政府はマイナンバーカードの活用枠組みを拡充させている。24年秋には保険証の撤廃する方針を示し、デジタル化社会を加速させる。いっぽう誤った個人情報の紐付けが発覚しており、医療現場などから不安視する声が上がっている。
24年秋にも健康保険証とマイナンバーカードとの一体化などを盛り込むマイナ法改正案が参院地方創生・デジタル特別委員会で可決した。6月2日の本会議で成立する見通し。
1日には、デジタル庁がカードと運転免許証の統合を目指す計画も発表された。それによれば、マイナンバーカードと運転免許証の統合を目指し、スマートフォンに運転免許証情報を記録するモバイル運転免許証の実現に向けた取り組みも進める。
相次ぐ誤り
マイナンバーカードの利用には、保険証との一体型カード「マイナ保険証」に個人情報の誤まった紐付けや、コンビニの証明書交付サービスで誤交付が発覚するなどして、活用枠の拡大を不安視する声もあがる。
医師や歯科医師でつくる団体「全国保険医団体連合会」の竹田智雄氏は5月29日の記者会見で、マイナ保険証に関連するトラブルの発生は医療機関の約6割を超えたと報告した。回答した医療機関数は2997件。
また同会が昨年秋に行った調査では、オンライン資格確認義務化、保険証廃止について医療機関の72%が反対していることがわかった。回答した医療機関数は1721件。
反対の理由は、84%が「マイナンバーカード利用に不慣れな患者への窓口応対の増加」、73%が「システム不具合時に診療継続が困難となる」、77%が「マイナンバーカードの携帯・持参が困難な患者(単身高齢者等)への対応」だった。
共同通信社が27、28両日に実施した全国電話世論調査によると、マイナンバーの活用拡大「大いに不安を感じている」「ある程度不安を感じている」は計70%にのぼった。
30日には、全国知事会の平井伸治会長(鳥取県知事)が河野太郎デジタル大臣と面会し、トラブルが続出することでマイナンバー制度の信頼が損なわれる等、問題を直に指摘。早急な改善を求めた。河野氏は陳謝し、システムの改修などを通じて早期の問題解決を図ると応じた。
政府が6月に取りまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」の素案では、マイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」と位置付け、「政府一丸となって制度の安全と信頼の確保に努める」と明記している。
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