中国がデフレに直面し「双11(11月11日のショッピングフェスティバル)」が寂しく閉幕した。このフェスティバルは消費者の信頼を測る重要なバロメーターとされているが、専門家たちは、中国国民の将来に対する見通しが非常に悲観的であると指摘している。
「現在も将来もお金に不安」
今年の「双11」では、ECサイトがプロモーションを展開し、10月下旬から商品の値下げ競争が始まった。それにもかかわらず、フェスティバルの終わりは静かなものだった。
2019年には「双11」に関連する話題がSNSで平均約8時間トレンド入りしていたが、今年は平均3時間未満だった。
SNSのトレンドには「双11があっけなく終わった」「双11の影響力がますます減っている」といった議論が上がった。最も話題になったのは「『双11』はもはや売れないのか」というテーマだった。
大手ECサイト企業は「注文量、ユーザー数、取引額などが目覚ましく成長し、新たな記録を達成した」とアピールしたが、商品の総取引額や成長率の詳細は公表していない。
米国の戦略顧問会社ベイン・アンド・カンパニーの報告によると、中国の消費者は「双11」の間、主にティッシュペーパー、インスタント麺、ペットフードなどを購入し、家電や大型家具などの非必需品の購入は減少した。
「生活必需品のみを購入」と述べる上海のスキンケア美容業に従事する王潔氏(仮名)は、コロナ前と比べてスキンケア美容サービスの顧客数が減少し、ビジネスに影響を受けていると言う。彼女は現在、人々が不要な支出をできるだけ抑え、ショッピングフェスティバルの割引を利用して生活必需品を多く購入していると指摘した。
中国問題の専門家、王赫氏は大紀元とのインタビューで、今年の「双11」が2つの重要な点を示していると指摘した。
王赫氏は「まず第一に、購買への刺激が一般的に広がっており、その性質が変化していることだ」と述べた。
「多くの人は冬を乗り越えるための準備をしている。つまり、たとえお金を持っていても、使わずに貯めているわけだ。これが中国全体の消費低迷の原因になっている」とし、「中国人の将来に対する見通しは非常に悲観的だ」と述べた。
また、台湾のマクロ経済学者である呉嘉隆氏も「双11」の消費意欲が予想を下回ったことは、中国経済の内需不足を示していると指摘した。
「失業問題が根本的に解決されず、不動産危機も続いているため、中国の内需はさらに減少するだろう」と述べている。
専門家が警告「中国経済が失業型デフレに突入」
内需の不足に加え、不動産危機と消費者信頼の低下が重なり、中国経済は下半期も負の成長を続けている。最新のデータによれば、中国の10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.2%減少し、再びデフレの兆しを見せた。生産者物価指数(PPI)も13か月連続の下落を記録している。
呉嘉隆氏はこれらの経済指標の下落について「失業率の上昇が収入と購買力を削減し、消費者信頼感を低下させたため」だとしている。
「実質的に、中国経済が直面しているのは失業型デフレだ」と呉氏は指摘。
「企業が人員を削減して個人が失業すると、消費が減り、結果として企業の収入は減少し、さらに人員削減を余儀なくされる。この悪循環は、場合によっては破産に至ることもある」
また、経済の悪化が価格の下落を招き、消費者がさらなる価格の下落を期待して購入を待つ傾向も一因であると、呉氏は語っている。
同氏は、失業状況と消費者信頼感指数の持続的な悪化に加え、長期にわたる不動産危機が状況をさらに困難にしていると指摘し、「経済成長の原動力は失われた」と結論付けている。
中国共産党官僚、経済成長の主要エンジンの機能不全を認める
2022年11月9日、中国国務院発展研究センターの元副主任である劉世錦氏は、北京金融街フォーラムの年次会議において、インフラ、不動産、輸出貿易の3つの従来の成長エンジンが停滞していることを公式に認めた。劉氏は「古い手法では効果が薄れている」と指摘し、中国経済を支える新たな成長ポテンシャルの発掘が重要であると強調した。
劉氏が提唱する潜在的な成長要因の一つは、中低所得層と中高所得層の消費ニーズの格差を縮小し、中低所得層の消費水準を中高所得層に近づけることだ。
経済を刺激し消費者に支出を促すため、中国の多くの銀行は最近、定期預金の利率を引き下げている。利率の引き下げ幅は10~40ベーシスポイント(bp)に及ぶ。
先行して、工商銀行、農業銀行、中国銀行、建設銀行、交通銀行の五大国有銀行と招商銀行が9月に預金利率を下げ、その後、興業銀行、光大銀行、民生銀行、平安銀行、浙商銀行、渤海銀行などの株式銀行が続いた。10月下旬には、多くの農商銀行や村鎮銀行も利率の引き下げに乗り出した。
呉嘉隆氏は「中国共産党の内需拡大策は効果がない」「もし効果があれば、経済の深刻な減速やこのような対策には至らないだろう」と述べている。
王赫氏は「過去3年間、パンデミックによる影響で中国経済は大きなダメージを受け、一般市民の収入はほぼ底をついている一方で、富裕層は資産を消費に回さず銀行に預け入れており、貧富の差は一層拡大している」と述べた。
「現状では、大多数の人は消費する余裕がなく、富裕層の消費も限られている」
王氏は「中国の多くの市民が消費を控え、出産率も低下し、何も行動を起こさない『躺平(寝そべり)』の状態に陥っており、中国社会全体が生きているが、楽しみを見出せない状況にある」と指摘した。
同氏は「社会の変動はいつでも爆発する可能性があり、現在は特に重要な時期にある」と警鐘を鳴らしている。
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