中韓関係はますます遠ざかる一方である。韓国政府が最近公表した新版の『国家安全保障戦略書』では、「韓中戦略的パートナーシップ」という表現が削除された。同時に、駐韓中国大使邢海明事件後の世論調査では、約8割の韓国人が中国を信用していないことが明らかになった。
中韓関係の重大な修正
尹錫悅(ユン・ソンニョル)政権は6月7日に最新版の『国家安全保障戦略書』を公表した。これは外交・安全保障政策の最高レベルの文書である。文在寅(ムン・ジェイン)政権の時期は北朝鮮との関係に焦点を置いていたが、新たな戦略書では北朝鮮の核とミサイル能力の増大を「最も深刻な挑戦」と評価し、強力な対応を強調するとともに、米韓同盟と米日韓協力を重視する政策基調を確認した。
新たな戦略書では、中韓関係について、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)、文在寅の各政権期における「戦略的協力パートナーシップ」の表現を削除し、「相互尊重と互恵に立脚したより健全で成熟した関係に向けて進む」と述べ、「国益と原則に基づき、正々堂々とした外交姿勢を採る」と主張し、THAAD(終末段高高度防衛ミサイル)問題については「韓国の安全保障主権の問題」と位置づけた。
また、新たな戦略書では、東アジア外交における国家の順位を、朴槿恵、文在寅政権の「中、日、ロシア」から「日、中、ロシア」に変更した。
この点について、韓国大統領府の高官は、「外交における国家順位は、同盟国や友好国の順に記述するのが通例であり、法治、憲法、自由、価値観という観点から韓国と最も近い国家を最初に配置するのが基準である」と説明した。
新版の戦略書の公表の翌日、中国の駐韓大使である邢海明氏は、韓国最大野党の「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)党首と会談し、「一部の人々は米国が勝つ、中国が負けると賭けているが、これは明らかに誤った判断である」「今、中国が負けると賭けている人々は、将来必ず後悔するだろう」という強硬な発言をした。
この発言は韓国国内で大きな波紋を引き起こし、韓国外交部は翌日、邢海明大使を呼び出し、外交慣習を無視し、常識を欠くその挑発的な言動に対して厳重な警告を発し、強い遺憾の意を示した。
中国の農融外交部副部長は10日に駐中韓国大使鄭在浩(チョン・ジェホ)氏と会談し、韓国外交部が邢海明大使を召喚したことに抗議した。中韓双方は真っ向から対立している。
6月13日、尹錫悅大統領は閉門会議で直接、「駐韓中国大使邢海明氏の態度から見て、彼が外交官として相互尊重や友好を促進する態度を持っているか疑問である」と批判した。
専門家:韓国が屈服すれば、中国共産党はますます度を超える
韓国の前統一研究院院長で、建陽大学軍事学部教授の金泰宇(キム・テヨン、Kim Taewoo)氏は6月18日、「新しい『国家安全保障戦略書』は、尹錫悅大統領が文在寅政権の屈服政策を清算しようとする意志を反映している。中国の大使邢海明事件の取り扱いからもそのことがわかる」と大紀元に語った。
彼は、「経済や地理的な観点から、韓国国内では一部に中韓関係がさらに悪化することを懸念する声もあるが、(戦略書の)方向性は正しい。中国共産党(中共)に対しては明確で鮮明な路線をとるべきであり、そうでなければ、米国や日本と共に北朝鮮に対処するのが困難になる。我々は理解しなければならない。絶対に中共に屈服すべきではない。韓国が譲歩すれば、中共はそれを逆手にとるだろう」と強調した。
金泰宇氏は、「文在寅政権は米国と中国の間で調停役を演じることを標榜していたが、問題は米国と中国の新冷戦が深まる中で、韓国が二つの大国の間でどちらか一方に寄らないと、最終的には両国の信頼を失うだろう」と指摘した。
彼は、1939年のソ連によるフィンランド侵略、いわゆる冬戦争を例に挙げ、「当時、フィンランドはナチス・ドイツとソ連の間で立場を決めかねていた。その結果、両国の信頼を失い、ソ連のフィンランド侵攻時にはドイツからの支援は得られず、フィンランドの土地の10分の1をソ連に占領される結果となった。この実例から見て、前の文在寅政権が採用した対中政策は、韓国にとって利益をもたらさなかった」と述べた。
「韓国は現在、中国に対する外交課題を抱えている。それは、韓国が北朝鮮の安全保障上の脅威に対処するためには、米国と日本との関係を強化する必要があるという事実を、中共に認識させるべきである」と彼は強調した。
76%の韓国人が中国を信用していない
韓国の民間団体である「正義メディア市民行動」は韓国の世論調査機関KOPRAに調査を委託し、1036人の成年者を対象に6月16~17日にかけての2日間、世論調査を実施した。その結果、76%の回答者が「中国を信用していない」と回答した。
「進歩派」を自称する人々の中では64%、「保守派」を自称する人々の中では85%が「中国を信用していない」と回答していた。また、年齢層による回答の違いも見受けられた。20代では81%、30代では82%、そして40代と50代では74%が「中国を信用していない」と回答していた。
最近、中国の駐韓大使である邢海明氏が韓国政府に対して強硬な発言を行った件についても、受訪者の74%がそれを「不適切だ」と評価していた。一方、その発言を「適切だ」と評価した人はわずか20%に留まった。
邢海明大使に対する韓国政府が取るべき措置について尋ねたところ、「強く注意を促すべきだ」という回答が43%で最も多く、「彼を国外追放すべきだ」という回答は22%だった。
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