中国共産党(中共)は20年間にわたり、低中所得国に数百億ドルを注ぎ込み、「世界規模発展」の名目で大規模な港湾開発プロジェクトに資金を提供してきた。
しかし、専門家や議員たちは、一党独裁体制を敷き中国を支配する中共がこうした港湾で海外軍事基地を作ることで、世界的な軍事的プレゼンス(存在感)を拡大しようとしていると警告している。
米国の開発援助調査機関「エイドデータ」の報告書によると、中共が2001年以来、海外の港湾インフラに投資した金額は300億ドル(約4兆4千億円)に上る。
中共の脅威に対抗することを任務とする議会関係者にとって、同政権が新たな基地建設の機会を模索していることは、早急に対応が必要な憂慮すべき事態である。
米下院の中国特別委員会で委員長を務めるマイク・ギャラガー議員(共和党)は、こうした中国の海外拡張に対抗する唯一の手段は、米国による軍事・外交投資の拡大だと指摘。パートナー国への投資が、中共の忍び寄る影響力を牽制できるのではとの考えを示した。
「中共の海外軍事プレゼンスの拡大は、鳴り響く警告アラームだが、我々はスヌーズを押し続けている」とギャラガー氏はエポックタイムズに語った。
「中共の悪影響と軍事的侵略に対抗するために、米国は自国の軍産能力を高めると同時に、インド太平洋でより存在感を示し、主要なパートナー国との協力と外交を拡大し、彼らが債務トラップ外交に屈しないようにすべきだ」
中共は世界的な軍拡を目指している
エイドデータの報告書「Harboring Global Ambitions(仮邦訳:国際的な野望を抱いて)」は、20年以上にわたる中国国有企業による海外港湾プロジェクトへの公式投資を調査し、これらのプロジェクトが新たな軍事基地の基盤になり得る可能性を分析した。
報告書によれば、2000~23年までの間に、中共は46の中低所得国にある78の港湾における123の異なるプロジェクトに対して、融資と助成金を通じて299億ドルという途方もない金額を費やしたという。
これらのプロジェクトはいずれも、中共または国有企業が直接資金を提供したものである。
一方、報告書は中国政権と正式なつながりのない影の企業の潜在的な支出や、中共が推し進める「軍民融合」についての調査を行なっていないため、投資額ははるかに上回る可能性がある。
「軍民融合」とは、中国の軍事的近代化を強化するために民間で開発された研究・技術を活用しようとする国家主導の戦略だ。
シンクタンク「米高等国防研究センター」のポール・クレスポ会長は、この途方もない取り組みの背景には、世界中で米国を脅威にさらしたいという中共の願望があると指摘する。
「中国は西太平洋のはるか彼方、台湾をめぐる戦争中に(米国に)対抗できる、大規模で攻撃的な外洋海軍を急速に構築しつつある」
「これにより、わが国の補給線を脅かそうとしている。それだけではなく、中国は外国の超大国海軍が自分たちの玄関口にいるような感覚を米国にも味あわせたいと考えているのだ」
中共は現在、「アフリカの角」ジブチにある1つの海外軍事基地しか認めていない。しかし、中国政府高官は以前から、自国の軍隊がよりグローバルな野心を抱いていることを認めており、同様の基地を建設する可能性を示唆している。
中国の王毅外相は2016年、中国はジブチにある基地と同様の軍事施設を開発するためにパートナー諸国と協力する用意があると述べた。
同様に、中国国防大学が発行した2020年版報告書『軍事戦略の科学』は、中国の影響力を拡大するために、あらたな長距離対応の海軍施設ネットワークが必要だと示唆している。
「海軍部隊の外洋支援能力を向上させるためには、大規模な支援艦の開発に加え、長距離海上総合補給地点の建設や、海軍部隊が外洋で海外軍事作戦を遂行できるようにするための多チャンネル化も重視しなければならない」
国防情報局の海軍駐在官を務めていた経験のあるクレスポ氏は、このような基地ネットワークは、ますますグローバル化する中国の軍事的プレゼンスを長期的に維持するための不可欠要素になるだろうと述べた。
「世界規模で米海軍に挑戦するためには、中国は再武装や(燃料)補給し、また急速に拡大する艦隊の修理に対応できる基地を必要としている」とクレスポ氏は言う。
同様に、エイドデータの報告書も、中共による多額の海外投資を、米国との国際的な影響力を巡る広範な争奪戦の一環と位置付けている。
一方で、ギャラガー氏は中共の「世界のどこでも力には力で対抗する」という鉄壁のコミットメントとは対照的に、報告書はこうしたアプローチは世界の緊張を悪化させるだけだと指摘していると言う。
「米国と同盟国は用心深く、資源を賢く配分し、中国への接近を検討している国々との同盟やパートナーシップを促進しなければならない。しかし、西側諸国連合は、中国があちこちに基地を設置するというニュースや噂に過剰反応すべきではない」
「西側諸国や同盟国が、対抗手段として海外に新たな基地を設置しようと躍起になれば、中国が海軍基地を設置するのに正当な理由を提供することになる可能性がある」
米国がどのようなアプローチを取るにせよ、中共の次の基地が具体的にどこに建設されるかは依然として不明である。
個々の港湾プロジェクトにおける総投資額を比較し、地理的位置の戦略的価値、中共と地元エリートとの関係の強さ、地域の政治的安定性、世界舞台における中国との投票同盟を考慮することで、エイドデータの報告書は、中国の新たな軍事施設の最有力候補国として数か国を挙げた。
選択肢はインド太平洋から大西洋まで広がり、それぞれの地域には明確な利点と欠点がある。
(つづく)
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