中国における金融危機も第二波が始まり、不動産企業やシャドーバンキング(影の銀行、通常の銀行融資を受けられない相手に、高金利で貸し付けたり、投資したりする)の破綻に続き、銀行の危機も深刻化している。中国共産党(中共)は金融業界の取り締まりを強化し、多くの金融高官が失脚した。
最近、天津にある華夏銀行の支店長がビルから転落して死亡したことが警察により確認された。専門家は、中央政府が地方政府への財政支援を行わない場合、地方政府は自らの財源を探す必要があり、清末時代の地方割拠(権力者のそれぞれが自分の領地を根拠地として勢力を張ること)の状況が再現される恐れがあるとしている。
シャドーバンキングの大問題
「大紀元時報」の総編集長、郭君氏は、新唐人テレビの番組『菁英論壇』で、中国の華夏銀行の不良債権率が特に高いと述べた。表面上の赤字だけでも400億元(約8千億円)以上に上り、隠れた赤字はさらに多い。中国共産党は金融業界に対する大規模な監査と取り締まりを行っており、最近の報道によると、多くの金融高官が失脚している。
金融業界の腐敗は孤立したケースではなく、資金管理の性質上、上下の連携や全体の官僚システムなしには起こりえない。天津の華夏銀行支店長の自殺は、自身の責任を逃れるため、あるいは「自殺させられた」可能性もある。背後に多くの利害関係が絡んでいるからだ。
現在、金融界の清掃と大量逮捕が進行中で、彼の死によって資金の流れの追及が一部断ち切られ、これ以上の捜査が進まない可能性がある。
郭君氏は、シャドーバンキングが現在引き起こしている問題は以前よりも大きくなる可能性があり、中共の政治にもより大きな影響を与える可能性があると述べている。シャドーバンキングとは、実際には非銀行金融機関のことで、様々な資産運用会社、信託会社、保険会社などが含まれている。
現在、中国大陸のシャドーバンキングの金融資産規模は非常に大きく、銀行資産の約70〜80%に相当するが、実際の状況は誰にも把握されておらず、中央政府や地方政府も掌握していない。
問題は、銀行には厳格な監督プロセスと法律が存在し、例えば中央銀行が直接預金保証金を規定し、銀行の預金利息を指導し、銀行業のリスク管理も比較的成熟しているが、シャドーバンキングにはこれほどの監視がなく、準備金もない。また、信託資産への投資リターンに関する規定も存在しない。
シャドーバンキングの資金の大部分は、不動産やいわゆる資本運用分野に投じられているが、不動産価格はここ2年で下落し、取引が萎縮しており、投資した多くの資金が回収できなくなっている。
多くの信託会社の資産運用は実際には地方政府のプロジェクトに投資されたり、土地開発に投じられたりしているが、現在地方政府も不動産会社も資金不足で、これらの投資が損失に終わる可能性は非常に高い。
金融商品の運用も同様で、中国のA株市場を見ればわかるように、最近では他国の株式市場が上昇する中で、中国の株式市場のみが下落しており、中国経済の下降を反映している。経済が崩壊し、企業が倒産すれば、企業の株の購入投資も同様に失敗に終わるであろう。
中国の金融関係者は新唐人に対して、中共の上層部が銀行を介さないP2P融資サービスプラットフォームを意図的に育成しており、メディアや準公式機関を利用して宣伝し、銀行が不良債権をP2P(不特定多数の端末、スマホなどがサーバを介さずに、端末同士で直接データファイルを共有することができる通信)プラットフォームに売却していたことを明かしている。登録されたP2Pネット融資は最大で約5千社に達していた。
政府の黙認の下、これらのP2Pプラットフォームが不良資産をパッケージングして一つの投資商品としてまとめて資金調達を行い、事情を知らない投資家に売却していた。そして、その融資金は最終的に銀行に流れた。現在、金融危機は実質的に投資家に転嫁されている。結果、P2Pの問題で多くの人が大損している。
問題の核心は、シャドーバンキングの資金が主に中国の裕福な層、中産階級や富豪層からくることである。シャドーバンキングの経営者、企業の上層部、投資家は、多くが中共の「紅二代」や「官僚の二世代」であるため、政治への影響と衝撃は大きい。
現在、中共はすべての責任を「ネット貸付プラットフォームの大物」に帰している。最近2か月間に、中国で複数のネット金融大事件の判決が下された。奇跡的に台頭したいくつかのネット貸付の富豪が、無期懲役に処された。これには、「ネット貸付の教父」と呼ばれる周世平、元香港衛星TVの社長、林文峰、「紅色系列」の何源、そして数千億を吸収した「小牛資本」の彭鉄も含まれる。
シャドーバンキングの大問題は、これらの人々の大問題と同じである。資金がなくなると、必死になる人もいる。そのため、今後1〜2年の間に、中国で政治的な突発事件が発生する可能性があり、誰もが驚くような変化が起こるかもしれない。
清末時代の地方割拠が再び?
