中国が発表した2023年版の「標準地図」を巡り、周辺諸国から反発の声が上がっている。長年にわたり中国が一方的に自国領土と主張してきた南シナ海の大部分やインドのアルナーチャル・プラデーシュ州、そして他の係争領域が中国の「領海」や「領土」として示されていたためである。 予想外に中国とロシアの国境に位置する島すらも中国領土と明記されたこの地図には、たとえ最も近しい友好国からであっても、領土の横取りを企む中国の姿勢が如実に表れている。
2022年初頭、ロシアの一方的なウクライナ侵攻が発生する1か月弱前に、中国共産党中央委員会総書記を兼任する習近平主席とロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が「中露の友情に限界はない」とする共同声明を発表したが、 この「友情」には国境紛争が含まれるようである。
ニューズウィーク誌が報じたところでは、中国が新しい2023年標準地図を発表した数日後、黒瞎子島(大ウスリー島)全土を中国領土とする中国政府の主張をロシアは拒否した。 中露の国境を分けるウスリー川とアムール川という2本の河川の合流地点に位置する同島は中国で黒瞎子島(ヘイシャーズ島)と呼ばれ、「黒瞎子」は中国語東北官話でツキノワグマを意味する。 1世紀以上にわたる領土紛争を経て、2008年にロシアが同島の約半分を中国に分割譲渡した。 ロシア政府はまた、島に所在していた陸軍基地を放棄し、島の西側にある銀龍島(タラバーロフ島)全域を中国に返還した。 ニューズウィーク紙によると、中国はこの際、ロシアに対してこれ以上の領土を要求しないことに同意している。
当時、ロシアのプラウダ紙は「国境問題はすでに解決した」と報じた。
ニューズウィーク誌が伝えたところでは、中国が地図で示した黒瞎子島全土の領有権主張を受け、ロシア外務省は同国境紛争は10年以上も前に解決済みであるという声明を発表し、紛争再開に繋がるいかなる提案も却下するという意思を示した。
中国の新しい標準地図に対してロシアは沈黙を守ったが、影響を受けた他の諸国は従来通りの中国政府の広範な領土主張に対して一層警戒を高め、抗議を表明している。
フィリピンは2016年にハーグ常設仲裁裁判所が下した判決に言及し、南シナ海に対する中国の主張を無効と主張した。 フィリピン排他的経済水域で操業するフィリピン漁業船や軍事活動に対する中国の威嚇行為を暴露する取り組みに着手していた同国政府は、 同標準地図の発表を受け、中国に対して「責任を持って行動し、最終的かつ拘束力のある2016年の常設仲裁裁判所の判決および国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき義務を遵守する」ことを強く要請した。
一方、マレーシア外務省はサバ州とサラワク州の沖合に広がる排他的経済水域が地図上の中国領土と重複しているとして、同地図を否定した。 またベトナムは、中国の無効な境界線は国連海洋法条約によって決定された海域に対するベトナムの主権を侵害していると述べた。 インドネシアのナトゥナ諸島周辺の排他的経済水域が新しい地図上の境界線と重なっていることを受け、インドネシア外務省は「いかなる線引きも主張も国連海洋法条約に従ったものでなければならない」と述べている。
BBCニュースが報じたところでは、中国の領有権主張には根拠がないとして、インドも新しい地図について中国政府に苦情を申し立てた。 同地図上では、インド北東部に位置するアルナーチャル・プラデーシュ州の一部および中国が実効支配するカシミール地方のアクサイチン高原係争地域が中国領土とされている。
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