米カリフォルニア州フレズノ郡の倉庫で、違法に営まれていたウイルス実験施設が発見された。約1000匹ものマウスに対して人免疫不全ウイルス(HIV)や新型コロナなどの多数のウイルス性病原体を生物工学的に感染させ、実験を行なっていた。
裁判所に提出された資料によれば、この倉庫には約30台の冷蔵庫と冷凍庫、インキュベーター、分離器などの設備を備えていた。不適切な管理状況のもと、少なくともマウスは200匹ほどが死亡。現地当局が残りのマウスを安楽死させたという。
疾病予防管理センター(CDC)が押収した800以上の化学物質についてテストを行ったところ、HIVや、B型・C型肝炎、肺炎球菌、クラミジア、風疹、マラリア、新型コロナウイルスなど20以上の感染症病原体が見つかった。
このほか、倉庫のある部屋からは「ヒトの血液、組織、その他の体液のサンプル、血清、ラベルのない液体、疑わしい生物材料といった何千ものバイアル」や、新型コロナウイルス感染症検査薬や妊娠検査薬の製造機器などを発見した。
違法建築の捜査で…大量のマウス
裁判資料によれば、この倉庫は3月、不審なガーデンホースの取り付けなど多数の建築基準法違反と疑われる設備があり、地元当局から操業停止と立ち退きを命じられていた。4月に捜査員が裁判所令状を持って倉庫内に立ち入ると、大量のマウスや、医療実験器具などを発見。CDCや有害物質管理管理局(DTSC)など各専門機関がたずさわる捜査へと拡大した。
この違法な実験施設は昨年10月から運営されていた。カリフォルニア州衛生当局の施設運営許可は得ていない。このため、実験用マウスは不法に処分されていた可能性が高い。
運営会社はプレステージ・バイオテック。代表であるワン・ジャオリン(Wang Zhaolin)氏は立ち入り時に現場にいて、倉庫内のマウスは「新型コロナウイルスを捕捉し、広めるために遺伝子組み替えされた」と語ったという。裁判資料にはマウスが不適切に管理されていたとも記載されている。
地元当局が管理する企業情報によれば、プレステージの管理職には中国系の氏名が名を連ねる。当局による捜査は続いているものの、プレステージ側は協力的ではない。地元メディアによれば、7月末の段階で、ウイルスや液体、マウスなど生物的な物質はすべて倉庫から除去されている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。