ワクチン未接種者の血液が今、求められている

2023/07/24 更新: 2024/06/13

※この記事は2023年2月の記事の再掲載です

昨今の「ワクチン接種者の血液」に関する不透明さが、1980年代の薬害エイズと比較されている。当時、HIVに汚染された血液製剤が輸血に使用され、「まるでロシアン・ルーレットだ」と非難を浴びた。最近では、生後4か月の赤ちゃんへの輸血をめぐる一件で、メディアに嵐が巻き起こった。

概要

  • 輸血を必要とする人の中には、新型コロナウイルスワクチン未接種者の血液を希望する人が増えている。
  • 病理学者のライアン・コール博士は、現在の「ワクチン接種者の血液」に関する不透明さを、1980年代の薬害エイズと比較した。
  • mRNAフリーの血液を受け取るには、指定献血と自己献血(セルフドネーション)があるが、どちらの場合も医師から「赤十字特別回収指示書」を提出してもらう必要がある。
  • ワクチン未接種者の血液ドナーとレシピエントをマッチングする「安全な献血」キャンペーンも実施されている。

新型コロナウイルスのmRNAワクチン接種者から提供された血液が、輸血を受けた患者にどんなリスクをもたらすかは不明だ。危険を冒したくないとして、未接種で感染した人の血液を求める人が増えている。そんななか、心臓弁膜症の手術を必要としている生後4か月の赤ちゃんのケースが注目を集めた。ニュージーランドに住むウィル・サベージ・リーブス君だ。

彼の両親であるサマンサさんとコールさんは、新型コロナワクチン未接種ドナーからの血液を希望した。しかし、未接種者の血液が入手可能であるにもかかわらず、医師と病院はその要求を拒否した。この事件はニュージーランドの裁判所で審理されたが、裁判所は医師側に立ち、子供の後見人として接種者の血液を使用して手術を進めることになった。(※1,2)

ワクチン未接種血液を要望するも、病院が拒否

この事件の結末は、これから起こることの先駆けとなるかもしれない。病院は、適合する血液を見つけることが重要であるとして、ワクチン接種者の血液を使って手術を進めるべきだと主張した。ドナー血液のプールが大きければ、適合する血液を見つける確率は最大になる。

さらに、ワクチン安全性研究財団の事務局長であるスティーブ・カーシュ氏は別の意見を提示した。「輸血にワクチン接種者の血液を使用して安全性の問題があったならば、それはすでに表面化していただろう」というのだ。彼らは今の体裁を維持したいと考えており、ある患者にワクチン未接種者の血液を使用させることで、他の多くの患者が同じ要求をするようになりかねないと考えているようだ。カーシュ氏は次のように述べている。(※3)

「もし、ワクチン未接種者の血液を使用することに同意した場合、ワクチン接種者の血液は安全ではないことを認めたと解釈され、誰もがワクチン未接種者の血液を要求することにつながる。つまり、はっきりしない利益のために深刻な血液不足を引き起こす可能性がある」

ニュージーランドでは、ニュージーランド血液サービス (NZBS) が国内の献血と血液採取を管理しており、専門の医師だけが、赤ちゃんのウィル君がワクチン未接種の血液を受け取るための指定献血を要求できる。

しかし、カーシュ氏は「手術を担当する臨床医は、特別な要求を出すにしては証拠が不十分と判断した。病院はNZBSに対して、病院の言う通りにするよう強制できない。例えば、医師と両親とが合意しても、NZBSがその要請を正当だと思わなければ血液提供を拒否できる」と指摘した。(※4)

病院側はmRNAワクチンの接種は「今のところ安全である」と主張している。(※5)また、カーシュ氏によれば、「裁判所には医師を評価する法的・技術的能力がないため、医師の専門家としての意見に味方した」という。(※6)

一方、メディアは、予防原則を尊重したいという合理的な要求を、過激な「ワクチン反対派」によって考え出された陰謀論および偽情報であると描写している。  その一例として、ニューヨーク・タイムズ紙は次のように報じている。(※7)

「『この事件、そしてこの家族の間違った科学的議論は、ネット上の誤情報と陰謀論の危険性を浮き彫りにしている』と専門家は語る。ニュージーランドのモニタリンググループ、ディスインフォーメーション・プロジェクトの研究者、サンヤナ・ハットツバ氏は『これは、最も有害な公開討論になった。陰謀論が蔓延する過激なプラットフォームでヘイトスピーチが急増している』と述べた」

医療サービスだけがこの家族の要求を拒否したのではない。ニュージーランドの高等裁判所が、赤ちゃんのウィル君に関する医学的決定を下す権限を2人の医師に与えている。(※8)この決定の支持者らは「ワクチン未接種ドナーからの血液は利用可能だったので、こんなことになる必要はなかった」と述べた。(※9)

