当局による個人住宅の強制撤去 所有者の女性が抵抗し、焼身自殺図る=中国 江蘇

2023/08/26 更新: 2023/08/25

8月24日、江蘇省連雲港市東海県で、建築中であった個人所有の住宅が、当局によって「強制取り壊し」に遭った。その際、これに抵抗する所有者の女性が、焼身自殺を図る事件が起きた。

SNS上には「焼身自殺を図って、火だるまになった村民が、住宅の屋根から転落する場面」など、悲惨な場面を映した動画が拡散されている。

動画のなかで、周りの人たちは凄まじい叫びを上げている。ところが、強制取り壊しの「実行部隊」と思われる黒服の要員たちは、まるで自分には関係ないかのように、消火や救命をするでもなく、この悲劇の一部始終を見物していた。

 

目撃者が中国メディア「新京報」に明かしたところによると、焼身自殺を図った所有者である村民は初老の女性(60歳前後)だという。新たに自宅を建てようとしていたところ、8月24日の朝5時過ぎ、強制取り壊しの実行部隊がやってきて、建築中の住宅を取り壊そうとした。

これを許さない所有者の女性は「この家を取り壊すならば、私は(自分の体に)油をかぶるわよ」と告げたあと、興奮状態のなかで本当に油をかぶり、火をつけたという。

女性は病院に運ばれたが、その後の生死は不明。動画を見る限り、全身がすさまじい炎に包まれ、数メートルの高さから落下していることから、生命の危険は免れないだろう。

事件後、現地政府の調査チームは、この強制立ち退きを実行していたのは同県の「安峰鎮政府」の要員であると明かした。当局者が違法建築を取り壊す作業をする過程で「現場にいた反対者の1人が点火自傷(自ら火を着ける自傷行為)し、さらに1階の屋上から転落して負傷。現在は病院で治療中」と発表している。

現地当局の、あまりにも冷淡にみえる発表や、ネットに流出した動画のなかで、当局の関係者が消火や救命に動かず「高見の見物」をしている反応をめぐり、ネット上では批判が殺到している。

「点火自傷だって? 誰が好き好んで、そんなことをするものか」

「たとえ本当に違法建築であったとしても、政府には、これを取り壊す権利はない」

「庶民が、自分で自分の家を建てることが許されないのは、販売用の商品房(分譲住宅)を買わせたいからだろう。その魂胆が見え見えだよ」

そのほか、中国では今、債務返済に追われる地方政府が「住民の土地を強制収用して、不動産開発業者に売却する」という手法がはびこっており、社会を不安化する原因の一つにもなっている。今回の動画の住宅がそのことに該当するかは不明だが、このような暴力的な方法で個人の住宅を強制撤去することは、いかに公権力といえども許されることではない。

立ち退きに応じない市民や村民に対して、地方政府や開発業者が雇った暴力団による殴打、脅迫や嫌がらせ、理由をこじつけた留置など、理不尽な暴力が後を絶たない。もちろん、地方政府がこれを黙認しているため、警察も介入できないのだ。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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