テスラが1月に韓国で販売したEVはわずか1台だった。安全性への懸念、価格、不十分な充電インフラ、そして「中国製」に対する韓国消費者の悪い印象が原因だとされている。
韓国自動車輸入販売協会(KAIDA)のデータによると、1月にテスラが韓国で販売したSUV(スポーツ用多目的車)「モデルY」はわずか1台で、2022年7月以来最悪の月間販売台数を記録した。 これは昨年12月の1022台と比べて大幅に減少した。
販売台数が少ない理由のひとつは、韓国政府が2月6日に発表した2024年のEV補助金制度を待っている消費者もいるだろう。
テスラの韓国広報担当者はブルームバーグに寄せた声明の中で、消費者は補助金が確定するまでEVの購入を遅らせていると述べた。
韓国では利上げとインフレが消費者の購買意欲を抑制している他、EVの需要自体がバッテリー発火の懸念や急速充電スタンドの不足によって鈍化している。ソウルを拠点とする調査会社Carisyouによると、1月に韓国で新規登録されたEVの台数は12月から80%減少した。
とはいえ、テスラの1月の販売台数の少なさは、消費者市場がシフトしていることを示すものかもしれない。
「中国製」が足枷?
全北自動車融合技術研究所(Jeonbuk Institute of Automotive Convergence Technology)のリー・ハンクー所長はブルームバーグに対し、韓国でテスラの販売が鈍化している理由のひとつは、先進的な顧客の多くはすでにテスラを購入しているが、一般消費者はまだテスラを購入する気になれないからだと語った。 また、テスラと中国との関係もその人気に影響しているという。
「最近、テスラの車が中国製だと知った人たちが、テスラを嫌いになった」
2月6日、韓国政府はEV購入に対する補助金改定案を発表した。補助金全額を受け取れる基準は昨年の5700万ウォン(約638万円)から5500万ウォン(約615万円)に引き下げられた。
2023年7月、テスラは中国製モデルYの価格を5699万ウォン(約638万1069円)に設定し、5700万ウォン(約638万3487円)の基準を下回った。
今年の改正案では、価格が5500万以上8500万ウォン(約952万円)未満のEVを購入した場合に補助金を半額受け取れる。これにより、テスラ・モデルYの補助金は半減する。
国からの補助金の上限額は650万ウォン(約72万円)で、昨年に比べ30万ウォン(約3万3千円)減った。地方自治体からの補助金は最高が600万~1150万ウォン(慶尚南道)で、最低は180万ウォン(ソウル市)となっている。
また、韓国は消費者がより安全で環境に優しい自動車を購入することを奨励するため、車載式故障診断装置(OBD)と高エネルギー密度のバッテリーを搭載したEVに対して、より多くのインセンティブを提供することを決定した。
テスラは、オートパイロット技術やバッテリー管理システムが他社に流出する可能性があるとして、車両が自己診断テストを行える装置をまだ導入していない。
テスラが中国製のLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)を使用していることも、韓国でのビジネスにとってマイナス要因だ。
LFP電池の使用も補助金に影響する。LFP電池は韓国製の高性能ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)電池より安価だが、エネルギー密度が低く、分解とリサイクルに多くのエネルギーを必要とする。
この規制は、中国の電池メーカーのCATLやBYDが供給するLFPバッテリーを使用している他のメーカーにも影響を与える可能性がある。
韓国メディアの報道によると、一部の地元電池メーカーは、この規制は韓国の電池メーカーを助けることを意図しているのではないかと考えている。
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