中国と北朝鮮の国境を流れる鴨緑江(おうりょくこう)のほとりに立つ巨大な鉄塔が、両国住民のトラブルの末、取り壊される可能性があることが分かった。この塔は、北朝鮮の恵山市を見下ろすことのできる、中国の観光名所の一部だった。
高さ50メートル、長さ70メートルのこの塔は、中国吉林省の長白朝鮮族自治県、馬鹿溝鎮に2021年に建設された観光複合施設「長白山千年崖城」の一部だ。川と町を見下ろす塔のガラス張りの橋は、この施設の主要アトラクションだ。双眼鏡を使えば、世界で最も孤立した国の一つである北朝鮮の生活ぶりをのぞき見ることができる。
中国から北朝鮮への観光は、2020年の新型コロナウイルス流行以来、中止のままとなっている。このため、塔はわずか7元(約140円)で北朝鮮の様子を垣間見ることができる人気のアトラクションだった。
「違法な構造物」
しかし、3月15日に塔の運営が停止したと、個人の安全上匿名を希望した長白山の住民がRFA韓国語に語った。安全上の理由で当局が閉鎖したが、いつ再開するかは分からないという。
「北朝鮮当局は、鉄塔を国境管理協定に違反する違法な構造物とみなし、撤去を主張してきた」と住民は語った。
この塔は、中韓国境にまたがる朝鮮半島最高峰の白頭山を訪れる観光客にも人気だった。
白頭山は、朝鮮民族の起源に関する神話の舞台とされている。
塔は、延辺朝鮮族自治州の延吉市の裕福な実業家が自費で建設したものだという。「鉄塔を徒歩で登ると、北朝鮮の両江道恵山市の生活状況を、まるで目の前で見ているかのようにありのままを観察することができる」
投石とボトル投げ
閉鎖の背景には、中国の観光客と北朝鮮の住民の間の緊張があったようだ、と別の長白山住民は語る。「昨年9月、北朝鮮の国境警備隊員3人が鉄塔の観光客に自動小銃を向けた」と彼は言う。
北朝鮮の大学生が観光客に写真を撮られた際、塔の方に向かって石を投げたところ、観光客が水のボトルとバナナの皮を学生に向かって投げ返すという事件もあったという。
北朝鮮側は「このようなことが繰り返し発生すれば、後に両国間の紛争に発展しかねない」と中国の公安当局に警告を発したという。塔には、北朝鮮の人々に向かって叫んだり、物を投げたりしないよう訪問者に告げる看板が設置されていた。
塔のせいで、地上の人々は動物園の動物のように感じているのだ、と北朝鮮の当局者は言う。「北朝鮮の生活状況が非常に貧しいので、観光客は鉄塔から未開の地の動物の群れを観察するかのように写真を撮っているのだ」と彼は言う。
北朝鮮側は、このタワーが2009年に締結された協定に違反していると主張している。その協定では、北朝鮮と中国のいずれも、お互いを中傷したり、政権を脅かしたりするプロパガンダ資料を国境に設置してはならず、相手を侮辱し、憎悪するなどの施設を国境に設置してはならないとしている。
北朝鮮側は、中国側にタワーを完全に取り壊すよう求めているという。
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