台湾のマクロ経済学者、呉嘉隆氏は『菁英論壇』で、米国の民間格付け会社ムーディーズが最近、中国の信用格付けを下げ、香港やマカオも含め、8つの金融機関の格付けも下げたと述べた。
ムーディーズにとって最も重要なことの一つは、この業界で自己の信用を築くことであり、将来、中国経済に更なる問題がある場合、早期に顧客に警告信号を発しないと、職務を果たせない。ムーディーズは現在、中共政府に対して厳しい態度を示し、今回の行動はその明確な決意の信号である。
ムーディーズの信用評価を参照にする投資家や大口投資家、さまざまな欧米のファンドなどは、すべて調整を開始することとなり、これにより、中国からの資金引き上げが増加するだろう。したがって、ムーディーズによる今回の中国への評価は、重要な節目を示している。これまで西洋の資本は絶え間なく中国に流入していたが、今後は西洋の資本が絶え間なく中国から引き上げられることになる。
資金が中国に流入しなくなるとすれば、新たな資金は中国への投資を躊躇するだろう。これは悪循環を生み出す。現在、単に1つか2つの銀行が問題なわけではなく、西側の金融全体が中国から撤退している。
中国の金融環境の悪化は、外国からの投資に依存している問題と関連している。外国からの投資には2つの形態がある。一つは直接投資で、工場の設立や店の開店などである。もう一つは金融投資で、中国の投資商品の購入だ。
現在、外資の撤退は明らかだ。直接投資の製造業やサービス業だけでなく、金融資本も中国から撤退している。主に香港を経由し、次に上海となっている。外資によるこれらの金融機関の投資を観察しているが、全体的な資金の量は減少している。つまり、問題は1箇所ではなく、様々な箇所に発生している。 華夏銀行のケースから、全体的な金融環境の縮小が見て取れる。もちろん、重要な理由の1つは西側の金融資本が中国から撤退していることである。
過去、中国経済が上向きの時には、ポンジスキームのような状況が持続できていた。つまり後から来る資金で前の投資家への報酬を払うということである。しかし、全体的な資金の量が不足していれば、この手のトリックは成り立たなくなる。
もし資金が中国を離れると、最初に問題になるのは不動産市場である。なぜなら、不動産は金融領域と実体経済をつなぐ中間地帯であり、過剰な資金が不動産市場に流れ込んでいるからである。あちこちでの購入が行われ、資金の停泊地となっている。そして、実体経済では建築材料から工事関連、賃貸仲介、家電や家具に至るまで、大きな一連の動きがある。不動産市場は、金融と実体経済の中間に位置している。資金の流れが退潮し始めると、問題が浮き彫りになる。
そして不動産危機が起こると、地方政府の財政収入が枯渇する。補填策が見つからず、地方政府は中央政府に支援を求めるが、中央政府にも支援する能力がない。したがって、中国の金融危機の根本原因は財政問題にあると言える。今まで20年間、不動産に依存して、財政問題が隠されてきたが、今回の不動産危機で、再び財政問題に直面している。地方政府は、高速道路を通過するトラックに超過重量で罰金を科すなど、様々な名目で資金を徴収し、間接的に税を増やし、資金をかき集めている。このような状況が持続不可能になると、最終的には各地方政府が各々の方法で行動を始め、新時代の地方割拠へと進む可能性がある。
これは清朝末期の状況に似ている。各地方が自らの公務員や維持部隊の費用を賄うために、資金源を探し、もし地方政府が最終的に自力で資金を調達し、中央政府に頼らなくなれば、中央政府が弱体化し地方が強くなる局面になり、諸侯経済(地方政府の地元企業保護)の割拠が実現するかもしれない。後には財政問題がある。習近平は、今後「紅二代」に財産の一部を提出させるようだ。大企業や外資からの徴収が不可能になると、紅二代に目をつけることになる。これは、財政問題が背後にあることを示している。
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