しかし、イタリアでも同様のケースとして、2歳児の心臓手術中にワクチン未接種ドナーの輸血のみを要求した両親に対して、裁判官が不利な判決を下している。(※10)

接種者の静脈に異常な血栓、エンバーマーが発見

エンバーマーの資格を持つ葬儀ディレクターとして、20年以上の経験を持つリチャード・ハーシュマン氏は、2021年半ばに新型コロナワクチン接種が開始されて以来、遺体に「奇妙な血栓」を発見しているという。

「エンバーミング(死体防腐作業)を行うときは、動脈から防腐剤を注入し、静脈から血を抜かなければならない。この防腐処理の前に、巨大で長い血栓、繊維のように見える血栓を引き抜いた」(※11)

「血栓はゴム状で、白い虫のような見た目をしている。先頭は赤くて正常な血栓のように見えるが、大部分は違う。白い繊維状の物質で構成されている。普通ではない」(※12)

「血栓は通常、凝固した血液が一体になったものなので滑らかだ。握ったり触ったり掴もうとするとバラバラになる。つまり握れば再び血液に戻るのだ。しかし、この白い繊維状のものはかなり強力で、決してもろくない。持つと非常に弾力がある。普通ではとても考えられない。このようなものが体内にあってどうやって生きていけるのか、私には分からない」

重要なのは、エンバーマーがワクチン接種後の死者だけでなく、輸血を受けた人からも異常な血栓を発見したと報告している点である。カーシュ氏は「新型コロナワクチン接種者の血液を受け取るリスクについては分からないが、ゼロではない」と述べている。(※13)

もう一つ、アレキサンダー君という赤ちゃんのケースを紹介する。彼はワクチン接種者の血液を輸血された後に巨大な血栓ができ、最終的には血栓が左膝から心臓まで伸びたために亡くなった。(※14)カーシュ氏によると、その後、病院は関連するすべての医療記録を削除したという。(※15)

「ワシントン州のセイクリッド・ハート病院は、ワクチン接種者の血液が輸血され、血栓が原因で亡くなった赤ん坊のアレックス君の死に関するすべての記録を消去していた。したがって、問題の証拠を示すものはもはや何も残っていない。 CDCがワクチンと自閉症に関連するすべてのデータを消去したのと同じことだ。これが今日の科学の仕組みだ」

誰にも分からない、血液供給の安全性

米国では、血液を必要としている人が2秒に1人のペースで増加している。(※16)医療の緊急事態になれば、輸血によって命が救われる可能性だってある。それでも、患者に新型コロナワクチン未接種の血液という選択肢を与えるべきだろうか。

赤十字社は、米国食品医薬品局(FDA)の献血資格ガイダンスに従っている。ガイダンスは「新型コロナワクチン接種者で、献血時に症状がなく体調にも問題がないようであれば、ほとんどの場合延期の必要はない」としている。(※17)

赤十字社の生物医学コミュニケーション部長であるジェサ・メリル氏は、デイリー・ビースト (The Daily Beast)誌に次のように語っている。「ワクチンに反応して刺激された免疫系が作り出す抗体は血流全体で見つかるが、実際のワクチン成分は見つからない」(※18)また、カーシュ氏は、心臓学者・内科医・疫学者のピーター・マッカロー博士と話した後に次のように報告している。(※19)

「彼(マッカロー博士)は『ワクチン接種者の血液を使うのは、マッチングに重要な課題があるからだ』と言っていた。ドナー血液の場合、採取する血液プールが少ないためマッチングの質はそれほど高くはない。マッチングされるのは血液型だけではない。」

「ワクチン接種者の血液を使うことのリスクを誰も定量化していない。彼(マッカロー博士)は次のように語っている。『もしリスクが高ければ、今頃は問題になっているだろう(私が納得いかないのは、ワクチン関連のものには、“あえて知らないふりをしている”ものが多いことだ)』 」

過去には、汚染血液製剤でAIDS感染が続出したことも…

病理学者のライアン・コール博士は、現在の「ワクチン接種者の血液」に関する不透明さを、1980年代の薬害エイズと比較している。当時、HIVに汚染された血液製剤が輸血に使用され、多くの患者がHIVに感染した。(※20)

「誰にも分からない。ワクチン未接種者は輸血後に大きな血栓ができて死亡した。血液バンクはチェックしていない。探さなければ見つけることはできない。これは、1980年代の血液バンクや血友病患者、HIVと似ている。問題ないのかもしれない。」

