「健全な」雇用率に潜むトリック
ホワイトハウスの声明によれば、「バイデノミクスの下で、失業率は4%を下回った」とあるが、ここにはトリックがあると指摘されている。
仕事を求めている健常者の割合である労働参加率は、2000年に67%強の高水準を記録した。2015年には最低の62.5%まで落ち込んだが、トランプ前政権下の2020年には再び63.3%まで上昇した。 その後、新型コロナウイルスのパンデミックの際には60%にまで急落し、バイデン政権下では現在62.6%で、オバマ政権時と同じ水準である。
労働市場から去る米国人が増加している要因が社会制度や失業手当の拡大とする見方が強い。また、求職活動をしていない人は失業統計にカウントされないため、失業率が低く見える。
ラッファー氏は「働かないことを奨励することで失業率が低下したのは事実だ」と述べ、「労働参加率も低下した。雇用率も失業率も低下し、健全な経済とは正反対の結果となっている」とした。
超富裕層への大盤振る舞い
バイデン氏は、レーガン政権下の減税は富裕層のみに恩恵を与え、「中間層を空洞化させた」と批判している。対照的に、ホワイトハウスの声明によれば、バイデノミクスの中心的な柱は「中間層を成長させるために労働者に権限を与え、教育する」ことである。
しかし、経済学者の中にはバイデン氏の考えは逆で、政府の介入は民間経済を更にインサイダーゲーム化し、一般的な労働者を犠牲にしていると指摘する声もある。
「大きな政府と政府支出の拡大について確実に分かっているのは、それが超富裕層やレントシーキング層(政府や官僚組織へ働きかけ、法制度や政治政策の変更を行うことで、超過利潤を目論む人々)に甘い汁を吸わせるということだ」とラッファー氏は語った。
「過去5年間の政府支出の急増により、米国の億万長者の富はGDPの15%から18%へと大きく跳ね上がった。バイデノミクスの上に覆いかぶさる公平性の議論はここまでだ」
ラッファー氏は、「今日、民間企業で利益を上げる最善の方法は、契約や規制を政府に働きかけることだ」「利益重視の企業に、『政府へのロビー活動で最大の利益を上げられる』と言えば、当然(ロビー活動を)するだろう」と述べた。
規制と中央集権化
バイデノミクスのもう1つの主要な要素は、政府規制の急激な強化である。環境保護庁(EPA)による新たな強硬な排出規制、エネルギー省による新たな家電製品規制、そしてすべての上場企業が自社のCO2排出量についての監査報告書を提出する事を求める、証券取引委員会の新たな要求が挙げられる。
「繁栄を解き放つ委員会」が発表した6月の報告書によると、バイデン政権が新たに導入する規制による追加コストは、「現在のコストと将来予想されるコストの両方を含めると、1世帯あたりほぼ1万ドルに達する」と試算されている。対照的に、トランプ前政権は規制コストを1世帯あたり1万1千ドル削減したという。
連邦政府機関はバイデン政権下で実施された新規制のコストは年間1730億ドル(約24兆5459億円)であったと報告しているが、同委員会の報告書では実際には更に上回る、年間6160億ドル(約87兆7116億円)に上ると推定されている。
コスト面以外にも、特に現政権が地方政府を犠牲にして、積極的に連邦政府機関内に権限を集中させようとしているという批判もある。
ウィリアムズ氏は、「現政権の政策アジェンダに対する我々の最大の批判の1つは、ワシントンでの決定を連邦化しようとすること、そして中央政府と州が互いに競争することを認めようとすることだ」と指摘。
バイデン政権は「大きな政府のアジェンダを支持して、多くの州のインセンティブ構造を変えようとしている」との見方を示した。
歴史的に、米国の各州は政策に関して自由に競争してきたため、何が最も効果的かを試行錯誤することができた。企業や労働者は通常、生活費、税率、規制、生活の質などの面で最も魅力的な条件を提供する州への投資や移転によって対応しており、ここ数年、カリフォルニア州、ニューヨーク州、イリノイ州などの進歩的な州からテキサス州やフロリダ州などの保守的な州への移転が殺到している。
ウィリアムズ氏は、「バイデン氏の政策課題は、選挙の連邦化、州の労働権法の禁止、あるいは連邦政府の救済措置を受けるなら減税はできないと各州に命令することなど、可能な限り州の自治と連邦主義を弱体化させることである」としている。
また「バイデン政権は、前例のない額の連邦政府援助を州予算に流し込んだ」とも述べ、「連邦政府の援助は一時的なものだが、それに付随する紐帯は一時的なものではない」と付け加えた。
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