深刻な経済不況下にある中国では、乳製品消費量の低迷が続き、廃業に追い込まれる牧場が相次いでいる。乳業の業界関係者によると、多くの乳製品関連企業が淘汰されるなか、かろうじて廃業には至っていない牧場でも生き残りをかけて、コスト削減のため乳牛を売却するなどしているという。
河北省のある大規模酪農場の責任者はこのほど、上海の官製メディアの取材に対し、「最近、飼料価格が高騰している一方、乳価は下がり続けている」と明かした。
この責任者によると「私の農場では、これまで乳価は比較的安定していたが、最近は原価を下回り、1キロあたり3.6元(約71円)まで下落した」として、市場の先行きへの懸念を語った。そのため、今では毎月の損失を少しでも抑えるために、一部の乳牛を売りに出したり、殺処分するなどして飼育頭数を減らしているという。
中国乳業協会の高鴻賓会長は19日に開催された「2023年度の中国乳業発展戦略高層フォーラム」において、「今年、我が業界は消費の低迷、乳価の下落、コストの上昇といった多くの問題に直面しており、加工業者も酪農企業も深刻な困難に直面している」と述べた上で、「今年は(乳業界にとって)2008年の汚染粉ミルク事件以来、最も厳しい年になるだろう」と評した。
高会長によると、すでに多くの企業が淘汰され、大手の乳企業は以前の815社から587社に減少しているという。「この減少傾向は今後も続く」と高会長は示した。
中国では2008年、メラミン入りの粉ミルクを飲んだ乳幼児少なくとも6人が腎不全で死亡し、約30万人が健康被害を訴えるなど大きな社会問題となった。有機化合物であるメラミンは、毒性があるが、検査上のタンパク質含有量を贋造することができるため、乳幼児用の粉ミルクに意図的に混入されたのである。
同フォーラムに参加した中国国家乳牛産業技術体系首席科学者の李勝利氏も、次のように述べた。
「目下(中国の)酪農業は60%以上の損失を被っており、保有する乳牛の頭数も大幅に減少している。各地での高温や干ばつ、穀物価格の上昇による飼料コストの増加のほか、消費量の低迷、資金難などの問題により、一部の牧場は廃業へと追い込まれるだろう」
李氏の推定では「今年は110万トン以上の生鮮な乳製品が売れ残る」としている。
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