ヘンリエッタ・ラックス氏の子宮頸がん細胞を無断で採取し、ポリオ・ワクチンやHIV治療薬などの開発に用いたとして、ラックス氏の遺族は10日、細胞使用の停止などを求めてバイオ医薬品大手ウルトラジェニックス社を提訴した。
米メリーランド州連邦地方裁判所に提出された訴状によると、ウルトラジェニックスは、「アフリカ系アメリカ人のヘンリエッタ・ラックスの生きた遺伝物質を商品化するという意識的な選択をした」と主張している。
1950年代、ラックス氏はボルチモアのジョンズ・ホプキンス病院で子宮頸がんの治療を受けた。治療中、医師らは彼女から無断で子宮頸がん細胞を採取した。後に世界各地で様々な医学的研究に使われるようになったその細胞は「ヒーラ細胞」と呼ばれ、人工的に培養され無期限に分裂できる初の「不死」細胞株となった。翌年、ラックス氏は31歳という若さで亡くなった。
それ以来、ウルトラジェニックスは「ラックス夫人から盗んだ細胞を用いて、『独自の』遺伝子治療製品を製造することで巨万の富を築いてきた」と訴状は述べている。
また、法廷文書には「ウルトラジェニックス社がラックス氏の細胞から得た対価は、信頼関係の侵害によって得られたもの」「ウルトラジェニックス社がヒーラ細胞の不当な培養と販売を止めるつもりもない」などと記された。
これらの行為から、遺族は裁判所に対し、ウルトラジェニックスがヒーラ細胞を使用することを禁止するほか、ヒーラ細胞とそれに関連するすべての知的財産に対して信託を設定し、同社が利益を放棄するよう求めている。
ラックス氏の物語はハリウッドの注目を集め、2017年、レベッカ・スクルート著『不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』を基にしたテレビ映画が、米放送局HBOで放映された。
エポックタイムズはウルトラジェニックスにコメントを求めたが、本記事掲載までに返答は得られなかった。
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