中国の若者が「躺平(タンピン、寝そべり)」によって、不条理な世相に反抗の姿勢を示すことが知られて、もはや久しい。
将来ある若者にとって、中国社会の最大の不条理とは「いくら努力しても、全く報われないじゃないか」という、人生への絶望感に他ならない。
また、彼らの「躺平」に加えて、「四不青年」というのもある。
「四不青年」とは、「家(マンション)は買わない。恋愛しない。結婚しない。子供はもたない」など、従来の中国人の価値観のなかで必須条件とされながらも、莫大な費用がかかる「人生の大事」を、あえてそぎ落とすという、新たな人生観に基づいている。
しかし若者である以上、自然な感情として、愛し合う二人が結婚に至ることも、もちろんある。その結婚にも、昨今は、新しい風潮がみられるようだ。
このほど、中国のネット上では、若者の間でブームになっているという「三無婚礼」の話題がとても熱い。
「三無婚礼」とは、結婚の際に「花嫁を迎える車列なし」「花嫁を迎える儀式なし」「花嫁・花婿の介添人なし」というミニマル(最小限)な結婚式のことを指す。
実際のところ、上記の三つ(三無)に加えて「司会者なし」「涙を流させる演出もなし」「披露宴もなし」。ひいては「招待客すら呼ばない」などもある。
かつてのように、派手さと散財ぶりを競った「大演出」を好む中国人の婚礼にしてみれば、なんとシンプルな、まさにミニマル(最小限)に絞り込んだイベントであることか。
中国メディア「極目新聞」1月13日付によると、「昨年、山東省のカップルが花嫁を迎える儀式なし、司会者なし、涙を流させる演出なしのミニマルな結婚式を挙げたところ、予想外の好評を得た」という。
一生に1度(通常は)の結婚式を、華やかに演出して、多くの人から祝福をもらいたいというのは、結婚を迎えるカップルとその家族にとって(程度の差はあるものの)世界共通の心理だろう。
それなのに、なぜこのような「三無婚礼」が今の中国で流行るのか。ネット民によれば「ラクだの、個性的だの、って言うけど、結局のところ、お金がないというのが本音だよ」という。
中国経済が悪化の一途をたどるなか、将来に希望が持てない若者が「躺平」や「四不青年」になることは、やむを得ない結果でもある。
しかし、これは単なる若者の無気力現象ではなく、そうせざるを得ない社会の現状があるからだ。つまり中国の若者は、伝統的な価値観(富裕や立身出世主義)を捨てることによって、自己防衛するしかないのである。
中国の若者が選択する「三無婚礼」もまた、単なるお金の節約方法ではなく、今の時代に合わせた「若者たちの活路」であると言えるだろう。
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