「しかし、問題かもしれない。体内を循環するスパイクタンパク質をチェックするための、学術的に利用可能な測定法がある。科学的な調査なしに、官僚の宣言に基づいて血液供給の安全性を保証しないことは、犯罪的な過失だ」

これは、薬害エイズの時も同じだった。1983年1月、米国疾病管理予防センター(CDC)は、血液と血液製剤がAIDSを伝染させることと、この病気が性感染症であることを示す強力な根拠を明らかにした後、血液バンクに対して、献血者に性的行動について直接質問し、一連のスクリーニング検査を経て献血を実施するよう推奨した。(※21)

血液バンクコミュニティは、「ドナーの性的嗜好に関する直接的または間接的な質問は不適切である」とし、検査室でのスクリーニング検査を推奨しないという声明を発表した。(※22)これはEncyclopedia.comが指摘している通りだ。(※23)

「実際、AIDSが出てきた初期の頃には、感染者の多くが輸血による感染だった。輸血に使用される前に、血液中のAIDSをチェックする検査を開発するのに 5年以上かかったため、多くの人が病院での輸血でこの病気にかかった。」

「多くの国が血液検査の採用に遅れをとっていたため、AIDSの流行は1990年代にアフリカとアジアで蔓延し、さらには21世紀初頭にまで続いた」

1980年代には、この汚染血液製剤に対する恐れが高まり、多くの人々が献血された血液を拒否した。1985年に、汚染血液製剤によるAIDS感染で妻を亡くしたある男性がAP通信に次のように語っている。(※24)「ロシアン・ルーレットで遊んでいるつもりか?たとえ緊急事態であったとしても、私に発言権があるならば、私は血液プールから輸血しないだろう」

数十年後の今、ワクチン接種者の血液を巡って、医師は患者から同様の懸念を耳にしている。カナダのアルバータ州南部で輸血および移植医療部門の責任者を務めるダビンダー・シデユー博士は、CTV News に対し、「ここ数か月間、少なくとも月に1度か2度は、ワクチン未接種ドナーからの血液についてのリクエストがあった」と語っていた。(※25)

「ワクチン未接種者」の血液を受け取る権利

現状、献血者は献血センターでワクチン接種状況について尋ねられるかもしれないが(※26)、この情報が輸血を受ける者に伝えられる保証はない。ちなみに、赤十字社は「新型コロナワクチンを接種した場合は、献血する際にワクチンの製造メーカーを明らかにしなければならない」と述べている。(※27)

それでも、ほとんどの病院は、輸血を受ける患者にこの情報を伝える可能性は低い。 新型コロナワクチン未接種のドナーからの血液を探している場合、どのような選択肢があるのか。ドナーが特定のレシピエントに献血する指定献血も選択肢ではあるが、通常は、血液型が非常に稀であるために一致する血液が入手できない場合にのみ使用される。(※28)

自己献血は、手術や医療処置の前などに自分で使用するために献血する別のオプションである。自己献血であれ指定献血であれ、完了するには医師に赤十字社特別徴収票を提出してもらう必要がある。(※29)

新型コロナワクチンの未接種ドナーとレシピエントをマッチングさせる「安全な献血」キャンペーンも行われている。今のところ、それらは血液を必要としている人とドナーをマッチングするためのリソースとして機能しているが、mRNAフリーの血液バンクが確立されることが期待されている。(※30)

「mRNAフリーの血液を扱っている血液バンクはまだない。そして、私たちはすでに何百ものクリニックに問い合わせたが、現時点では、少なくともヨーロッパでは、すべてのクリニックにおいて患者が血液を自由に選択する人権が認められていない。あるいは、少なくともそのことに言及して欲しくないようだ。それは報復を恐れているからだ。しかし、私たちは、そのようなクリニックに世界的なネットワークを提供できるようになるまで、あきらめないと約束する」

mRNAフリーの輸血という両親の希望が打ち砕かれた赤ちゃんのウィル君について、カーシュ氏は次のように語っている。(※31)

「医療の予防原則に何が起こったのか。現在、血液供給が安全かどうかを知ることはできない。なぜなら、誰もそのことについて質問をしようとしないし、それに答えるために必要な実験をしたくないからである。以上の理由から、ワクチン未接種の血液を使用したいというウィル君の両親の要求は尊重されるべきだ」

原文は2022年12月17日、Mercola.comに掲載されました。

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参考文献

オステオパシー医師兼作家。「Mercola.com」を創設。自然健康の分野で複数の賞を受賞。主なビジョンは、人々が健康を管理できるよう支援する貴重なリソースを提供することで、現代の健康パラダイムを変えること。