幼稚園児に「ワクチン治験」 祖父母の知識不足につけこむ手口で=中国 陝西

2023/12/21 更新: 2023/12/21

2023年10月、陝西省渭南市臨渭区の疾病対策予防センタ−が、大勢の「留守児童」の祖父母の知識不足につけ込んで騙し、幼稚園児をワクチン治験に参加させていたことがわかった。

中国では、両親の出稼ぎによって農村に取り残された「留守児童」と呼ばれる子供が深刻な社会問題になっている。6千万人以上ともいわれる「留守児童」は、祖父母や親戚と一緒に暮らしている。

中国メディアの報道によると、陝西省渭南市臨渭区の農村部の複数の幼稚園が「ワクチン接種」の名目で、子供たちを「ボランティア」として髄膜炎菌ワクチンの臨床試験治験)に参加させていた。

中国の農村部は広いので、ワクチン接種や検査のたびに1人につき150元(約3千円)の交通費が支給されたという。

これに先立ち、ネット上には「新天地(陝西省渭南市臨渭区)」という名の幼稚園が、少なくとも12人の園児とその保護者を騙してこのワクチン治験に参加させたことを訴える動画が投稿されていた。

園児12人のうち、11人は留守児童で、普段は祖父母が面倒を見ていた。なかには「ワクチンを接種しないと幼稚園へ行けなくなる」と勘違いしていた児童の祖父もいたという。

日頃から先生の話を「絶対的命令」と捉える児童の家族は、指示された通り、子供を指定場所である町の衛生院(診療所)へ連れて行った。そこで区の疾病対策予防センター行きの送迎車両に乗って接種会場へ行き、ワクチン接種を受けたという。

臨渭区の疾病対策予防センターにつくと、職員はワクチン接種のメリットを紹介し始めた。そのなかで職員は「これはすでに市販されているワクチンで、今回は年齢を拡大しての接種になる」と強調していた。

なかには、不審に思い「うちの子を治験に使うのか?」と質問した保護者もいた。それに対して職員は「いや、治験ではない」と明確に答えていたという。

今回、子供たちを治験に使ったワクチン製造企業「康希諾生物研究公司」の髄膜炎菌ワクチン(ACYW135群腦膜炎球菌多糖結合疫苗)は、すでに市販されているワクチンであるが、本来の適用年齢は3か月~3歳であった。

今回行われた治験は、その適用年齢を4~6歳に拡大するためのものであったという。

要するに、現地の疾病対策予防センターは「治験研究である」ことの事実を意図的に隠し、さらに第III相臨床試験段階にあるワクチンを「通常の無料ワクチン」と宣伝したのである。

そして、留守児童と暮らす祖父母など高齢者の知識不足に付け込んで、目の前にある同意書に署名するよう誘導した。これにより、幼児は「ボランティア」として臨床試験に参加したことになる。

中国メディアも、この件について取り上げた。事件は世論の耳目を集めたが、現地の衛生当局はこの件に関して明確な回答をしていない。

現在、事件関連の記事や動画は、中国のネット上から完全に消えている。

 

「ワクチン接種」に関する説明文書(中国のネットより)

 

ワクチン接種同意書に署名した児童の祖母。(中国のネットより)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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