コロナ後遺症をほぼ100%の精度で診断できる可能性:研究結果

2023/10/22 更新: 2023/10/20

世界で少なくとも数千万人が苦しむ新型コロナ後遺症(ロングコビッド)。これまでは診断ツールがないことから治療法が確立できず、公衆衛生上の緊急事態となっていた。しかし、簡単な血液検査が後遺症で苦しむ人々に一筋の希望を与えるかもしれない。

科学誌『Nature』に発表された新しい研究により、コロナ後遺症患者における特徴的な血液バイオマーカーが明らかになった。機械学習アルゴリズムを利用し、96%の精度で後遺症患者とそうでない患者を識別することができたという。

この研究の主任研究者で、神経科学の博士号を持つマウントサイナイ医科大学のデイビッド・プトリーノ教授は「健康な対照群とコロナ後遺症患者との間に明確な違いを初めて示した研究だ」とエポックタイムズに語った。

AIで血液サンプルからコロナ後遺症を識別

コロナ後遺症には倦怠感、ブレインフォグ(頭の中が混雑し、思考や集中力が鈍くなる現象)、動悸 · 味覚・嗅覚の障害などの症状がある。しかし、これまでコロナ後遺症に関する臨床や研究が進んでいなかったため、適切な診断が受けられないのが現状だった。

プトリーノ氏の研究チームは2021年1月~2022年6月にかけて、マウントサイナイ病院やイェール大学医学大学院などから集まった約270人の患者を分析した。

研究チームは新型コロナに感染したことのない個人、コロナから完治した患者、感染後4か月以上後遺症が続く患者の3群を設けた。

研究チームはすべての患者に、症状、病歴、健康関連QOLに関するアンケートに回答してもらい、バイオマーカーの違いを特定するために血液を採取した。

その後、機械学習アルゴリズムが適用され、後遺症を正確に識別できる血液バイオマーカーを判別した。

アルゴリズムは96%の精度で後遺症患者とそうでない患者を識別し、後遺症患者の血液からユニークな特徴を検出した。最も顕著な違いとしては、免疫細胞の異常な活動、エプスタイン・バーなどのヘルペスウイルスの再活性化、コルチゾールレベルの低下が見られた。

ノースウェル・スタテンアイランド大学病院のコロナ後遺症リカバリーセンターでディレクターを務めるトーマス・グット博士は「今回発見した血清学的マーカーは、コロナ後遺症か他の合併症かを確認する大きな一歩となる可能性が高い」と期待を示した。

コロナ後遺症? それとも別の病気?

英国、デンマーク、米国の研究者が最近医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に発表した分析では、コロナ後遺症の科学文献に重大な欠陥があることが判明した。これまでの研究は、定義が大まかであることや対照群が欠如していることにより有病率を過大評価しており、一般市民の不安や誤診を助長している可能性があるという。

「より良い症例定義と、より厳格な(コロナ後遺症の)基準が必要だ」と著者らは書いている。

今回の研究結果は、臨床医にコロナ後遺症を診断するための指針を与えるものだ。

前出のプトリーノ氏は、患者に対して幅広い検査を行うのではなく、特定の症状に焦点を当てることができると述べた。

「私たちは詳しいホルモン検査や免疫検査を行うことができる。この研究によって、医師は問題を見つけ出し、薬で治療ができるようになるのだ」

気のせいではない:コロナ後遺症は実在の病気である

この新しい研究は、コロナ後遺症と新型コロナそのものによる精神的苦痛とを区別する方法を提供するかもしれない。プトリーノ氏は、コロナ後遺症は身体的徴候のない機能障害ではないと強調した。

「我々は心身性の問題を見ているのではない。我々は、これが感染症に関連した複雑な慢性疾患であるという非常に明確な証拠を目の当たりにしており、この研究がそれを証明している」

2月に「Journal of Psychosomatic Research」誌に発表された研究では、コロナ後遺症における心理的メカニズムの役割を示唆する「実質的な」証拠が見つかっている。研究者らは、心理的苦痛が症状としてだけでなく、コロナ後遺症の危険因子としても確立していることを指摘し、個人の抵抗力が高いほど重症度が低いことと関連していると述べた。

今後の動きは?

コロナ後遺症を診断するための血液検査の最終的な設計は、機械学習ソフトウェアの使用とさらなる研究が必要になる可能性が高いとプトリーノ氏は言う。

この検査では、患者によって経験する症状が多様であるため、「イエス」か「ノー」かの直接的な答えは得られないだろうとプトリーノ氏は指摘する。その代わりに、この検査では様々な要因や症状を分析し、これらの知見を総合してコロナ後遺症症例を正確に特定するためのアプローチを構築することになるとした。

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。
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