米軍、中国軍機の危険行為を強く非難 専門家が分析する中国共産党の思惑

2023/06/02 更新: 2023/06/02

中国軍が拠点構築を進める南シナ海上空で5月26日、偵察飛行していた米軍機の前を中国軍戦闘機が横切る事件が発生した。2000年代初頭には米中軍機が衝突し墜落した前例があり、米軍は強く非難している。中国側の強硬姿勢は国内向けのプロパガンダとの見方もあるが、専門家は、米中関係が冷え込むなか、中国の危険行為が事態をエスカレートさせる恐れがあると指摘した。

危険行為で技術窃取 過去に墜落事故も

インド太平洋軍司令部は5月26日、中国軍機の危険な行為を非難する声明を発表した。中国軍のJ-16戦闘機が米空軍のRC-135偵察機の前方に割り込んだことは「不必要な攻撃的行為」であり、米軍機は乱気流の中を飛行せざるを得なかった」と非難した。

公開された動画では、気流により激しく揺れる機内の様子が残されていた。米国側は、RC-135は国際法に従い国際空域を飛行していたとし、インド太平洋地域での活動を継続する構えを示した。

時事評論家の王赫氏は取材に対し、中国の軍事力は米国に遠く及ばないため、「ならず者」戦法を取ってきたと指摘。「事故に遭った米軍機を解体し、技術を盗むことさえあった。中国共産党はたびたびこのような手口を取ってきた」と述べた。

2001年4月、南シナ海で中国軍機のJ-8戦闘機が米軍のEP3電子偵察機と衝突した。中国軍機は墜落し、米軍機は中国の飛行場に緊急着陸した。着陸までに米兵は機内の設備を破壊したが、中国軍は依然として多くの軍事機密を入手した。

ラジオ・フランス・アンテルナショナル(FRI)は匿名の米軍高級将校の発言として、中国軍の航空機と船舶による「危険な空中インターセプトや対峙が驚くほど増加している」と報じた。米国は、これらの接触はパイロット単独の行為ではなく、より大きな行動の一部であると考えているという。

米軍はすでに中国軍の危険行為を問題視している。昨年、米軍制服組トップのマーク・ミリー将軍は、直近5年間の米中両軍の接触について調査するよう命じた。

強硬態勢の背後にあるもの

米軍の非難に対し、中国軍南方戦区の張南東報道官は「米軍のRC-135偵察機が意図的に我々の訓練区域に侵入して偵察と妨害を行った」と主張。空軍部隊は「規則に基づいて適切な処置を行い、専門的な対処を行った」と述べた。

時事評論家の李林一氏は5月31日、米軍が映像を公開したにもかかわらず中国軍が強硬姿勢を崩さないのは「国内向けの宣伝に必要だから」と指摘した。「大多数の中国国民は米国が公開した映像を見ることができず、中国共産党の宣伝しか見ることができない。こうすることで、一部の国民の民族主義的感情をなだめているのだ」。

時事評論家の王赫氏は取材に対し「中国共産党は内憂外患に悩まされており、習近平政権も内部は一枚岩ではない。国際情勢が緊迫していると主張し、ときには意図的に事件を起こすことで、国内の反対派の声を押さえ、外部圧力に対して一致団結するムードを形成しようとしているのではないか」と語った。

求められる米国の抑止力 

台湾中正大学国家安全保障センター所長のエポックタイムズの取材に対し、中国軍の挑発行為のリスクを低減するためには、米軍のプレゼンスを高めなければならないと述べた。

「米中対立の最大の焦点は台湾海峡であり、中国軍機は長きにわたって付近の空域で演習を行ってきた。リスクを低減するためには引き続き対話を行うだけではなく、米国が十分な抑制力を示さなければならない。そうしなければ、中国共産党は調子に乗ってしまうだろう」。

米インド太平洋司令官のアキリーノ将軍は、自身の任務は「第一に、台湾侵略という衝突を未然に防ぐこと。第二に、第一の任務が失敗した場合には、戦って勝つ準備をすること」であるとし、強気の態度を示した。

台湾空軍元副司令官「不測に備えよ」

台湾空軍元副司令官の張延廷氏はエポックタイムズの取材に対し、今回の事件は北京当局の敵対的な態度を表していると述べ、「極めて非友好的で、両国の関係悪化を象徴している」と述べた。「航行の自由」作戦を実施する米国はあくまで「域外国家」であり、南シナ海の地域情勢に口出しすべきではないということが中国の思惑であると分析した。

2001年の米中軍機衝突事件を挙げ、「再び同様の出来事が起こる可能性は否定できない」と述べた。その上で、中国軍が強硬な態度を取れば衝突が起こる確率が高まるとし、不測の事態に備える必要があると指摘した。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。
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