米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏は、AIは選挙を簡単に操作することができ、特に候補者を分けるのが難しい場合、AIが選挙結果をひっくり返す可能性があると警告した。
7月11日付のブログで、ゲイツ氏はAI によって生成されたディープフェイクや誤った情報は、選挙や民主主義を損なう可能性があると認め、
「AIが生成したディープフェイク(AIの仕組みで動画の中の人の顔などの一部を入れ替える手法)が選挙を傾けるために使われる可能性がある」と書き込んだ。
有名政治家の映像を捏造したフェイクビデオはすでに存在しており、ゲイツ氏は
「大きな選挙が行われる日の朝、候補者の一人が銀行強盗をする動画がネット上に広まったと想像してみてください。それはフェイクニュースだが、それを証明するのに報道機関や選挙キャンペーンは数時間かかる」と指摘した。
情報戦
人工知能の急速な進歩により、フェイクビデオの制作が安価で、かつ迅速に行えるようになり、2024年の米大統領選に大きな影響を与えている。
先月、「デサンティス ウォールーム」というツイッターユーザーが、トランプ前大統領と、感染症発生時に数々の物議を醸す対策を出した米国の感染症専門家ファウチ氏の写真一式を投稿した。
そのうちの3枚には、トランプ氏がファウチ氏と抱き合ったり、キスをしたりする様子が写っており、2人が親密な関係にあったことを示唆している。写真群は「現実生活のトランプ」と名付けられていた。
後に偽物だと証明されたこの写真は、フロリダ州のデサンティス知事とトランプ前大統領、共和党の指名候補として最も競争力のある2人を傷つけた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は以前、インターネット規制当局が発表した警告を引用し、AI技術は、偽の投票時間や場所、有権者登録期限を流布したり、人々の投票方法に影響を与えたりするなど、より悪質な目的のために不誠実な人物によって使用される可能性があると指摘した。
AIはさらに、異なる対象者の特性に合わせて偽情報を作成し、送信する。
ゲイツ氏とAI
AIによる選挙操作に大変懸念を示しているが、ゲイツ氏が設立したマイクロソフトはAI分野のリーダー企業の1つだ。
公開データによると、マイクロソフトはOpenAIに130億ドル( 約1兆8008億円)を投資し、現在最も人気のあるAIチャットボットであるChat GPTの開発を支援した。また、マイクロソフトはOpenAIのインテリジェント処理コード機能を自社のBing検索エンジンなど多くのサービスに組み込んだ。
ゲイツ氏自身はAIに肯定的だ。11日のブログでは、同氏はAIがディープフェイクを識別できると主張し、国防高等研究計画局(DARPA)は映像や音声が操作されているかどうかを識別する技術に取り組んでいることに言及した。
氾濫するフェイクビデオや写真に対し、ゲイツ氏は、人間は盲目的に何かを信じるべきでないと考えている。
科学者たちの懸念
ここ数か月、AI研究に携わる数多くの科学者たちが、AIの開発は人間の手に負えないものであり、このままでは人類は自分が開発したAIによって滅亡されてしまうかもしれないと警告を発し続けている。
AI研究の第一人者であるカナダトロント大学のジェフリー・ヒントン教授は6月28日、トロントで開催されたコリジョン・テクノロジー・カンファレンス(Collision Technology Conference)でこのように警告した。「最も一般的なレベルでは、人間よりもずっと賢いものがあれば、それは人間をいとも簡単に操るだろう。 私は、ロボットが自分たちの目標を達成するために人間を操ると思う」
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