2月17日には、グスタボ・トアラさんから話を聞くことができた。トアラさんは着の身着のまま、携帯電話だけ手に持ち、汗だくでダリエンのジャングルの小道から出てきた。
携帯電話はキャンプの多くの人にとって生命線だったので、皆が所持していた。
トアラさんはエクアドルから来た2人の仲間とともに、バホチキートのキャンプから5時間かけて歩き、簡素な橋を渡ってラハス・ブランカスのキャンプに入った。疲れ切った様子だった。
彼と2人の仲間は12人グループで出発したが、旅の途中で離れ離れになってしまったと通訳を介して語った。
彼は米国でのより良い生活を望み、2週間近く旅をしていた。
エクアドルでは犯罪率が高く、ゆすりが横行しており、小規模経営では生計を立てられないので、彼は祖国を去ったという。
地図もなければ、水もほとんどないなか、トアラさんはただ盲目的に他の移民の後を追ったという。そして強盗、レイプ、さらには死が待ち受けるダリエン地峡を通り抜けた。
次はコスタリカ行きのバスを目指していた。
ラハス・ブランカスでは、米国への移動経路を詳細に示した大きな地図をいくつも見ることができる。移民たちは非政府組織(NGO)が提供するそれらの地図をあてにしている。
ある地図は、ヘブライ移民支援協会(HIAS)から提供されたものだった。同協会は最近米国から、ラテンアメリカからの移民を支援するため2つの助成金を合わせて1100万ドル受け取った。
HIASの地図には、コロンビアからコスタリカへの移動ルートが示されており、バスの停留所、気温、標高、「移民キオスク」の場所などが詳細に記載されている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とその移民部門である国際移住機関(IOM)の看板を、キャンプのあちこちで見かけた。
バイデン政権下の米国で、国民が納めた税金から国連への拠出額は、2023年に10億ドル以上に跳ね上がった。
移民たちは、米国に渡るのに何千ドルも必要だと述べた。賃金の低い母国では大金に相当するその金額を、彼らはどのように調達したのか。その質問に対しては曖昧な答えが多かった。すでに米国にいる親戚や友人、あるいは祖国の親戚や友人からお金をもらっていると答える人もいた。
サンビセンテのキャンプに住む20歳のソマリア人、オマル・アユブさんは、米国への移住には約1万5000ドルかかると述べた。
アユブさんは母と弟をソマリアに残してきた。イスラム過激派「アルシャバーブ」に叔父を殺された彼は、テロから逃れたかったのだという。
彼は、同じくソマリア出身のイルハン・オマル下院議員(民主党)がいるミネアポリスに行く予定だ。
「彼女のようになりたい」とアユブさんは語った。
彼は米国の政治について知っているようだった。バイデン大統領について、「彼はいい大統領だ。彼は移民が米国に来やすいようにしてくれている」と述べた。
目の前の危機
共産主義の専門家であるトレバー・ラウドン氏によると、武器化された不法移民の影響は、すでに米国全土に波及しているという。
「米国を彼らが逃げ出した国のように、あるいはもっと悪い国に変えるためにそれらの人々は利用されている」とラウドン氏は指摘した。
「移民は米国を政治的、文化的、経済的、さらには地理的に破壊するために利用されている。つまりこれは、この国を屈服させるための、100%共産主義的なプログラムだ」
全米に経済的な影響が及んでいる。
市や州は、社会サービスが崩壊したとして、災害を宣言した。コロラド州のデンバーでは、デンバー・ヘルス病院は、8千人の不法移民による2万件の未払い通院のために1億3600万ドルのツケが残り、財政的に苦境に立たされている。市は現在、公安の維持に必要な予算を削減せざるを得なくなっており、2024年の計画では、「新住民の流入」への対処に市職員の全チームを確保している。
2月27日、カリフォルニア州選出のラフォンザ・バトラー上院議員(民主党)は、バイデン政権に対し、米国連邦緊急事態管理庁のシェルター・アンド・サービス・プログラムを通じて、サンディエゴのシェルター・ベッドの増設を要請した。
バイデン政権はすでに、シェルター・アンド・サービス・プログラム補助金14億ドルの追加要求を、議会に提出している。
非営利団体「米国移民改革連盟(FAIR)」は、不法滞在をしている外国人に対し、米国民が一人当たり年間1156ドルの税金を負担していると算出した。
全体として、不法移民は2023年に1820億ドル以上の税金を米国民に負担させているとFAIRは試算している。
手に負えなくなったシステムの印象的な例として、ニューヨーク市が挙げられる。
民主党のエリック・アダムス市長は、不法滞在者の避難所を自負してきた。市内への流入数に対処するため、連邦政府にさらなる資金を懇願したが、無駄だった。
また、2023年12月までに6万8千人の不法移民を市内に再定住させるための支援を州指導者に求めていた。
ニューヨーク市のプレスリリースによると、昨年夏危機の拡大により数十億の予算不足に直面し、警察と消防の削減に着手した。
2023年12月の記者会見で、アダムス市長は「住民が怒っている」ことを認め、危機にうんざりしていると述べた。
「当分の間、この危機は都市が背負うことになるのは明らかだ」と市長は述べた。
アダムス市長は、テキサス州知事のグレッグ・アボット氏を激しく批判してきた。アボット氏は、数万人の不法移民をニューヨークを中心とする全米の聖域都市(不法移民を保護する都市)にバスで移送している。
しかし、テキサス州は国境危機による独自の問題に直面している。同州は流入の最前線であるだけでなく、国境の安全確保に向けた行動を理由に連邦政府からいくつかの訴訟を起こされている。
元米国国境警備隊のアモン・ブレア氏は、米国は内外からも攻撃を受けており、未知の領域にいるとエポックタイムズに語った。
米国政府が移民を助長している一方で、テキサス州のような、隣国と国境を接していて武器化された移民から自国民を守ろうとしている州では大きなプレッシャーがかかると、ブレア氏は述べた。彼は現在、テキサス公共政策財団のセキュア&ソブリン・フロンティア・イニシアティブの上級研究員として働いている。
「連邦政府は他国と結託して、国家の主権だけでなく、個人の主権や憲法そのものを根絶しようとしている」とブレア氏は言う。
テキサス州は、不法移民の流入を阻止するために、国境の安全確保に数十億ドルの予算を組んだ。国境のホットスポット(不法入国がしやすいエリア)に輸送コンテナや有刺鉄線を設置するなど、財政的負担を自己負担しなければならなかった。
「テキサス州議会は、国境警備に51億ドルを充てるなど、バイデン大統領の国境危機の高まりにしっかりと対応し続けるよう歩み寄った」と、アボット氏は2023年6月のプレスリリースで述べた。
政治的には、米国共産党のような国内の社会主義者や、民主党が支配する国境開放を支持する労働組合を無視すべきではないとラウドン氏は言う。
彼は、ブラック・ライブズ・マターと手を組んだフリーダム・ロード・ソーシャリスト・オーガナイゼーション(FRSO)が、過去2年間に7回もベネズエラに代表団を派遣していることを指摘した。
「彼らは出版物の中で、南の国境は米国革命への道だと述べている」という。
フリーダム・ロードは2022年12月31日付の募集記事で、米国内の分裂がより深まっていると指摘した。
「革命家が組織化し、反撃するための条件は整っている」と同団体は述べている。
米国共産党もフリーダム・ロードも、私たちのコメント要請には応じなかった。
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