先日発覚したパーティー券問題は自民党を大きく揺るがしている。長年続いた「悪しき習慣」は日本政治の脆弱性となり、外国勢力に付け入る隙を与えている。
「満つれば欠くるは世のならい」。前衆議院議員の長尾敬氏は、旧態依然とした政治の現場をこう斬り込んだ。「国難」においては「無派閥政治」に移行すべきだと語った。
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――元自民党議員として、今回のパーティー券問題についてどのように見ているか。
本来であれば、パーティー券のキックバック自体は犯罪ではない。今回問題となったのは、議員側、派閥側が政治資金の収支報告書に記載していなかったことだ。法人や個人は法人税や所得税を支払う義務を負っているが、政治団体の場合には、政治資金に使うということを明確にすることに前提に、事実上非課税となっている。そのため、今回の問題は実質犯というよりは形式犯だが、記載しなかったことの罪は重い。
もちろん、派閥に所属していなければ総裁にはなれないなど、日本政治・自民党の悪しき慣習もいまだ続いている。さらに、外国人は寄付をすることはできないが、パーティー券を購入できるという抜け道が存在する。
――やはり外国人でもパーティー券を購入できることが気がかりだ。中国共産党やロシアなどはスパイ工作を行っている。
こうした懸念は大いにあると思う。私は清和政策研究会の所属議員だったため、他の派閥のパーティーの様子を体で感じたことはないが、やはり見渡すと、中国共産党の関係者や、その関係する団体または企業からの人が多数参加する派閥のパーティーがあるようだ。
――報道を見ると、パーティー券にもノルマがあるとのこと。大口なら、相手に頭が上がらなくなるのではないか。
それはあると思う。頭が上がらないというより、やはりありがたい対象になる。1枚2万円のパーティー券を買った人も、100万円分買った人も、綺麗事を言えば公平に扱わなければならないが、やはり金額によって影響も変わってくる。この点においては、日本人であれ外国人であれ、問題の本質は同じだと思う。
――他の政党にこのような問題はあるのか。
あると思う。自民党には自民党の慣習があるように、少なくとも、私が10年所属した旧民主党など、それぞれの政党に慣習の違いこそあるものの、色々と心当たりはある。
――政治家にパーティー券を販売させるより、議員報酬を引き上げることで、政治家には政策に専念させるべきではないかとの声もある。
国会改革の中でそのような議論は常にあるが、実現していない。国会議員は歳費として年間2,000万円に加え、文書交通費として毎月100万円、立法事務費として62万円などが収入となる。毎年の政党助成金が1,200万円あるが、政党によって様々だ。
一番お金がかかるのは秘書の給料と事務所代だ。政策担当秘書と公設第一、第二秘書は公費で賄われるが、私の場合でも、最大で秘書が9人いたことがある。そうすると、6人分は私設秘書ということになる。それぞれに家庭があり、給料と社会保険料も議員が出している。社員が10人ほどの中小企業並みの固定費が普通にかかる。しかし、政治家に売上はないため、全てを寄付とパーティー券と政党助成金で賄っている。
――かつては55年体制で自民党一強のなか、党内の各派閥が互いに牽制し合っていた。しかし、「国難」とも言われる今日この頃において、変革が求められているのではないだろうか。
確かに当時の派閥政治は良く機能していたのかもしれない。しかし物事は完成すると、あとは堕落していく一方だ。「満つれば欠くるは世のならい」。堕落したところで新しい形態のものが生まれればよかったが、それが生まれぬ形で、良い慣習も悪い慣習も全部今日に至ってしまった。
今回のパーティー券問題をきっかけに、派閥政治のあり方を見直すべきではないだろうか。具体的には、今までは派閥に所属していなければ総理になれなったが、これからは、派閥に所属していない人間こそが総理や総裁になれるようにすべきだ。
例えば、私が支持する高市早苗経済安保相や青山繁晴参院議員は派閥に所属していないため、総理や総裁に就任できないという声が今まで強かったが、これからは逆に、派閥に一切所属していないからこそ、総理や総裁に相応しい時代が来るのではないか。
捜査はまだ続いている。全容が解明されたら政治資金規制法の運用のあり方に限らず、いわゆる派閥政治というものの在り方がこれから厳しい批判を受けながら議論されていくのではないだろうか。派閥政治から無派閥政治に移行する、絶好の機会であると考える。
(了)
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