まるで「檻のなかの動物」 中国各地の小中学校で進む、管理主義的な教育

2023/11/07 更新: 2023/11/07

最近の中国では、小中学校などで「授業間の休み時間が短すぎる」「生徒がトイレに行く時間もない」といった話題がネットを騒がせている。

通常、授業の合間の休み時間は「10分間」だが、実際そのようになっていない、というのだ。

「子供の健全な育成」ができない学校

きっかけは、山西省の「ある教師」による投稿動画であった。

この教師は「授業間の休み時間が、ほとんどない」と告発した。そこには「休み時間は10分間しかないのに、授業は2分早く始まり、2分過ぎて終わる。トイレに行きたい生徒は、走るしかない」という生徒のコメントも添えられており、学校へ通う子供をもつ多くの保護者の共感を呼んだ。

これをきっかけに、関連トピックスには、あまりに子供を管理する学校に対して「親たちの怒り」が殺到した。以下に、その一部を紹介する。

「前々から学校に文句を言いたかった。授業が終わっても、子供をグラウンドで遊ばせないなんて、ひどいじゃないか。せいぜい廊下を歩くくらいしか運動ができない。それでは、日光にあたらず、近眼にもなる。どうすればいいのか」

「うちの子なんか、休み時間に校内を走り回った証拠写真を撮られた。SNSの保護者用チャットグループにアップされて、私が学校から怒られた」

「うちの娘は、検査で尿酸値が高いことがわかり、水分を多く摂りなさいと医者にいわれている。しかし、多く水を飲むとトイレに行きたくなる。トイレに行っている時間なんてない、と娘はとても悩んでいる」

「姪っ子の話によると、授業の合間の休み時間は、みんな教室で宿題をやるしかない。50人もいる教室のなかは、体を動かして遊ぶスペースもないし、そもそも遊んではいけない規則だ。教室から出て遊びに行ったら、罰せられて、保護者が呼ばれるのだという」

あまりに管理主義的で、生徒が窒息しそうな環境である。「子供の健全な育成」ができないならば、それを学校と呼べるのだろうか。知識を得る学習も大切だが、子供の健康維持や精神的な発達まで阻害されてはならないはずだ。

「檻の中の動物」のような扱い

浙江省杭州市に住む陳さんによると、息子が通う小学校では「休み時間は、別の階へ行ってはならない、大声で話したり、走ったりジャンプしたりすることも禁止、などの規定がある」という。

さらに、休み時間に廊下で走る生徒がいないかを監視する先生もいるらしい。運悪くクラスの子が「捕まったら」クラス全員が減点され、みんな担任から怒られるというのだ。

まさに、檻(おり)の中に閉じ込められる動物のような扱いである。こうした中国の学校の実態に「子供たちは可哀そうすぎる」といったコメントが多数寄せられた。

もはやニュースとはいえないほど周知のことだが、中国各地の学校の校舎に「落下防止用」の金網や鉄格子が設置されている例は少なくない。

その目的は、生徒の安全を確保するため、という。しかし、ネット上では、これは明らかに「生徒の自殺防止用」として認識されている。

このような中国の学校の実態について、動画の画面越しに見ているだけでも、窒息しそうになるほどの苦しさを覚える。そんな「檻の中」で日々を暮らすのが、中国の子供たちなのだ。

この子たちに、どれほど明るい未来があるのだろうか。過酷な受験競争を経て、著名な大学を卒業しても「いきなり失業」という過酷な運命が待っているのが、今の中国である。

 

(どこかの中学校であろうか。外側の渡り廊下には「落下防止用」の鉄格子が設置されている。おそらく、農村部の学校ではなく、経済状態の比較的よい家庭の子女が通う、全寮制学校ではないかと思われる)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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