Nathan Layne Tim Reid James Oliphant
[ナシュア(米ニューハンプシャー州) 16日 ロイター] – トランプ前米大統領は、11月5日の大統領選に向けた共和党候補指名争いの初戦、アイオワ州党員集会で圧勝した。共和党の有権者から幅広い支持を集め、陣営のデータに基づく洗練された選挙戦略が功を奏したことを物語っている。
次の戦いの場となるのは23日のニューハンプシャー州予備選で、同州はアイオワほど保守的ではない。トランプ氏としては、ここでも同じような成功を収められるかどうかが試されそうだ。
共和党候補指名争いで引き続き独走しているとはいえ、トランプ氏に求められるのは、ニューハンプシャーでも異論を差しはさめないほどの勝利を手に入れ、他候補の「息の根を止める」ことだ。そうすれば、通常の大統領選の展開よりもずっと早く、民主党候補指名が確実視される現職のバイデン大統領との対決に目を向けられる。
アイオワでトランプ氏は、デモイン郊外を含む99郡のうち98郡で勝つという盤石ぶりを見せた。ただニューハンプシャーは、アイオワよりも福音派キリスト教信者(エバンジェリスト)の数は少なく、無党派層が多い。世論調査を見ると、トランプ氏の支持率はなおトップだが、穏健派に人気があるニッキー・ヘイリー元国連大使が最近になって追い上げて差を縮めてきている。
重要な点は、ニューハンプシャーでは共和党員や民主党員よりも無党派の有権者が多く、予備選の投票資格があることだ。
ニューハンプシャーで長年共和党ストラテジストを務めるトム・ラス氏は「トランプ氏は共和党内では最強で、同氏にとっては党派性が薄くなるほど、さまざまな問題が生じる」と指摘した。
51歳のヘイリー氏はニューハンプシャーで、77歳のトランプ氏と81歳のバイデン氏の高齢問題に的を絞ったテレビ広告を全面展開。地元のクリス・スヌヌ知事からの支持も取り付け、スヌヌ氏は来週の選挙イベントでヘイリー氏と合流する予定だ。
アイオワでトランプ氏に大きく離された3位にとどまったヘイリー氏だが、ニューハンプシャーでは善戦を期待できる好材料もある。各種世論調査によると、穏健派層の大半はヘイリー氏が取り込んでいる。
<静かな決意>
トランプ氏は16日、ニューハンプシャーでの最後の選挙戦を開始。同州アトキンソンで開いたイベントでは、アイオワと同じようにボランティアが参加者のデータを収集し、これらに基づいて今後電話や手紙を通じた投票のお願いが行われる。
ただ、トランプ氏陣営が選挙戦の要として導入した各地区の責任者「コーカス・キャプテン」2000人余りによる「ローラー作戦」を実施できたアイオワとは、異なる部分もある。コーカス・キャプテンの多くは神父で、信者との結びつきで自然と地域のリーダー的存在となり、大量の票獲得につなげることができた。
コーカス・キャプテンの一人で、福音派キリスト教徒のジョエル・テニー氏は、担当のジョンソン郡で陣営から渡された有権者リストを見ながら電話した件数は1000回以上になるだろうと明かした。「私の仕事は人々を党員集会に行くよう呼びかけ、集会ではトランプ氏に投票するよう説得することで、まさにそれを実行した」という。
一方ニューハンプシャーでは、トランプ氏陣営は集会の場でテニー氏のような人物を介して票を確保することはできず、あくまで有権者個々人が投票先を判断することになる。
それでもニューハンプシャーのベルクナップ郡のグレッグ・ヒュー共和党委員長は、同州のトランプ氏支持者の間には「静かな決意」が漂っていると語り、勝利に自信を示した。
<正念場のヘイリー氏>
世論調査サイト538によると、ニューハンプシャーの予備選でトランプ氏に投票するつもりだと答えたのは43%で、ヘイリー氏支持は30%、フロリダ州のロン・デサンティス知事の支持は6%だった。
ここでヘイリー氏がトランプ氏の勢いにブレーキをかける上で最大の援軍となるのは、共和党穏健派と無党派の有権者であるのは間違いない。ヘイリー氏がトランプ氏と僅差の2位になるか、トランプ氏に勝てれば、トランプ氏の党候補指名は絶対確実という「神話」を崩すことができる。
トランプ氏陣営の見立てでは、同氏とヘイリー氏の一騎打ちなら得票率52%対44%で勝てるものの、デサンティス氏の存在によって情勢が複雑になるかもしれないという。
ニューハンプシャーのベテラン共和党ストラテジスト、ジム・メリル氏は「ヘイリー氏はニューハンプシャーで必ずしも勝たなくても良いが、この予備選が終わった時点で指名争いは二人の戦いだという話になるほどの強さは発揮しなければならない」と述べた。
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