中国の地方政府債務が激増 しわ寄せは市民に

2023/06/28 更新: 2023/06/27

中国の地方政府の債務は、その規模の巨大さから常に外部からの注目を集めている。今年に入り、中国の地方政府の債務は更に増大し、地方政府が発行する債券において、新たな借入れにより古い借入れを返す債券の比率が顕著に増加している。 

中国財政部によれば、2023年4月末時点での地方政府の債務残高は約37兆527億元(約732兆5千億円)で、これは前年同期比で14.8%増、また2022年末に比べても5.7%増加している。 

2023年の最初の4か月間に地方政府が発行した地方債は約2兆7825億元(約55兆円)で、これは2022年の同期間に比べて32%増加している。発行された債券の中で、再融資債券(既存債務を返済するために新たに発行する債券)は約8306億元(約16兆4200億円)で、これは前年同期比でほぼ倍増している。再融資債券の発行比率は、前年同期の20~30%に増加している。 

今年初から4月までの間、地方政府が満期債券の元金を返済する資金のほとんどは新たな借入によるもので、償還された債券の約93.5%は再融資債券を発行して返済されている。逆に言えば、財政資金等による償還は限定的で、全償還額のわずか約518億元(約1兆240億円)に過ぎない。

また、再融資債券の比率は更に拡大しており、5月には地方債の60%が再融資債券であったと中国メディアは報じている。 

この統計結果によれば、今年の5月には、広東省と山東省の地方債の発行規模が最も大きかった一方、江蘇省、四川省、広西チワン族自治区、貴州省、雲南省、黒竜江省、そして遼寧省の7省では、新たな債券を発行して古い債券を返済する形の再融資債券が発行された。 

地方財政の立て替え金回収に困難が増す 

内モンゴル自治区フフホト(呼和浩特)市のトクト県財政局の馬軍氏は、2023年2月に公開された記事で、中国の地方財政のバランス維持が困難になっていると述べ、収支に矛盾が生じ始めているため、財政運営のリスク管理の必要性が高まっていると指摘した。 

馬軍氏によれば、中国の地方財政は仮払金(予算を前提とした貸付金、その他の受取金を含む)を大量に使用しており、その用途は広範囲に及んでいる。具体的には、社会的な緊急事態対応、土地収集のコスト(土地の調査評価費用、土地取得補償金、再開発補償金等)、大規模なインフラストラクチャープロジェクト、財務プラットフォームや国有企業の設立資金、運転資金、政府債務の代償、工事の未払税金の補填、労働紛争の解決、そして各機関の運営費や人件費の不足補填などである。

新型コロナウイルスのパンデミックの影響により、中国の不動産販売が減少し、土地市場は冷え込んでいる。一方で、大規模インフラプロジェクトが完了した後の収益が低いという問題が浮上しており、これらの要因が立て替え金の回収を一層困難にしている。

財政の仮払金が膨大な規模になったことを受けて、中国共産党の財政部は2018年12月に通知を出し、地方財政機関に対して、2018年末までに貸し付けた金額を2023年末までに回収するよう要請した。

湖南省は2018年に3年間の仮払金の精算活動を開始した。さらに、江西省財政局も昨年と今年の4月末に、2回にわたり債権回収活動を実施した。

今年の5月26日には、湖北省武漢市の財政局が地元新聞で債務回収の広告を全面的に掲載した。259の債務を持つ企業や組織をリスト化し、迅速な債務返済を求めた。このリストには、多数の地方国有企業や武漢市の地方財政局も含まれていた。 

債務返済するため、恣意的に資金流用

2023年5月23日、中国雲南省昆明市の都市投資債に関する会議の議事録がネット上に流出し、中国の地方政府が債務デフォルトを防ぐために資金を流用していた事実が明らかになった。

中国共産党の当局は後にこの事実を速やかに否定したが、議事録の詳細さは人々を驚かせ、社会全体の注目を集めた。

議事録によると、昆明市の土地投資会社のある債務が期限を迎えたが、返済が不可能だったため、昆明市政府は交通投資会社の高速道路専用資金から1億3千万元(約25億7千万円)を移用した。昆明土地予備委員会は更に4千万元(約7億9千万円)を出し、土地投資会社自身も社会から3500万元(約6億9千万円)を調達した。そうして債務デフォルトを回避することができた。 

しかし、次の半年間で昆明市の一部の融資プラットフォームは総額200億元(約3954億円)以上の債券が満期を迎える予定だった。

議事録では、副省長は、雲南省の観光集団の債務が多くの企業から資金を吸い上げ、雲南省の土地投資会社等がまだ回復していないため、昆明市を救えるか否かは明らかでないと述べていたことを記している。

最後に官僚たちは、社会保障基金、医療基金、公積金などを使用することを検討するように提案した。

中国問題の専門家で、カナダ在住の政治評論家である文昭氏は、5月26日に自身のメディアプログラムで、社会保障基金の資金を債務返済に使うことは、事実上、国民の預金を地方政府の債務返済に使うことに等しいと指摘し、その結果は恐ろしいものになると述べた。

文昭氏によると、今後、中国では以下のような状況が生じる可能性が存在する。

1つには、公務員が退職する前に、既に住宅公積金が引き出せない状態になるという事態である。また、病院での医療保険の払い戻し待ち時間が次第に長引き、関連部署が各種手続きに障害を設けて払い戻しを遅延させる現象が起こる。その背後には、関連基金の資金が全て他方面に流用されてしまっている事実がある。

文昭氏は更に、中国の地方政府の財政危機は、西側諸国の政府が直接破産を宣言する形式とは異なり、政府が債務返還するために、恣意的に市民の資産を押収し、その結果、市民の力が枯渇し、貧困化するという形で顕在化すると指摘した。

中国共産党政府は公には自己の債務返済能力が不足していることを認めないものの、市民から資金を盗み、市民に借りた資金を返すという状況が進行中であると述べている。

張宛
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