近年、中国国内外の状況の変化により、海外の自由主義国で学ぶ多くの中国人留学生も一定のプレッシャーを感じている。
ほとんどの留学生は「真実は何か」ということを知っており、中国共産党(中共)の悪行を見て自分も声を上げたいと思っているが、国内にいる家族の安全への懸念は絶えない。しかし、そのなかで勇気を持って立ち上がる留学生もいる。将来は法律家になることを目指す郭恒倩さんも、その一人である。
西安市の西北政法大学を卒業し、現在、南カリフォルニア大学の法学修士である郭恒倩さん。彼女は「中国の法体系は、すでに崩壊した」と考えている。
中共は「法律の最低ラインさえも壊した」
まだゼロコロナ政策が行われていた昨年。海外に身を置いていた郭さんは、中国国内では上海のような大都市を含めて、住民の住宅が防疫の名目で不法に侵入され、ペットの犬や猫が勝手に殺処分されるなど、当局が私的財産を侵害する事件が大量に発生しているのを見た。
「(住民が)外部に助けを求めず、110番通報をしなかった場合、警察はいかなる理由があっても住民の家に勝手に入ることはできません。住居は住民のものですから、決定権は住民にあります」と郭さんは語った。
さらに郭さんは、次のように指摘する。
「政治学には、制約なき権力は必ず悪法である、という原則があります。このような悪しき権力が拡大されれば、必ず他人の権利を侵害するのです。 国家の公権力が拡大すれば、権利を侵害されるのは一般市民です」
中国の著名な人権派弁護士・高智晟氏が失踪してから6年が経過した。そのほかにも、多くの調査報道ジャーナリストが 理由もなく「失踪」し、あるいは発言しなくなっている。
「法への信仰と信頼をもって、迫害された人々を弁護していた人が、相次いで消されたのです。このことから私が得た答えは、中国の法律は偽物である、という事に他なりません」
将来、誠実な法律家を目指す郭恒倩さんは、そのように述べて、中国の現行の法律を批判した。
「民衆の怒り」には力がある
米国にいる郭恒倩さんは、中国の法治が悪化しているのを感じている。それはあたかも、中共が市民の権利を少しずつ侵食することによって「市民権侵害に対する社会の寛容度を試し続けているようだ」と、郭さんは指摘した。
コロナ感染拡大期間中、はじめは集合住宅の外門が施錠され、住民の出入りが禁止された。昨年になると、多くの都市で住民の家のドアが鉄鎖で締められたり、極端な防疫措置として溶接されたりする事例が報告された。
昨年11月、ウルムチのあるマンションで火災が起き、少なくとも10人が死亡(注:非公式な数字としては、子供をふくむ40数人が死亡)した。マンションはコロナ対策で長期間封鎖されていたため、住民は避難できず、消防車が近づくこともできなかった。悲劇はこのような背景の下で起きた。
郭恒倩さんは、これを強く批判する。
「これは不法拘禁といいます。いかなる個人や組織も不法に人を拘束する権利はありません。これは刑法に触れる犯罪です」
しかし、門の施錠などを行った役人や個人が、処罰されたというニュースは全くない。同じような状況が発生したら「彼らは、また同じやり方を繰り返すでしょう」と郭さんは考えている。
ウルムチの高層住宅火災後、若者たちが白紙を掲げて街頭に立ち、中国当局の言論弾圧や過激な防疫対策に抗議する「白紙革命」が広がった。当局は市民運動の勢いを恐れ、12月はじめに、それまでの極端なゼロコロナ政策を突然中止した。
郭恒倩さんは「人々は中共の権力部門が行った違法なこと、納得できないことを容認してはいけません。それに立ち向かうべきです。もし全ての人々が立ち上がったら、中共はそれほどの権力は持てないはずです」と指摘する。
留学生を監視する「学生スパイ」
郭恒倩さんによると、米国の大学には中共の 「学生スパイ」 が隠れているという。彼らは密かに他の学生の動向を探ったり(本国に)報告したりしている。それが、一部の留学生が意見を公にする際に慎重になる理由だという。
ある学生は郭恒倩さんの身を案じて、こう告げた。「一部の学生は、政治任務を持って、他の留学生の発言を監視し、記録している。だから、あなたも気をつけて。中共に対する批判的な発言はしないように」
昨年、郭さんの親友である女子留学生は、米国で行われる「白紙革命」の抗議集会に自分も参加するといって非常に喜んだが、あとになって中共の組織内にいる本国の両親が何らかの影響を受けることを懸念し、参加することをやめた。
一部の学生が抗議集会のポスターを貼り、皆で参加するよう呼びかけた。しかしその一方で、ポスターを破りに行く学生を、郭さんも目の当たりにしている。中共の宣伝によって、一部の人は国家と政権を混同させている。「国を愛するために、この政権(中共)を愛さなければならない」と思わせているのだ。
「彼らは操られ、騙されている。しかし自身は、それに気づいていないのです」と郭恒倩さんはいう。
「もし本当に、その土地を愛し、この国を愛しているなら、中国共産党政権が国を破壊し、民衆を迫害する時、声を上げるべきです。そうすれば、この社会を良くすることができます。それが本当の愛国なのです」
郭恒倩さんは、そう語った。
いわゆる「学生スパイ」などを気にしていない郭さんは、「法律を学ぶことで勇気を与えられた」という。
「米国は法治国家です。中共が私を脅迫すれば、私は米国の警察の助けを求めることができるのです」
多くの中国系の学生も、郭恒倩さんのように恐怖心を乗り越えて行動を起こしている。昨年、「白紙革命」のピーク時に南カリフォルニア大学では何度も学生の集会が開催された。毎回多数の学生がスピーチをしたり、スローガンを叫んだり、人権と自由を守る詩を朗読する姿が見られた。
中国の学生に真実を伝えるため、郭さんは頻繁にWeChatの「モーメンツ」へ真実の情報を盛り込んだ画像を投稿している。その結果、一人の中国人学生は地元での「白紙運動」の抗議に参加することになった。また、何人かの中国の学生が、郭さんに「私は絶望的な気持ちになった。できるだけ早く海外に行きたい」と語ったという。
郭恒倩さんは、中共の共青団(共産主義青年団)組織が「邪教に関する16の特徴」をリストアップした文書を配布したことに言及した。郭さんは、こう結論づける。
「(私が)海外で暮らした数年間を通じて、自分の観察と思考に基づき、あることに気づいたのです。この邪教に関する16の特徴は、その全てが中国共産党を指している、ということです!」
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