権の目標を超えている」と述べ、自動車業界が電動化と低炭素輸送の未来に完全にコミットしていると指摘した。
足りない充電設備
先月31日、米国内国歳入庁(IRS)と財務省がEV税額控除に関する規則案を発表した。この新たな方針によって、消費者は控除の対象となる要件を満たすことがさらに厳しくなる。
ボゼラ氏は、「この方針によって、税額控除の対象となる車両の数は減る。政権がEV購入を促進しようと複数の計画を提案していながら、それを思い止まらせるような提案をするとは」と述べた。
さらにボゼラ氏は、米国のEVの公共用充電スタンドは10万台では不十分だとしている。
6日、アライアンスは「電動化は、米国の産業基盤と米国人の運転習慣に100年来の大規模な変化をもたらす」とする覚書を公開した。
共和党議員らが批判
今月、EPAが石炭火力発電所の排出規制を強化したほか、バイデン大統領は水源規制の廃止に関する決議案に拒否権を行使している。それらに続いて発表された今回の排ガス規制厳格化案に対し、共和党議員らからは批判の声が上がっている。
下院エネルギー商業委員会の議長を務めるキャシー・マクモリス・ロジャース議員は、「EPAは、ガソリン車の完全禁止を目指すカリフォルニアに追随しており、車を庶民の手の届かないものにしようとしている」と批判した。
カリフォルニア州は、昨年に発表した計画の中で、2035年までに州内でガソリン車の販売を非合法化するとしている。
上院エネルギー天然資源委員会のジョン・バラッソ議員は、「(バイデン大統領の)誤った政策は、中国を支援しながら米国民を傷つけるものだ」として、「電動化は解決策ではない。製品の値段を上げ選択肢を狭めている」と批判している。
上院環境公共事業委員会のシェリー・ムーア・キャピト議員は、国内でのEV市場拡大に重大問題が潜んでいると強調した。
「新たな排出基準は間違っており、米国の自動車メーカーが直面している諸課題を解決するものではない。EVのサプライチェーンや充電インフラには不備や欠陥がある。また、EV製造に必要な鉱物を生産するためには採掘や抽出の許認可を得る必要があるが、取得に10年近くかかるため、企業はこれらの原材料を中国に求めざるを得ない。新たな基準は、こうした事実を考慮せずに作成されている」とキャピト議員は語った。
下院天然資源委員会の議長を務めるブルース・ウェスターマン議員は、エポックタイムズへの声明で、「EVは必要な要素ではあるが、完全な解決策とすべきではない」と述べている。
彼は、1月に共和党の支持を受け下院を通過したエネルギー法案H.R.1であれば、納得したサービスを提供することができるだろうと語った。
一方、民主党の上院院内総務チャック・シューマー氏は、「その法案は上院で否決される」と述べている。ホワイトハウスも3月27日、バイデンが拒否権を行使すると述べた。
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