まもなく天安門事件34周年 「六四」を前に中国は厳戒態勢、日本でも追悼集会を予定

2023/05/30 更新: 2023/05/31

今年も、中国当局にとって最もセンシティブ(敏感)な日といわれる「6月4日」が近づいてくる。

1989年6月4日。「六四天安門事件」として、歴史に名が刻まれたその日は、日曜日であった。前日の3日夜から4日にかけて、天安門広場を中心とする北京市内では、民主化を求める学生や市民に対して、中国人民解放軍が実弾を発砲。戦車で人をひき潰すなど、流血の大弾圧がおこなわれた。

「六四」を消し去ろうとする当局

34年前と同じく、今年の6月4日は日曜日である。中国当局は今、天安門事件に関連するネット上の話題を血眼になって監視し、犠牲者を追悼する内外の活動の阻止に躍起になっている。

北京市の中心にある、紅色の城壁と瑠璃瓦が特徴的な城門楼「天安門」は、1949年10月1日に、この楼上で毛沢東が中国建国を宣言して以来、共産党一党独裁の象徴的存在となっている。

明朝および清朝の皇帝が存在した紫禁城の前門にあたる天安門であるが、現在の天安門の楼閣部分は1970年に中国共産党によって完全解体されてから再建されたもので、旧王朝時代の歴史的遺産ではない。したがって、厳密に言えば、現在の天安門は1949年の建国時に毛沢東が立っていた楼閣ではないことになる。

その天安門を、中国共産党は権力の象徴として最大限に政治利用してきた。

その一例として、天安門が再建された1970年に、当時を知る中国人なら誰でも歌った(歌わされた)ことがある児童むけ歌曲「我愛北京天安門」が生まれている。

子供の好むような、明るく、軽やかなリズムのメロディである。しかし、その歌詞はといえば、天安門の名称を掲げながら、まだ存命であった毛沢東を個人崇拝させるための「洗脳教育」そのものであった。

こうした経緯からしても、中国共産党の一党独裁が続く中国で、現政権への抗議を表し、民主化を要求する人びとにとって、この天安門広場は最も意義ある場所といえる。

天安門へ行くまでに、なぜ「何重ものゲート?」

天安門事件(6・4)や法輪功弾圧開始(7・20)などの「敏感な時期」が近づくと、天安門広場の周辺には、異様なほど多くの警察車両が配置され、厳重な警備態勢が敷かれる。

10年前の2013年、10月28日の正午過ぎ、いわゆる「天安門広場自動車突入事件」が起きた。

突入した車は橋の欄干に激突炎上して、運転者をふくむ車内の3人と観光客2人の計5人が死亡した。中国の公安当局は「新疆ウイグル自治区のイスラム過激派組織によるテロ事件」と断定し、2014年に被告8名(うち3名が死刑)に実刑判決が下されている。

しかし、それが本当に公安当局の発表の通り「新疆のイスラム過激派によるテロ」であるか、真相は明らかであるとは言えない。

そうした疑問を抱かせる傍証として、2001年1月23日、中国の公安当局は「天安門焼身自殺事件(天安门自焚事件)」を自作自演している。

同事件の詳細については省略するが、要するに「天安門広場で、法輪功学習者5名が焼身自殺を企てた」とするもので、死亡者2名、重度火傷3名を出すものの、それが中国公安によって仕組まれた完全なヤラセ劇であったことが、検証ドキュメンタリー映画『偽火(偽りの火)』によって暴露されている。

さて、話を現在へ戻す。今年の「六四」を目前にした天安門広場の周辺では、天安門へ行くのに「何重もの検査ゲートが設けられている」「そのつど、身分証の提示を求められる」という。

その異様な様子を映した動画が今、SNS上に拡散されている。天安門広場は、確かに中国の公安や警察が厳重な警備をする場所ではあるが、いったい彼らは何に対して、何を恐れて、このような無意味にも見える「何重もの警備」をしているのか。

この場合、中国共産党という悪魔思想の政党が、自身が映った鏡のなかの醜い我が身を見て「病的な恐怖感」を抱いている、と考えたほうがむしろ理解しやすい。

1949年に毛沢東がこの天安門で建国を宣言して以来、すでに74年。

滅びの時がいつ来てもおかしくない薄氷の上を、中国の現政権は渡ろうとしている。

 

監視下に置かれる人権活動家

「今年も6月4日が近づいてきた。明日(5月27日)以降、国保(警察の末端組織)は昼夜を問わず、この敏感な時期を、私と一緒に過ごしてくれるのだ」

5月26日、SNSにそう投稿したのは、湖南省株洲市の著名な人権活動家・陳思明氏だ。

中国国内の人である陳思明氏は、硬骨の人物である。公安に目をつけられながらも、過去に4回にわたり天安門事件を記念するためのパフォーマンスアートを行った。そのため、当局によって4回拘束されたほか、3回の「被旅行」を経験している。

「被旅行」とは何か。当局がその「監視対象」に面倒を起こさせないよう、北京などの敏感な地点から遠ざけるために「他の場所への旅行を強制すること」である。

普段から当局の監視下に置かれている北京在住の人権活動家なども、全人代など政治的に重要な行事が行われる際には、北京を離れるよう市外への「旅行」を強制されることが多い。

陳氏は、上記ツイート投稿をした翌日、地元当局によって再度「旅行させられた」。その上、当局はツイッター投稿を削除するよう求めたという。

しかし陳氏は、投稿の削除を拒否した。関係者によると現在陳氏は当局によって拘束されているという。米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)28日付が報じた。

 

(陳氏らが過去に行った、人体やロウソクで「六四」を形作るパフォーマンスアート。参加者はこの後、当局によって拘束された)

東京・新宿でも「キャンドルナイト」を予定

まもなく訪れる6月4日の夜。東京・新宿でも天安門事件を追悼する「キャンドルナイト」が予定されている。場所は新宿駅・南口で、開催予定時間は18時~20時。

同イベントの広告を行った「民主と自由のために独裁的な香港政府と戦っている在日香港人(プロフィール文から引用)」のツイッターアカウント「Stand with HK@JPN」によると、今回のイベントの主催者は在日の中国人だが、香港人グループもその趣旨に賛同して協力するという。

このグループの香港人は「今の香港では、天安門事件に関する集会が許されていない。そのため、海外にいる香港人が(現地の)関連活動に参加することは、非常に意味がある」と述べている。

以前にも増して統制が強まる香港では、過去には毎年開かれてきた「六四天安門事件の追悼集会」が禁じられている。
 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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