最近の研究により、プラスチックの原料の化学物質ビスフェノールA(BPA)が発達障害である自閉症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)に関与している可能性があることが明らかになった。
オープンアクセスで査読済みの論文を掲載する雑誌「PLOS ONE」によると、日常的に使用されるプラスチック製品に含まれるBPAを体内で解毒する能力が、これらの疾患を持つ子供たちでは低下していた。「PLOS ONE」はこうした解毒作用の低下が自閉症やADHDに繋がっている可能性が高いと結論づけた。
BPAを完全に避けることは不可能に近いが、最近の研究では、いくつかの方法で自然な解毒プロセスを最大化できることを示唆している。
BPA暴露と健康被害
BPAは1950年代からプラスチックや一般消費財の製造に広く使用されてきた。1993年、科学者たちはポリカーボネート製のフラスコからBPAが溶出し、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用を示すことを発見した。また、BPAは乳がん細胞の増殖を促進する作用が非常に強いことも判明した。
さらなる研究により、BPAが神経系、生殖系、心臓血管系、内分泌系、免疫系に有害な影響を及ぼすことも明らかになった。
「PLOS ONE」に掲載された研究では、自閉症の子供、ADHDの子供、対照被験者において、グルクロン酸化と呼ばれるBPA解毒プロセスの効率を調べた。その結果、解毒作用は自閉症群で11%、ADHD群で17%低下していたことがわかったという。
著者らは「解毒作用が低下したことで、長くBPAに晒されることになり、これが両疾患に繋がる可能性がある」と指摘した。
BPAに対抗
自然療法の博士号を持つ機能性医学の医師、カーラ・フィッツジェラルド氏によれば、BPAが胎児の発育に及ぼす有害な影響は、特に懸念すべきものだという。
同氏はエピジェネティクスの分野の先駆的研究者であるジャニーン・ラサール氏らの研究を引用し、十分な葉酸摂取がBPAに関連した自閉症を予防し、大豆やブロッコリーなどに含まれるフラボノイドであるゲニステインと、メチルドナー栄養素がBPAのダメージを改善すると指摘した。葉酸は、濃い緑色の葉野菜や豆類、卵などに含まれている。
「可能な限り暴露を避けることも重要だが、悪影響に対抗する手段があることを心に留めておく必要もある」と、フィッツジェラルド氏はエポックタイムズに語った。
BPAを軽減する方法
学術誌「Molecules」に掲載された2022年の論文には、BPAを軽減する自然療法がまとめられている。アジア原産の伝統的な漢方薬、ピスタシア・インテゲリマは、ネズミを用いた研究で、BPAの心毒性を軽減させることが判明した。
抗酸化物質であるコエンザイムQ10(CoQ10)は、BPAに関連したDNA損傷と胚の欠損を減少させることにより、女性の生殖能力を回復させることが、2020年の「Genetics」誌に発表された研究で示された。
また、2011年に「Journal of Environmental and Public Health」誌に掲載された研究では、汗のBPA濃度は血液や尿よりも高いとし、サウナや運動で汗をかくことがBPAの排出に役立つ可能性があるとしている。
BPA暴露を制限するには
フィッツジェラルド氏は、BPAを避けるために、缶詰食品を控えたり、電子レンジにプラスチックを入れないこと、レシートを扱った後は手を洗うことなどを勧めている。2014年の研究では、レシートを2時間触れると尿中のBPA濃度が上昇することがわかった。
同じ研究は、広く使用されている手指消毒剤やスキンケア製品には、皮膚への浸透を高める化合物が含まれていることがあると指摘。これが皮膚からのBPAの吸収を最大100倍まで増幅させる可能性があると述べた。
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